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06話 噂⑤ドリームキャッスルの拷問部屋

 


「ええと、遊園地のドリームキャッスルには隠された地下室があって、しかも拷問部屋になってるそうなんですけど……。遊園地にそんなものあるわけないですよね。今度確かめに行ってみようかしら」


 バレッタ奥様は、男の視線が自分のうなじを見たのを確認して、顔を正面に戻す。話した後、色っぽく微笑んでみせた。


「フフ、拷問部屋ですか。本当にあったら面白いですけど、たぶん地下にあったのはボイラー室とか、配電盤とかある部屋だったんじゃないですか。うっかり閉じこめられた人がいたんでしょう。空調が効いてないような部屋だったら、夏なら暑くて、冬なら寒くてまるで拷問を受けてるような思いをしたんでしょうね。ああ、暗くて狭かったりしたら、それだけでも拷問ですよね。酸素の心配とかもしだしたら、怖くてたまらなかったでしょうね」


「ハア……」


 確信を持っているように話す男の口ぶりに、バレッタ奥様は口もとの笑みを消して頷いた。


「遊園地の拷問部屋なんて、楽しそうですよね。そんなものがあったら、確かに見に行きたいと思いますよね」


 楽しそうだからではなく、有無を確かめたいと言ったつもりのバレッタ奥様だったが、男の勢いにコクリと頷いた。


 男は美形である。些細な違いはどうでもよくなる、顔パワーがある。


「ありがとうございます。好奇心を刺激されるいいお話でした」


 男はバレッタ奥様の手を握ると、目を合わせて微笑んだ。目元に誘われているような色気がにじんでいる。


 ゴクッと小さく息を飲んだバレッタ奥様の顔は、熟したリンゴのように真っ赤に染まった。


「他には……」

「あ、わたしが話すわ」


 男がバレッタ奥様の手を離して、口を開いたとたん、茶髪の肉食系奥様が声を上げた。


 『この男に最初に目をつけたのは、あたしよ! 他のやつらはすっこんでな!』

と、他の奥様方に威嚇するような視線を浴びせた後、軟体動物のように体をくねらせて、自己主張した。


 男の目をひく動きができたと確信した奥様は、話し始める。





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