6−3 マルス side
6−3 マルス side
ソウの服装を整えさせ、俺の帰国の歓迎に集まっているだろう王国の国民に応えるため、ティル・ソウ・俺・リオウの順にバーミリオン号の舳先に並んだ。
(服装さえ整えば美しいものだな…)
船に拾ってからは俺と同じ服を着て、いつも俺に喰ってかかるソウに「“目を奪われていた”なんてことを気づかせてはならない。」と、リオウやティルが「お綺麗ですよw」「ねぇちゃん!見違えたよ☆」とソウに褒め言葉をかける中、俺は横目でその美しさを堪能していた。
そうしているうちに、バーミリオン号はスカーレット王国に着き、国民から帰国の歓迎を受け、出迎えの感謝の印に手を振ることでそれに応えた。
(大切な国民。俺は皆、それぞれの幸せを祈っている。良き王にならなければ。)
ふっと目線をソウに向けると固まっているのが見えた。
(怖がっているのか??もしかすると初めてなのか?こんな多い人数の前に立ったのは。そうなのだとしたら、竦むのは仕方ない。)
「なんせ、自分が王族とは知らずに生きてきたのだ。大人数に対応する訓練すら受けてはいまい。」と判断し、ソウの肩を「大丈夫だ。しっかりしろ。」という気持ちを込めて抱く。
(なんだ??更に固まったが???)
ソウのそんな反応に「相当な恐怖と不安なのだろう」と思い、ソウの頬に「安心しろ。」の意味を込めてキスを落とし、耳元に唇を寄せ、できるだけ安心するような低めの優しい声で「大丈夫だ。落ち着け。」と囁く。
すると“クタ”っとソウから力が抜け、「安心したのか。」とホッとしたが、力が抜けただけではなく、ソウの肩を抱いた腕に重みがかかり、ソウの首が後ろに傾いでいく。
(ん、な!!なんだ!!!)
ソウの腰を肩を抱いていないもう一方の腕で抱き、状況を確認すると、ソウが気を失っていることが分かった。
「王族の心得のないソウにとって、酷なことをした結果なのかもしれない…」と思い、ソウの膝裏に腕を入れ、背を支えて抱きあげ、船を下りた。心配気なリオウ、ティルとともに城へと向かう馬車に乗り込んだ。
その時、黄色いで「「「「「////////ひ、お姫様抱っこよぉぉぉ〜〜〜!!////// 」」」」」っと言う雄叫びが耳に入った。
「なんだ??“お姫様抱っこ”とは???」
「まぁ、ソウは今、“姫”の服装だから、「姫の服装の人を抱き上げる」という意味だろう。」と勝手に結末をつけたが、リオウ・ティルの「「うぅ…、頭痛い。」」という反応が気にかかる。
(なんだ??どうしたのだ??)
そう思いつつも、腕の中でグッタリと眠るソウが気がかりでならない。
(しかし、大丈夫なのか?コイツは。まぁ、海で拾って生きてたのだから、きっと大丈夫だろうが……。 起きたら何か好きなものでも食べさせるか。)
「早く元気にさせなくては」という思いと、ソウが“王族としての心得”を持っていないことに気がつくのが遅かった償いをしようという思いがリオウ・ティルの目線さえ気にならないほどに、そればかりを俺は気にしていた。
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追伸
読者様が2000人を越していました!!
びっくりです!!読んでくださって本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。