6−13 蒼月 side
6−13 蒼月 side
「っわわわ!!!!!」
勢い余って、私は前へ飛び出し、転びかける。
(ぎゃぁーーーーー!!コケるーーーーーーー!!!!!)
「あわわわ!姉ちゃん!!」
ティルが私を転ばないように私の腕を後ろから引っ張ってくれるも、悲しき“体重・体格差”。10歳くらいの男児と勢いのついた私では私の方に綱引きの軍配は私に上がり、
「「うぉわっ!ぎゃーーーーー!!!」」
2人とも一緒に転びかける。
(顔面から転ぶのは痛すぎる!!)
口、顎と鼻にくる衝撃を覚悟して、ググっと身を固める。
(………あれ??痛くない?)
いつまで経っても痛みはやってこない。「そろ〜」っと目を開けると私の体には腕が巻き付いていた。
「“赤い目に赤い髪”を持つ人間がこの扉の本当のカギだ。」
私に巻き付く腕の持ち主、マルスの美声が耳元で響く。
(なに!!なんなの、このベタな展開は!!!)
驚いて、私は更に身を固くする。
「正当なカギにとって、この扉は空気のように軽いものだ。」
「全力で押し開けようとするものではない。」とマルスは言葉を続ける。
(早くそれを言えよ!!!)
心の中でツッコミつつ、「ティルは?」とさっき助けてくれようとして巻き込んでしまったティルを探す。
ティルの方は、兄のリオウさんに抱きかかえられていた。「体の大きさを考えなさい。」と小言を喰らっているものの怪我はなさそうな様子だった。
(よかった。ティルも無事そうで。)
いつまでも腕をといてくれないマルスの腕を押し、「ありがとう、助かったわ。」と言って外した。そしてティルの側へ行き、「ありがとう、助けてくれようとして。」とお礼を述べる。
その時、ティルの背後にいたリオウさんの顔がニタニタとしていたのが気になった。
(……忘れてけど、“図書寮に来るまで”と言い、今と言い、リオウさんどうしたんだろう??変なものでも食べたのかなぁ???)
私は本気でリオウさんの体を心配していた。
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