6−23 蒼月 side
6−23 蒼月 side
「ん〜」
(……のど、乾いた…………)
ぼんやりと目を開くと真っ暗な部屋。
部屋を見渡すと部屋の扉の隙間からほのかな光が差し込んでいる。
(水…)
水を求めてフラフラと光が差し込んでいる方へと近づき扉を開ける。
光が段々(だんだん)強くなる方へと歩いて行くと「…ん、ソウ。起きたのか?」という柔らかな声がする。
座っているソファーから身を起こし、こちらを振り返っている。
しかし、振りかえっている人物の顔は逆光でよく見えない。
ただ、本を持ち、声の感じから行くと微笑んでいそうな表情をしていると分かるだけ。
「父さん?喉乾いた…」
「ふわぁぁ〜」と欠伸をし、目を擦りながら言う。
「………分かった。何か持ってくるからここに座って待っていろ。」というと父さんはどこかへ行ってしまった。
それから父さんに言われたとおり、ソファーに座り「ランプなんて珍しいもの使うのね〜、父さん。」と暖かい光が揺れるランプの炎を眺めていると、いつの間にかウツラウツラ舟を漕ぎ出す私。
「…ソウ。ほら。」
いつの間にか帰って来た父さんの手にはマグカップとグラスが握られていた。
差し出されたグラスを受け取り、コクリと一口飲む。
それは爽やかなミントの葉で香りづけられた水だった。
(…はぁ〜、生き返る〜〜w)
「ありがと、父さん…」
コーヒーの香りが立つマグカップを手に私の横に座った父さん。
「…まだ寝ぼけているのか?」
苦笑するような声の調子で父さんは話す。
(“寝ぼける”?どういう…)
私はグラスから目線を父さんへと移すと、そこにはランプの柔らかな光に顔を映し出された父さんとは別人がいた。
「あ゛…」
私が“父さん”だと思っていた人物。
それは、『マルス』だった。
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