02話 噂①廃園になった理由
「えーと、あの遊園地には、度々“子どもがいなくなる”って噂があって……。閉園した理由は知らないけど、そんな噂があるようじゃね」
意外なことに、誰よりも早く最初に口を開いたのは、一番大人しそうな黒髪ストレートの大和撫子風奥様だった。
結婚してから3年──最近夫は帰りが遅い。
どうやら浮気しているらしいが、誰かに相談したら、あっという間に面白おかしい噂になると思っている奥様は、誰にも言えずにストレスを溜めていた。
ストレスが、普段とは違う行動を奥様にとらせていた。
「“子どもがいなくなる”……ああ、迷子ですね。そんな何人も子どもが行方不明になってたら、報道されて大騒ぎになっていますからね。そんなニュースは目にしてませんから、『迷子』が多かったんですねえ」
「ハア……」
男の言葉に、噂を話した奥様は曖昧に頷いた。
「閉園理由はズバリ、赤字になったからでしょう。業績悪化で閉園になる……よくある事ですが、迷子呼び出しとか、その辺のフォローがうまくなかったんでしょう。おっしゃるとおり、評判が悪くなるようではダメですよねえ」
うんうんと納得したように頷いた後、男は大和撫子風奥様の右手をやんわりと握った。
「お話しいただき、ありがとうございました」
「え、ええ」
大和撫子風奥様の目がハッと見開き、その後、その頬はカアッと赤く染まった。
「他の噂はありませんか?」
握った手を離すと、男は他の奥様方を見渡した。
「あ、じゃあ」
黒髪ポニーテールの奥様が、一歩前に出た。細いウエストが自慢の奥様は、両手を脇に当ててギュッとしぼるようにして、細さを強調する。
結婚生活が5年目に突入し、マンネリ化したのを感じている黒髪ポニーテールの奥様は、先ほど男が大和撫子風奥様の手を握るのを、羨望の眼差しで見ていた。