7−7、蒼月 side
7−7、蒼月 side
「う〜ん!!ものすっごく楽しかったぁぁぁ!!!!!」
マルスたちが連れて行ってくれた島はとても綺麗なところだった。
朝焼け・夕焼け時に女性・人魚、男性・魚人たちが陽を浴びに陸にあがっていたり、夜の星空の下で人魚たちが美しい歌を歌っていたり……
夢みたいな場所だった。
「ふふふ。ソウ様、ご機嫌ですね。」
「あ、リオウさん!すっごく楽しかったです!!
ホント、今日むこうに帰るのが嫌になっちゃうくらいですよww」
「ねぇ、ティル、プラム!楽しかったよね!!」、「うん!姉ちゃんといられて楽しかった!」、「ワシもじゃww」と“如何に楽しい3日間であったか”ということについて騒いでいると、背後から声がかかる。
「ならば、帰らなければいい。」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
水を打ったように口を閉ざすリオウさん、ティル、プラム、私。
(うっ、沈黙が痛いっ!)
「…いや、“モノの例え”だからね、マルス。今日、帰るのは決定事項。」
この世界に落ちたことは、“リフレッシュ休暇”とでも思っておくことにする。
(精一杯遊んだし、向こうの世界で馬車馬のごとく研究をするわよ!!!)
気合も新たに、私は向こうの世界へと帰宅の準備を終える。
「ねぇ、マルス。そろそろ、“カンタスの鏡”のもとへ案内してくれない?」
「………」
「マルス?」
(変ね?聞こえてるみたいなのに。)
反応のおかしなマルス。
「……行くぞ。」
「ん、あぁ。おねがいね…。」
(何か、マルスが落ち込んでいる?)
「まぁ、気のせいでしょ。」と前を行くマルスを追いかけるリオウさん、ティル、プラム、私。
5人の足音が響く廊下の音をBGMに鏡のもとへ歩きだした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「な、なに!!この階段は!!!!!」
上を見上げるとグルグルと螺旋を描く階段が空へ向かって永延と続いている。
階段の終端が見えない、という事は相当な“長い階段”というわけだ。
「まさか、“これを全部登れ”とか言うんじゃ……」
(私、そんなに体力ないわよ!!)
「の、登れと言われるならやるしかないけど……」と私はボソボソ呟いていた。
「何を言っているのだ?アレを全て自力で登るワケがないだろう?」
呆れたように言うマルス。
(あっ、登らないのね。ちょっと安心した…)
「そ、そうなの?」
「あぁ。あの階段は“フェイク”、幻影だ。」
「幻影?」
「実際には、この長い螺旋階段は存在しないのですよ。」
微笑みながら話すリオウさん。
(どうやら説明してくれるようね…)
「じゃぁこの階段は……」
「2階までしか階段は登れないのですよ。それ以降は、階段があるように見えるだけなのです。」
私から目線を外し、螺旋階段を見上げながら、「“カンタスの鏡”は、幻影・螺旋階段の最上階にあるのですがね。」と続けるリオウさん。
「最上階?どうやって行くの!?階段はないのに……」
「へへっ、姉ちゃん!それは2階まで行ってのお楽しみ!」
急に口を挟んだティルが「行こう!」と私の手を引き、階段を駆け上る。
「あんまり急ぐと転びますよ!」とリオウさんが言う声が響いた。
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