剥き出し
*私は耳を疑った。
何を言っているの!!といおうとしてやめる。
タスクの目を見てしまったから。
こんな目見たことがない。
その思惑を悟る。
タスクは、本気で殺せと言っているのだ。
手から力が抜け、少ししわになったタスクの衣から指が離れた。
タスクはすらりと腰の刀を抜いた。
いつだって私を守り続けていた刀。
その刃が月光を浴びて輝いている。
「他の人間に殺されるなどごめんだが、おれは貴女になら殺されたい」
私の騎士が、死を望んでいる。
震える私の手にタスクが自分の刀を握らせる。
とてつもなく重い刀だった。
「さあ、一思いにどうぞ」
タスクは何かが吹っ切れたような笑みを浮かべ、目を閉じた。
私は息を吸い込んで覚悟を決めた。
ぎゅっと目をとじる。
手に力をこめ、そして――――――
「……何をなさっているのですか」
おそるおそる目を開けると、タスクが温度のない目でこちらを見ていた。
私の――――――自分に向かって突き立てようとした刀が、
タスクの手によって止められていた。
しかも彼は、咄嗟に目を開け刀を止めたため刃の部分を掴んでいる。
見る間にタスクの手に巻かれている包帯に紅が滲み始める。
「何やってるのタスク!?」
「何をやっているのか、はこちらが言いたい!!
貴女は死ぬおつもりか!?
殺せといったのはおれであろうに!!」
あたりまえだ。
どうしてタスクを殺せようか。
それなら……自分が死んだ方がマシだ。
目の端に広がっていく紅が映り、その手にとびつく。
「タスク、血!!
血が出て……!!」
「おれの身などどうでもいい」
「どうでもよくない!!」
「何故だ!!」
タスクが我慢できないように強い声で言った。
その目がかつてないほど揺らいでいた。
「おれなどいらぬのでしょう。
あの日だって、貴女はすげなくおれを追い払った。
突き放したではないか!!」
タスクは刀を放り捨ててまた私の肩を強く掴んだ。
あんなに大事にしていた家宝の刀なのに。
「おれには殺す価値すらありませんか」
すがるような目。
私は、もう我慢できなくなった。
また、タスクの衣を掴んで引き寄せる。
「タスク、好き」
ぽろっと涙が目尻から転がり落ちた。
それ以上泣き顔を見せられなくてタスクの胸に顔をうずめる。
言ってしまった。
言う気などなかったはずなのに。
この思いがむくわれぬのはわかっている。
でも、我慢できない程に、この人が好きだ。
初めて見せてくれた素の部分とか弱い所とかを見て、強くそう思った。
タスクが蝶姫のものとなる前に伝えられてよかった。
もうこれで全部、終わりだ。




