革命
「セバスチャン!!」
クリスが乱暴に部屋に飛び込んだ
「こらこら、まだ完治していないのですからそんなに大声で騒いではいけませんよ。」
シスターがたしなめる。クリスは黙るとしずかにセバスチャンの手を握った
「シスター構いません。アッシュ様、クリス様よくぞご無事で。」
「爺やも無事でよかった。」
「もう起きないんじゃないかと思ってたんだよ!」
クリスが目に涙を浮かべている。いろいろとはしゃいでいたがセバスチャンの事はずっと気にかけていた。ひょっとしたら騒いでいたのもカラ元気だったのかもしれないな。
セバスチャンはザ・執事って感じで雰囲気だけでできる執事ってのがなんとなくわかった。執事と言えばやっぱセバスチャンだよな。
「シスター、本当にありがとうございました。」
「いえいえ、まさかこんな形の再会になるとは思いませんでしたがお元気になられて何よりです。」
「しかしあれほどの怪我が完治するとは・・・相変わらずのお腕でございます。」
再会?どういうことだ?シスターが俺の視線に気づいたのか微笑みながら返す
「おだてても何も出ませんよ?それでは私は司祭様を呼んできますね。大事なお話があるのだそうですし。ユーラ、あなたもいらっしゃい。」
そういってシスターは部屋を出て行った。俺もそろそろ出たほうがいいかな。
「アッシュ。俺も席外すわ。」
「いや、いてくれ。トーマにも聞いてほしい。さっきの話じゃないが巻き込まさせてもらう。」
アッシュの発言に渋い顔をした俺を見てセバスチャンが問いかける
「アッシュ様?こちらのお方は?」
「あの時僕たちを助けてくれたハンターだ。僕の友人でもある。」
おい、いつから友人になった。俺はさらに渋い顔をしたが改めて挨拶をする
「初めまして。トーマと言います。お怪我が治って何よりです。」
俺はそうやって頭を下げた
「これはこれはご丁寧に。私めはライオット家にお仕えさせていただいている第5代セバスチャンと申します。アッシュ様のご友人にこのような不躾な格好でのご挨拶で申し訳ありません。」
「構いませんよ。お体を大事になさってください。」
つーか5代目!?セバスチャンって世襲制なのかよ!?
「という訳でトーマ。君もここでセバスチャンの話を聞いてくれ。」
「どういう訳だよ・・・」
俺がアッシュに足止めを食らっていると司祭様が部屋に入ってきた。
しまった・・・もう逃げられないじゃないか。
「お待たせしました。おや?トーマ?なぜここに。」
「俺が聞きたいくらいですよ・・・」
「僕が同席をお願いしました。彼にも力になってもらえればと。」
「ふむそういうことでしたら・・・」
納得しないでくれ司祭様!
「とりあえずセバスチャン。元気になってよかったな。しかしあの程度に後れを取るとは腕が落ちたんじゃないか?」
「確かに戦闘からは遠ざかっておりましたからね。これを機にまた腕を磨くとします。」
「怪我を完治させるまでは無理するんじゃないぞ。」
「もちろんです。執事業に支障をきたすわけにはいきませんので。」
「2人は知り合いなんですか?」
俺が尋ねると司祭様が答えてくれた
「元パーティーメンバーだ。」
「司祭様って冒険者だったんですか?」
「昔の話だよ。」
「今聖職者ってのが信じられませんが。」
「お前だってそうだろ。」
そういって2人が笑いあう。いつもより砕けた話し方をしている司祭様を見ると仲もよかったのだろう
「さて、昔話をしに来たわけじゃないんだろう?今の状況を見ると最初の話とは違うみたいだしな。」
司祭様が尋ねる。なんでももともとはクリスの光の属性の修行を司祭様の下でしてほしいということだったらしく。アッシュが来るのは聞いていなかったらしい。この様子だと俺は黙ってるほうがよさそうだ。
「だましていたのは申し訳ない。皇子様の出立を悟られるわけにはいかなかったので・・・」
「誰に?王国で何かあったのですか?」
「簡単に言うとクーデターです。」
「おいおい、国家機密じゃないのか?」
アッシュが答える。
「今さら国家機密も何もないよ。叔父上に国を乗っ取られてしまえば僕らは国家とは何も関係なくなってしまうからね。」
「叔父上?まさか右大臣様が?」
「その通りだ今回のクーデターの頭は叔父上ミルコ=ライオネスだ。もっとも今はミルコ=フォン=ライオットと名乗っていますけどね。」
「王家の名は使えないのでは?」
「クリス様を嫁に迎えるおつもりです。アッシュ様がその動きに気づき今回の脱出をお考えになられて様ですから。」
「城に幽閉されているとはいえ情報は仕入れれたからね。さすがに50前の人とクリスを結婚させるわけにもいかないしね。」
「ミハエル王は?」
「ミルコに飼い殺しの状態です。多分毒でも盛られたのでしょう・・・」
「あとはクリスとの婚約がすんでしまえば晴れてこの国の王だ。」
「しかしいくらミルコ様とはいえ次の王位継承権はアッシュ様にあるのでは?」
「本来であればそうだけどそのために父上が生かされているのだろう。とりあえず準備を整えるために僕はいったん城を脱出したというわけだ。幸いこの町ならば冬の間なら手は出せないからね。その間に父上が亡くなったら僕が王になるしね。」
「アッシュ様、さすがにその発言は・・・」
「セバスチャン、僕は父のことはあきらめている今はこの国の為に何ができるかを考えなければならないのだから。」
「アッシュ様・・・」
なるほどね・・・。つまり襲ってきた連中はミルコってやつが送ってきて刺客で狙いはクリスだったってことか。
アッシュも強がってはいるが本当は父親も助けたいんだろう。握りしめた手が震えている。
「しかし準備とは?この町にはそれほど必要なものがあるとは思えませんが?」
「それは僕が言うわけにはいかない、命令になってしまう。セバスチャン、頼む。」
「承知しました。率直に申し上げますと戦力の増強です。司祭様、シスター様、ギルド長様、オットー様、マルタイ様、ヒースロー様。あなた方にわが軍に加わっていただきたい。」
「それはまた・・・」
「王都ではいまミルコにより税の増額など各地への圧迫が始まろうとしています。おそらくこの春にはクリス様との婚約も含め様々な悪政が始まることになるでしょう。お力を貸してはいただけないでしょうか?」
「・・・・・・今すぐお返事はできません。昔なじみの頼みですし無下にはできませんがあくまでこれは本人の意思を重要視させていただきます。そしてオットー、マルタイ、ヒースローの3名にに関してはお断りさせていただきます。彼らは2年前に襲撃されたグランガドルの調査を継続していただかなければなりません。」
2年前のグランガドルは森の泉に原因があるのでは?という結論にたどり着きつつあった。おっちゃん達はその調査でこの2年間ほとんど泉付近で過ごしている。今年の調査で何かわかりそうとマルタイさんが言っていたので今泉を離れるわけにはいかないだろう。
「そうですか・・・仕方ありませんね。いいお返事を期待しております。」
「トーマ。2人で話がある。ついてきてくれないか?」
「内容はなんとなくわかってはいるが・・・」
俺とアッシュは部屋を出た
「トーマ。今から僕が話すことは分かっているだろうが改めてお願いする。僕を手伝ってはくれないか?」
「なぜ俺にこだわる?」
「こうやって素直に話せる人も周りにはあまりいなくてね、正直疲れてもいる。だから皇子としてではなく友人として君に助けを求めたいんだ。」
「1平民に期待しすぎじゃないのか?まだ出会って数日しかたっていないのに・・・」
「後はなんとなくとしか言いようがない。君から感じる異質感というかこの世界ではありえないようなことが僕の力になってくれそうな気がしたんだ。」
こいつ・・・俺が異世界から来たってのを本能的に察してやがるのか?
皇子は伊達じゃないってことか
「俺も司祭と同じだしばらく保留させてもらう。俺はお前みたいに人を見る目がいいわけじゃない。この冬の間にお前を見極めさせてもらう。」
「お眼鏡にかなうように頑張るよ。よろしく頼む。」
そういって俺に頭を下げた
「何やってる。王族が簡単に頭を下げるな。」
「君は友人だ。それくらい構わない。誰も見てないしね。」
「まったくお前は。」
「僕らの事を言っていなかったね。我らは革命軍。悪しきものからこの国を取り戻すもの。この国の為なら頭の一つや二つ喜んで下げるさ。」
アッシュはそういって俺に笑顔を向けた。その笑顔はいつもの皇子スマイルじゃなく心から笑っているようだった




