5−2 蒼月 side
5−2 蒼月side
マルスの自己紹介に困惑顔の私に気がついたのか、リオウさんはぶっきら棒男・マルスの発言に付け足すように話しだした。
「ソウ様のお父様・エンジ様は、マルス様のひぃおじい様・ペリレン様の兄にあたられるお方です。エンジ様はあなたのおじい様・セレン様の代の第一王位継承権者だったのですよ。エンジ様は不慮の事故にあわれまして異世界へと渡られてしまわれた。そしてその後、ソウ様のお母様・シンシャ様とそのご友人でいらっしゃったアンズ・スカーレット王妃様とともに、一度はこちらに戻られ第二次ヒワの惨劇を治められました。しかし、その時は第一次ヒワの惨劇を治めたペリレン様が既に王となられていましたため、エンジ様はシンシャ様とともに異世界へお帰りになられたのです。」
ここで「ほぅ〜」っと肩の力を抜き、目を閉じて一呼吸おいたリオウさんは再び口を開いた。
「エンジ様の王族個人紋章は“アゲハ蝶”。個人紋章はその人のみしか使えず、2つとして同じものは使用されないのです。ただ例外がありまして、親の個人紋章は子のうち一人だけに譲り渡すことが可能なんですよ。そして第一王位継承権者を示すもののみが持つ特徴は、赤い髪に赤い目、そして装飾品に使用される宝石はすべて“赤いもの”。主にルビーが使われています。ソウ様やマルス様の装飾品がそうでございましょう?」
リオウさんの言葉を受けた私は、自分の腕にあるブレスレットとマルスの装飾品を見た。マルスは額・ピアス・ペンダント・ブレスレット・リングを付けており、そして、そのいずれにも大小の大きさは違えども、桔梗の花をモチーフとした金細工と“赤い石”がついていた。
(えぇ〜っと、ここまででわかることは……)
私はマルスのブレスレットについている桔梗の花を指さしながら、
「この花がマルスの個人紋章なのね。そして、私のは父さんに譲ってもらったアゲハ蝶。で、赤い石が付いているから、父とマルスはスカーレット王国の“第一位王位継承権者”だってこと?」
というとリオウさんから「その通りです。」との返答があった。
よく思い出してみると、父さんは昔からよく“蝶”のついた物を私に身につけさせてた。
(そういう理由だったのね…)
父の行動がようやくわかった。どうやら父さんは知らぬ間に、“蝶のついた物が好きにさせる”→“父さんの個人紋章引き継ぎ”ということを私に刷り込んでいたようだ…。
(まぁ蝶は好きだからいいけど…さぁ〜)
そう思って、完全に“蝶好き”を父さんに刷り込まれていると気づいた私は、「〜ふぅぅ」と大きく息を吐き出して「やれやれ」と頭を横に振った。
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