7−6、プラム side
7−6、プラム side
(う〜む、兄貴も難儀しとるのぉ……)
いま、ワシらはソウを連れて魚島に来ておる。
普通ならうちの国からこの島に来るまでには三日以上かかるのじゃが、王家専用カンタスの鏡小型版の“秘密の鏡回廊”というワープを使って数分でここに来たのじゃ。
鏡回廊は入口鏡と出口鏡が定まっており、ひとつの場所に行くためにはひとつの入口鏡とひとつの出口鏡が必要となるのじゃよ。
故に城の地下には沢山の出口鏡に通ずる沢山の入口鏡が並べられておるのじゃ。
王家の者以外は知らぬし、話しても使ってもならぬ物なのじゃ。
そして、プライベートな時にしか使ってはならぬと決められておる。
(公務で使えないのは痛いのじゃが、そのおかげでソウを拾えたわけじゃ、よいこともあるよのぉ。)
あ、そうじゃ、リオウもティルも遠くはあるが、王家の血筋にあたるピレニー家の出身、ソウも王家の姫なのだから使用してもOKなのじゃよ。
一応、使用禁止事項ギリギリでクリア、じゃ。
ここは、魚人や人魚の島じゃが、彼らは陸地にはあまりあがっては来ぬ。
故にほとんど人がいない所じゃが、静かで美しい海のあるこの場所はきっとソウも楽しいじゃろうと兄貴やティルと相談してここに三日間、留ることにしたのじゃ。
この三日間、兄貴とソウを見ておったのじゃが、ワシから見ても、リオウが騒ぐのも理解出来るくらい兄貴とソウはいい感じじゃ。
兄貴とソウは「空気のようにいつも近くに、隣りにいることが当たり前じゃ」というような穏やかで温い雰囲気をしておる。
兄貴はソウの手や腕を優しく引いたり、後ろから守るようにふんわりと抱きしめたりしておるし、それにソウが嫌な顔ひとつしておらぬ。
(兄貴自身は計算……しておらぬ様じゃのぉ。無意識の行動じゃ。)
お互いに目線を合せて笑いあっておる兄貴とソウは、「恋人同士」に見えるのじゃが……
(壊滅的にソウが鈍いのじゃ!!)
ソウは、兄貴のアプローチをすべて“何かの動物が懐いてじゃれつく”程度にしか考えていないようじゃ。
「…ソウ、兄貴のことどう思うのじゃ?」と聞いても、「ん?お父さんかお兄さんみたいね。最強な俺様とは思うわ。」としか返してこぬ。
父、兄といえば“自分に近しく、無条件に親しい好意を持つ相手”じゃろう。
いいポジションだが、恋愛には決してつながらない位置じゃ。
兄貴の行動が恋愛による“愛おしい気持ち”の表現が、家族の持つ“安心感”につながり、恋愛感情に裏目に出ているのかも知れぬ。
聞けば、驚くことに兄貴はソウに対して告白も、プロポーズもしているということじゃ!!!
今までの兄貴では考えられぬ、女性への積極的態度!!!!!
(おもしろいではないかのぉ〜www)
“ひとの恋路ほど面白いものはない”と常々(つねづね)ワシは思っておる。
特に“兄貴”は今までワシを除く女性に、愛想もコイソもなかったのじゃ。
(これから兄貴がどうなるかwww)
ワシはリオウと結託して兄貴の恋路を追って行こうと思うのじゃったwww
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