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十六夜の宴  作者: いろはうた
5/17

オチル

登場人物




青那セナ……とある神社の姫巫女。

     騎士であるタスクのことが好きだが、

     自分とタスクのそれぞれに婚約者ができ、タスクの幸せを考えて

     彼との間に距離を置こうとする。

     



斬透タスク……セナを溺愛している騎士。

      品行方正で容姿端麗。

      主であるセナを女性として愛しているが、

      自分と彼女のそれぞれに婚約者ができ、複雑な心境。




*白夜……セナの遠縁の親戚であり婚約者。

     非常に人形のように整った美貌を持つ美青年。

     



*蝶姫……白夜の妹でありタスクの婚約者。

     可憐で愛らしい容姿の持ち主。

*私はわけも分からずに、屋敷を飛び出していた。


目尻からこぼれる雫が生理的なものなのか、別のものなのかわからない。


ただ、ひたすらあてもなく走った。











先程、タスクが蝶姫と一緒にいるところを見た。


何か言葉をかわしているようだった。


それがなんだか親密そうに見えて、見ていて苦しくなった。


それ以上二人が一緒にいる姿を見たくなくて、屋敷を出て、


こうして森の中をあてもなくさまよっている。


こうして、屋敷を飛び出すのは何回目だろうか。


いつもならタスクがついて来てくれるのに、もうそういうことは二度とない。


タスクは騎士の任を解かれた。


私だけを守ることはもうない。


その剣は、これからは蝶姫に捧げられる。


白夜様たちとの面会から数日。


タスクに会うことはめっきり減った。


今まで、影のように付き従っていてくれたのに。


いつだって傍にいてくれたのに。


私だけを守っていてくれたのに。


蝶姫とタスクがが一緒にいるところを見るのはまだ慣れない。


いつか、タスクが隣にいなくなることも当たり前になってしまうのだろうか。


うつけだなあと思う。


二人は婚約者なのだ。


一緒にいて当然だ。


私ももっと白夜様と行動を共にしなければならないのに、


食事をともにしようとか、そういう彼からの誘いを断り続けている。


まだ、わりきれない。


まだ、タスクのことばかり考えている。


まだ諦められない。


これで、騎士、という呪縛からタスクは解放されて、


彼はもうひどいけがもしなくて済むのに。


だけどどうしても、未練がある。


あの大きな手は、優しい笑顔は、涼しげなまなざしは、


全部、全部、私だけに向けられていたのに。


それがずっと続けばいいと、強く願う自分がいたのに。


醜い自分。


自分が隣にいないタスクの幸せをどうしても心からは願えない。


うつけだなあ、とまた思った。


その時ぐらっと体が傾いた。



「……っあ」



体を包む浮遊感。


足を踏み出した場所に地面はない。


崖だ。


足をふみはずした。


ぐらりと体勢が崩れて、空中に体が投げ出される。


奇妙な浮遊感が体を包む。


びゅっと風が耳元でうなった。


髪がふわりと広がる。


だというのに、ひどく冷静な自分がいた。


これで怪我をしたら、タスクは心配してくれるだろうか。


少しでも、私のことをまた見てくれるだろうか。


頭を強く打って、意識を失う瞬間まで、そんな馬鹿なことを考えていた。

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