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オオカミノ国  作者: 十乃字
幕間
81/81

シュリの手記4

あらすじです。



 唯でさえ忙しいというのに、王国から変な女が来た所為で今日はさらに忙しかった。


 ナターシャとかいう元王国騎士の女は、極度の獣人主義者で王国でも度々問題を起こしていたらしく、ツザでも男女問わず獣人に粉を掛けまくっている。


 オウガも狙われているようなので気を付けたいのだけれど、困った事に私も近づくと危ない。


 彼女に関してはマリアとレイアに任せたいと思う。




   ◇




 またオウガの周りに女が増えた。マリアが治療したという狐獣人のアマネは、元キツネ族族長の娘なのだそうだ。


 オウガの周りに他種族だけでなく人間までいるというのに、自分の種族だけいないという事に危機感を感じたというのも、上に立ちたがらないオウガがこの町の実質的最上位であることをちゃんと分かっているようで何より。


 何番目の妻でもいいという控えめな態度も好印象だったので、彼女は許すことにした。彼女は。




 マリアはまだ要警戒。オウガに惚れているらしいことは認めるけれど、王国育ちのあの子は一番や唯一の妻であることに拘るかもしれない。そして私には足りてない物を持っている。注意しなければ。




   ◇




 熊の旬は冬。美味しい。




   ◇




 降り積もる雪を掻き分けて、ハヤテたちオオカミ族の生き残りがイヌ族領から逃げ延びてきた。皆痩せ細り、重い病を患っている人も何人かいた。


 そんな故郷の同胞たちの惨状を目にして、オウガがイヌ族打倒を決意してくれた。オウガ自身が選んでくれたから、私たちは胸を張って彼の背中を押せる。


 春まで待てばイヌ族の勢力が盛り返してしまうかもしれない。冬の内に決着を付けたい。これからさらに忙しくなる。




   ◇




 行軍訓練を名目にした狩猟旅行で、おまけ程度に考えていた王国の使者との密会が叶ってしまった。


 不戦条約を結んだけれど、クリスという騎士はラウルやアラン義父さんと違って信用は出来ない人だと感じた。性別すらよく分からない。


 ツザの防備を厚くしたい。心苦しいけれど、責任者として任せられる人がアマネしかいない。オウガが丸め込んでくれることを祈ろう。




   ◇




 イヌ族討伐に向けて討伐軍が出発した。





 行中の食料は狩りで賄うという強行軍は失敗だった。越冬した動物は脂気が少なくて物足りない。肉。




 夜中に声が五月蠅くて眠れないという苦情が来たので、対象の二人を私たちの班に入れて数日面倒を見ることにした。こちらは日夜気を張っているオウガにそんなことをする空気じゃないのだから、節度を守ってこっそりやってほしいという願いは届くだろうか。




 残念ながらお盛んな彼らには届かなかったので、コトの現場に顔を出して「次は別々の小隊に飛ばす」と脅しをかけた。




   ◇




 たどり着いたイヌ族の拠点、ドグマの犬小屋ことドグマの城。


 こちらには王国の人間もいることだし、人間の慣習に倣って降伏勧告をしてみたのだけれど、当然のことにイヌ族は降伏せずに迎撃準備を始めていた。


 犬小屋に乗り込んだ私たちは、かつて私とオウガを王国の奴隷商に売り払ったイヌ族のミツルギ、そしてお父さんたちの仇である、オオカミ族へと攻め込んできたイヌ族を指揮していたシヴァを討ち取った。


 最後に、偉そうに踏ん反り返っていた元奴隷の首を撥ね、イヌ族は私たちの軍門に下った。




   ◇




 ツザに戻った私たちは、自警団として町の警備に残ってもらっていた犬獣人のシロウをイヌ族の暫定領主としてドグマの城へと送り込んだ。


 ヘタレだが、この半年でそれなりに鍛えてあるし、お目付け役としてハヤテたちの小隊を付けているので大丈夫だろう。


 迫るベビーラッシュで慌ただしくはあるけれど、戦乱からようやく解放されて落ち着いたツザから、数人の治療の奇跡を持つ獣人が発見された。


 一冬訓練してもらっても擦り傷を癒す程度までしか能力は伸びなかったけれど、それだけでも助かるのでありがたい。


 マリアが「もしかしたらこれが獣人さんたちの平均で、シュリさんは天才なのかもしれませんね」と楽しそうにのたまっていたけれど、千切れた手足だって生やしてしまえるあの子に言われても嬉しくない。




   ◇




 王国からラウルが来た。


 「獣人領領主のオウガを王都に招待する」らしい。これを飲むと王国の一部と言い出すんじゃないかと思ったのだけれど、ラウルは「王国が獣人の国として認めるためには偉い人たちが君たちのことを知らないといけないから、良い機会だと思うよ。アラン様の睨みが聞いてる内においで」と言うので、近々向かうことになりそう。


 もちろん私も付いていく。オウガは「最近、シュリの食欲が凄いから王国の動物を食べ尽さないか心配」などと言い出した。ちょっと話し合いが必要かもしれない。




 私は果物も食べる。最近はむしろ好き。



 最後までお付き合い下さりありがとうございました。




 新作か続編でまたお会いしましょう。


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