6−15 蒼月 side
6−15 蒼月 side
マルスに「好きにしていろ」と言われたので、マルスたちが資料を集めている間、こちらの文字が読めない私は歴代の王族たちが子供の時に描いたと思われる“絵日記”らしきものを本棚から取っては眺め、戻しを繰り返していた。
(読めないけれど、絵で大体分かるので退屈しのぎには丁度良いいや☆)
ペラペラとページをめくりながら、私は手首を見てふっと思った。
(それにしても、この父さん譲りのブレスレット“翻訳機”のはずじゃぁ??)
気になって近くにいたティルに聞くと、「音と言葉だけ」がブレスレットで翻訳できるそうだ。文字の翻訳は他にグッズがあるそうで、「今度、リオウ兄ちゃんに持ってきてもらうね☆」と言っていたけど…
(大丈夫なのかなぁ??リオウさんの発明品…)
「何か嫌な予感がする。」
“リオウさんの発明品”歴史を聞いていたので、「そんな呟きが漏れるのも仕方のない事だよね。」と自己弁護してみる。
それから数時間後、マルス、リオウさん、ティルの3人は、ほぼ資料集めが終わったと話しだした。
「マルス様、こちらの資料は集まりました。もうお昼ですし、休憩いたしませんか?」というリオウさんの提案でお昼ご飯を兼ねての休憩をとることになった。
「うわぁ〜い!!それじゃ僕、お弁当詰めてもらってくる!!」
「いつもの場所で待ってて〜!!」、そう言って扉を開けっぱなしにしたまま、部屋から駆け出して行ったティル。
(あら?内側からなら誰でもこの“扉”は開けられるのね…。)
私は妙にズレた考えをしていた。
(にしても、ティル早っ!!もう豆粒!!!しかし、何故に“お弁当”なの?ティル??)
「ティル1人じゃ4人分のお弁当を運ぶのは難しいんじゃない?」という思いがハタと浮かんだ。
「ねぇ、マルス。」
「なんだ?」と私の後ろからマルスの声が聞こえた。
「っ!!! び、びっくりしたぁ〜。いつの間に背後にいたのよっ!!」
(心臓に悪い……。足音と気配を消して近づかないで欲しいな…)
「とほほ…」、ガクリと首を下に折った私を見て、訳が分からないらしいマルスは「??」と小首を傾げていた。
(まぁいいや。それはさておき、)
気を取り直して先ほどの質問を口にする。
「ねぇ、ティルを一人で行かせていいの?お弁当重くない??」
「手伝いたいから、ティルが向かった場所を教えて欲しい。」と言葉を続けると、「手伝う必要はない。」というマルス。
「なんで??」
「ティルが向かった場所には、今だと運ぶ手伝いをしてくれる奴が丁度いる。それより、ティルとの待ち合わせ場所に行くぞ。」
マルスは「ほれ、行くぞ。」とでも言うように私の肩を押す。
(“手伝いをしてくれる奴が丁度いる”って誰のこと??)
疑問は残るけれど、マルスに急かされた私とリオウさんは城の廊下に出て、ティルとの待ち合わせの場所に急ぐのだった。
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