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キーンコーンカーンコーン〜〜♪〜〜♪〜〜
「お!5時ですか。それじゃ、お疲れ様です。お先に失礼しますw」
登校用リュックをひっ提げて、軽い足取りで帰りのあいさつを言い、
「お疲れ(様です)〜!」っと言う声を背中に聞きながら、研究室を後にした。
今日はゼミの日だったので、実験休みの日にしていた。
そういうわけで、8時から来ていたもののゼミがなければ今日は何もする事がなかったので、久々に書庫整理やら、実験結果の整理やらをやっていた。
「なんか、結果が、相当に溜まってたよなぁ〜。まとめんの大変だったわ……。」
「はぁ〜〜っ」と肩を落として溜息をつきながら、実験棟から駅までの下り坂を歩いていると
「?」
視界に入ったのは、堂々と道をふさいでいる猪の親子。
(そういや、ここの地域は野生猪の発生が多いし、出会う率も高いんだっけ。)
『へぇ〜、ウリ坊かわいいなぁ〜。』と思い、じぃ〜〜っと子供猪を見つめていた。すると、ふと、目線を感じて、その方向に眼を向けると…
親猪が鼻息も荒く、戦闘態勢をとっていた。
(親か…。あれ、こちらと眼が合った……?っえぇ!!)
本能的に『マズイ!!』っと思ったのもつかの間、親猪は私に向って突進してきた。
(子供ばっかりに気を取られていて、親の行動に気が付いていなかったよ!!)
驚きで固まった私が、ふと思い出したのはマイちゃんの豆知識。
「猪は急には曲がれへんねん。せやから、突進してきよったら横に避けたりゃええねんで〜。」
トレードマークの銀ブチ眼鏡の右端をクイッとあげて、レンズを光らせながら語っていた彼女の顔がよぎる。
(さすが大学1年から5年間ずーっと一緒だっただけあるわぁv マイちゃんナ〜イス☆)
せ〜のっ!と横に逃げたんだけど………………、ムダだった。
「マイちゃんのっ、どアホ〜〜!!」
「猪は急に曲がれる!!」私はあわてて猪に背を向け、猛ダッシュで逃げた。
「ゼ〜ゼ〜っ…、いつまで追いかけて来るのよぉ〜〜〜〜〜!!」
必死に逃げていたら、足が急に地面から浮いたような感じが……
「…??…………………!!ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
前方不注意、フタが開いているマンホールに落ちてしまった。
落ちていく自分の視界は真っ黒。
何かに引きずられて行くような、強い引力に襲われ、私は気を失った。
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