閑話 1−2 リオウside
次週より本編に戻ります。
今回はリオウさんがいつもとは別の意味で壊れています(笑)
閑話 1−2 リオウside
(…参った。参りましたよ!!)
一夜明けて、帰港の日。
ティル、ソウ様、マルス様、私の順に船の舳先に並んで、スカーレット王国・国民のお出迎えに応えていらっしゃったマルス様。
ソウ様を気遣うマルス様の、その蕩けんばかりの優しげな御顔と言ったら!!
(女性にそのような表情を向けられることの無いマルス様が!!)
まるで“惚れています”、“恋人同士です”と公言するかのようにソウ様の肩を抱くスキンシップを図り、頬にキス。ついでに親密に見えるような“耳元での囁き”。
倒れてしまったソウ様を大事そうに抱き上げ、城のマルス様の寝室に寝かせるまで腕の中からソウ様を離さないマルス様。
ソウ様の着替えを侍女に頼み、自分も着替えてきたマルス様は、ソウ様のベッド脇に腰掛けソウ様の髪を梳きだしていらっしゃった。それはもう大事そうに。
(なるほど、ティルが“マルス様が変だ!”と叫ぶはずだ。)
きっとこれからマルス様のソウ様へのスキンシップ等々は大事に思うあまり、多くなっていくでしょうね…。
マルス様を眠るソウ様、微笑ましい雰囲気の2人を残し、私はこっそりと部屋を出た。
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部屋を出てすぐ、私たち兄弟用に与えられている部屋へと戻った私は、
「ティル。あなたが“マルス様が変だ”という理由がわかりましたよ。」
「兄ちゃんわかったの!!教えて!!!」
「それは“恋”です。」
「……鯉??」
たっぷり数秒開けて発せられたティルからの間の抜けた発音に、「この子にはまだ早い話題だったかもしれませんね。」と内心苦笑を漏らす。
(ティル本人を前に「まだ早い」と言おうものならば、ティルが拗ねるのは目に見えてますしね…。)
容易にその姿が想像出来てしまうのが可愛らしいと思える時点で、リオウは「弟バカ」である。
いかんせん「リオウ本人だけがそれを自覚していないだけだ」とティルは主張し続けているのだが、「普通です」とリオウに一蹴されてしまうのがオチなので最近はツっこんではいけないというのが城の一般常識となっている。
「ティル。大体、想像がつきますが…、魚ではありませんよ。これを逃したらマルス様には一生、恋愛結婚はムリです!!マルス様に幸せな人生、心から寄り添える良きパートナーを得るための滅多にないチャンスです!なので…」
「政略結婚なんぞ味気のない結婚をしなくて良い時代に生まれたマルス様には、是非とも恋愛結婚させてあげたい」といつもリオウは思っていた。
マルス本人の「地位と権力(マルス本人は知らないが顔も含まれる)だけを求めて近づく女のために出来た、女性不信」、といってもマルスが表に出さないように抑えてはいるためそう見受けられないこの性質にリオウは悩んでいたのだ。
ゴクリっ
ティルの喉が鳴る。
「ソウ様にはマルス様のお嫁さんになってもらうべく、私たちはマルス様をフォローしますよ!!!」
(マルス様には幸せになって貰わないと嫌ですから!!)
「兄ちゃん、姉ちゃんの都合は…」という弟・ティルの言葉を無視して私は“マルス様・ソウ様ご結婚計画”に胸を躍らせるのでした。
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