叶えたい夢(即興)
たとえば――叶えたい夢がある。
それでも心の中では……自分でも気づかない心の奥底では。
やっぱり――叶わないんだと諦めている夢がある。
だけど叶わないからこそ――見ていたい夢だってある。叶わないからこそ良いし、むしろ叶わないことを望んでいたりもする。
現状維持も現状打破も、等しく正しく尊い価値があるのならば、現状を維持するために夢を叶えないなんていう選択肢もアリといえばアリだろう。
現状を打破するために夢を叶えるという行いが、もしも正しい肯定の意味合いを含むのだとしたら、現状を維持するために夢を叶えないという行いも肯定されてしかるべきであろう。
望みは――何でもかんでも叶うものではない。
だけどもしも叶えたのだとして、叶ったのだとして――あなたはその後どうする?
どうなるといったほうがわかりやすいが、確実に十中八九、落胆することだろう。
「なぁんだ。自分の願いなんてこんなちっぽけなものだったんだ」と。
結婚するまでは魅力的だったあの人も、いざ結ばれてみれば恋という神秘のベールは解き放たれ、さらけ出されたその醜い素顔は――あなたが思い描いていた理想ではなく、あなたが想い選んだ現実であることを痛感させられる。
叶えたい夢とは要するに――見たくもなかった醜態を見せられるという、皮肉に富んだ笑い話なのである。我々はそれでも尚、理想を――夢を追い求めてやまないのだが、きっとそれで良いのだろう。
時々ちょっぴり夢に向かって邁進してみるのも――夢があってこそなのだから。