6−6 マルス side
6−6 マルス side
「すっきりとした果実水か何かを持ってこさせよう。」とソウの部屋から出ては云ったが…、本当のところ「ソウが落ち着くまでの少しの時間、リオウたちがいるのだから安心だと、席を外した。」というのが正しい心境だ。
(戸惑っていたな…)
「やはり、帰国を起点に態度を変えようとしたのが拙かったか?」と独り言を呟き、ソウの部屋を出た口実通り「すっきりとした果実水に、疲れていても食べやすい女性好みの果物や菓子を添えて持って来て欲しい。」とソウの着替えをしてくれ、ソウのいる部屋と続きの“控えの間”に控えていてくれた侍女に依頼した。
「承知しました。」と一礼して部屋を出ていこうとする侍女に、「すまないが、飲み物は4人分頼む。」と付け足し注文をして、俺専用の城内区画、最奥にある自室のソファーへと向かい、ドカリと足を投げ出して組んで座った。
「侍女が帰って来るまでの時間でソウが落ち着いてくれるとよいのだが・・・」とソウの顔を思い浮かべる。
「ソウの帰る方法。探してやらなければいけないな。」
ツキン…
(何故だ?「ソウを元の世界に帰さなければいけない」というのは分かるのだが、何故かそれを考えると心が痛む。)
俺は自分の感情を少しばかり持て余しているようだ。
(先ほど、咄嗟に自分の寝室にソウを寝かせてしまったことも失態だ。)
城には幾つもの部屋があり、急な客でも通せるような部屋が幾つもある。
(俺は自分でソウの面倒を見ようとすると同時に、ソウが俺の目から離れることを無意識に嫌がったのか?)
侍女が俺を見つけ出し「どちらにお運びしましょうか?」と尋ねるまで心の痛む原因を考えたが、結局、分からないままだった。
侍女から「ありがとう、あとは俺が運ぶ。」とグラスや飲み物の入った水差しといった俺の注文物が乗ったワゴンを押して自室を後にしたのだった。
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