7−10、蒼月 side
7−10、蒼月 side
私は“カンタスの鏡”に触れられるくらい近くに歩み寄って声をかけた。
「モーブ・スカーレット・ペリレン。
青と赤の名を持つ古の王位継承権第二位の王子よ、私を元の世界へ帰せ。」
し〜ん
(あ、あれ??)
静寂だけが漂う空間。
(なにか失敗したかしら??)
「父さんの手記どおりにやったのに(泣)」と私がひとり呟いているとなにやら綺麗な声が響く。
「……いらっしゃい、蒼月。私と同じ“青と赤の名を持つ者”よ。」
低くも、高くもないけれど、一度耳にしたら耳から離れないと思われる美声。
「モーブ・スカーレット・ペリレン?」
「本名を呼ばれるのはエンジ以来だ。俺への当て付けで名付けられたエンジの娘。」
(はぁ?“当て付け”??)
“青と赤の名を持つ者”。
“モーブ・スカーレット・ペリレン”。
モーブは葵、スカーレットとペリレンは赤系統の色だ。
“東雲 蒼月”、それは私の名前。
東雲は赤系統の色、蒼月は私が生まれたのは昼間で、その日はとても綺麗な、この世界の海のように蒼い昼間の月、ブルームーンが出ていた。
だから、蒼い月で“蒼月”と名付けられたのだ。
そう考えると“青と赤の名を持つ者”は私にも当てはまる。
だが…
「ねぇ、なんで私の名前があなたへの“当て付け”なワケ?」
私にはそれが疑問だった。
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