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04話 噂③アクアツアーの不気味な生きもの

 


「遊園地が営業していた頃にも、アクアツアーで「謎の生き物の影が見えた」なんて話が何度かありましたね。それ、今でも見えるらしいですよ」


 黒髪ショートボブの奥様の話に、男は首を捻った。


「営業していた頃の話? ツアー? 高速で走るバスから何かの目撃証言が? 海辺の生き物かな」


「あ、すみません。たぶん遊園地だから水を使った遊具施設があって、それがアクアツアーって呼ばれてたのかも」


 男に尋ねられて黒髪ショートボブの奥様は、恥ずかしそうに言葉を付け加えた。


「ふむ、遊園地の施設に謎の生き物の影……まあ、影だったら全部謎になりそうですよね。私だって影だけ見たら謎の男ですよ。正体不明ですか。生き物と言うことは、動いてる影ですよね。黒っぽい魚かなにかでしょうか。 何匹かいるのかな? 合体した影を見たとか──影で悪者達を撃退した、動物達の有名な童話を思い出しますねえ」


「ハア……」


 何と答えていいか分からない黒髪ショートボブの奥様は、何とも言えない返事をした。


「今も目撃証言があるということは、そこにはまだ水があるということですよね。誰か管理してるんでしょうかね。水を使った遊具施設? 閉園した遊園地を組み込んだアクアツアー? オカルトツアーか何かでしょうか。宣伝のためにわざと噂をながしてるとか」


 男に問うように見つめられて、黒髪ショートボブの奥様は慌てて首を振った。


「わ、わかりません! 噂ですから。てきとーな噂ですー。」


「あ、すみません。問いつめてるわけじゃありませんよ。そう、噂って適当なものですよね」


 男はニッコリと笑って、黒髪ショートボブの奥様の手を持った。


「興味深いお話しを、ありがとうございました」


 胸の下で組んだ腕から片手を持たれ、ギュッと握られて、奥様の眉がピクリと跳ねる。カアッと頬が赤くなった。


「他にはございませんか?」


「はい!」


 男の言葉が終わるのとほぼ同時に、肩までの長さの茶髪パーマの奥様が返事をした。


 次は自分だと待ちかまえていた、奥様の鼻息は荒い。まだ、結婚して1年の若奥様だが、こんな筈じゃなかったと何だか夫に物足りなさを覚えている。


 この中で一番若いのは自分だと、短いスカート丈を強調するように、パッパッとスカートの裾を手で払ってみせた。


 もちろんゴミなどついていない。




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