父の手記
父の手記
『俺の名は東雲 苑治、こちらの世界ではエンジ・ペリレンという。
おそらく俺が一番初めに異世界渡りをした人物だろう。
そして“カンタスの鏡”について一番良く理解しているものでもある。
いつか、俺の知識を必要とする異世界住民がここに来た時のためにこの手記を書き残し、スカーレット王国の“禁止本部屋”に置くことにした。
“カンタスの鏡”は赤い髪に赤い瞳を持つ人間なら誰でも扱える。
ただし、それは“異世界へ渡るためだけ”ならだ。
時間も空間も場所も特定されない異世界の場所へと行くならば、赤い髪に赤い瞳を持つ人間であれば行ける。
この場合は“水辺”に出口があることが多く、命に危険が出る。
それでも実行するならば、準備はしっかりとして行く方が良いだろう。
しかし、時間も空間も場所も特定された場所に行くにはちょっとした制約がある。
まずは性別。
赤い髪に赤い瞳を持つ女性ならば問題はない。
赤い髪に赤い瞳を持つ男性ならば問題があるのだ。
男性の場合は自分の行きたいと望む時間も空間も場所も特定された場所に“血縁者”がいなければならない。
ただし、赤い髪に赤い瞳を持つ男女ペアだと男性にかかる制約は打ち消される。
これは、“カンタスの鏡”が男性の人格を持つことに起因する。
迷惑な話だ。
次に自分の行きたいと望む時間も空間も場所も特定された場所に関する物を持っていることだ。
服でも、アクセサリーでも、ペンでも、キーホルダーでも、ハンカチでも、髪ゴムでもなんでもいいから持っていること。
その持っているものが自分の行きたいと望む時間も空間も場所も特定された場所へと導いてくれる。』
『そしてもし、これを読んでいる君が赤い髪に赤い瞳を持つものでないならば、赤い髪に赤い瞳を持つ女性を探して連れて帰って貰うと良い。
ときどき“カンタスの鏡”は気まぐれを起こして、異世界から面白そうな人間をこの世界に引っ張り込むクセがある。
気まぐれに巻き込まれた人物の数は……、すまない。多すぎて書けない。
詳しい人数が聞きたければ“カンタスの鏡”に聞くと良い。
教えてくれるはずだ。
巻き込まれた人々はこの世界で幸せに暮らしていることが多い。決して不幸ではない人生を送っていると“カンタスの鏡”は言っているので大丈夫だ。もし、この世界に君が残るというならば安心して暮らし行けると思う。』
『最後に、この世界と他の世界を行き来する方法だ。
こちらの世界では“カンタスの鏡”を使う以外、ほかの世界へと渡る方法はない。他の世界から望んでやってくる場合の出口もこの鏡しかない。
他の世界からこちらの世界へ来る場合。
赤いバラと黒いバラの形をした鏡2枚を合わせ鏡にし、こちらの世界にかかわりのある物を身につけその間に入る。
そして“カンタスの鏡”の本名を言えばこちらの世界につれて来てくれる。
ちなみに、“カンタスの鏡”の本名は“モーブ・スカーレット・ペリレン”
「スカーレット王国の王族の中で唯一“青色と赤色”の名前を持つ男だ!」というのが自慢。
俺はいつかその自慢をできないようにしてやろうと思っている。
まぁ、ささやかなお返しだ。
気まぐれに俺の事、俺の最愛の人とその友人、愛する弟を泣かすような事件に巻き込んでくれたこのドあほに一泡吹かせてやりたいと思っているのだ。
前述した“カンタスの鏡”が男性の人格を持つ”というのはコイツのこと。
史実上はこのスカーレット王国の建国者の実弟。
夭逝したためあまり語られることはない人物だが、何を間違ったか国宝の“カンタスの鏡”に取り付いているバカだ。
恨みごとの1つや2つ言ってやると良い。』
『いろいろ書きすぎた気はするが…。まぁ、いいだろう。
では、最後に、君が望む時間も空間も場所も特定された場所へ行けることを俺は祈っている。
東雲 苑治 こと エンジ・ペリレン 2024.帰国前日』
御意見・ご感想、誤字・脱字のご指摘はして下さると嬉しいです。




