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十六夜の宴  作者: いろはうた
13/17

剥き出し

*私は耳を疑った。


何を言っているの!!といおうとしてやめる。


タスクの目を見てしまったから。


こんな目見たことがない。


その思惑を悟る。


タスクは、本気で殺せと言っているのだ。


手から力が抜け、少ししわになったタスクの衣から指が離れた。


タスクはすらりと腰の刀を抜いた。


いつだって私を守り続けていた刀。


その刃が月光を浴びて輝いている。



「他の人間に殺されるなどごめんだが、おれは貴女になら殺されたい」



私の騎士が、死を望んでいる。


震える私の手にタスクが自分の刀を握らせる。


とてつもなく重い刀だった。



「さあ、一思いにどうぞ」



タスクは何かが吹っ切れたような笑みを浮かべ、目を閉じた。


私は息を吸い込んで覚悟を決めた。


ぎゅっと目をとじる。


手に力をこめ、そして――――――






「……何をなさっているのですか」






おそるおそる目を開けると、タスクが温度のない目でこちらを見ていた。


私の――――――自分に向かって突き立てようとした刀が、


タスクの手によって止められていた。


しかも彼は、咄嗟に目を開け刀を止めたため刃の部分を掴んでいる。


見る間にタスクの手に巻かれている包帯に紅が滲み始める。



「何やってるのタスク!?」


「何をやっているのか、はこちらが言いたい!!


 貴女は死ぬおつもりか!?


 殺せといったのはおれであろうに!!」



あたりまえだ。


どうしてタスクを殺せようか。


それなら……自分が死んだ方がマシだ。


目の端に広がっていく紅が映り、その手にとびつく。



「タスク、血!!


 血が出て……!!」


「おれの身などどうでもいい」


「どうでもよくない!!」


「何故だ!!」



タスクが我慢できないように強い声で言った。


その目がかつてないほど揺らいでいた。



「おれなどいらぬのでしょう。


 あの日だって、貴女はすげなくおれを追い払った。


 突き放したではないか!!」



タスクは刀を放り捨ててまた私の肩を強く掴んだ。


あんなに大事にしていた家宝の刀なのに。



「おれには殺す価値すらありませんか」



すがるような目。


私は、もう我慢できなくなった。


また、タスクの衣を掴んで引き寄せる。




「タスク、好き」

 



ぽろっと涙が目尻から転がり落ちた。


それ以上泣き顔を見せられなくてタスクの胸に顔をうずめる。


言ってしまった。


言う気などなかったはずなのに。


この思いがむくわれぬのはわかっている。


でも、我慢できない程に、この人が好きだ。


初めて見せてくれた素の部分とか弱い所とかを見て、強くそう思った。


タスクが蝶姫のものとなる前に伝えられてよかった。


もうこれで全部、終わりだ。

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