4−1 マルスside
4-1 マルスside
目の前の彼女とティルは眼と口を大きく開いたまま、固まってしまっている。
(本当に、自分が“王族”とは知らなかったのだな………)
さきほどマッドサイエンティスト化したリオウによって、俺と彼女は“親戚”だったということが判明した。父には2人の弟がいる。赤い髪に赤い目を持つ子供はスカーレット王国の直系、さらに第一位王位継承権を持つ第一子の男児のみに現れる。今までの記録によると、そのことに例外はない。実際、第二子以降の男児、ましてや女児には一度も“双赤”とも言われる“赤い髪に赤い目”を持つものは現れていない。そうなると、彼女は…
(叔父たちのうち、どちらかの隠し子と考えるのが妥当か…?いや、“赤い髪に赤い目”の“女”ではなく、本当は“女装をした男”…?)
「訳がわからない」と眉間に皺を寄せて考え込む俺の耳元で「あの〜、マルス様…。なにやら不謹慎なことをお考えではありませんでしょうねぇ?」とリオウが呟いた。
(“不謹慎”なこと??)
リオウの言葉に疑問を持ち、さらに俺は眉間の皺を深くした。
「あのですね〜」と息を吐き出し、前置きをおいたリオウは、「信じられないかもしれませんが…、彼女はマルス様のひぃおじい様の兄君・エンジ様のご息女で、ソウゲツ・シノノメ様ですよ。」と静かに一息で囁いた。
(俺の曾祖父の兄…だと?)
さらに訳が分からない。
(それはおかしいだろう。彼女は見たところまだ17、8歳くらいだ。彼女が本当に俺の曾祖父・兄の娘だとしたら、今は祖父ぐらいの年のはずだが?)
眉間の皺もそのままに、俺は訝しげな目をしていると、「まぁ、そんな目をしないで下さい。」と苦笑するリオウの声がかかる。
「海歴2008年、2017年、2019年、2022年、2024年に起こった出来事をおぼえていらっしゃいますね?」
さて、お次は上記の海暦・スカーレット王国の歴史についてお話していきます。
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