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与えられた名

走り出すこと約十分。

行くときは歩いたが、2時間程で着いたのだから後四十分もあれば十分だろう。


「それで、名は決まったか?」


『ふむ、中々思い浮かばなくてな。

・・・お主の世界で狼はなんと言うのだ?』


「狼は狼だが?それ以外の呼び方といったら『ウルフ』だな・・・」


『『うるふ』?随分と変わるのだな?』


「ああ、俺たちの世界で使われている言語に『英語』と言うモノがあってな・・・

英語では狼をそう呼ぶんだ。・・・で参考になったのか?」


『・・・駄目だ。何も思い浮かばん』


無理もないがな。今までずっと『黒龍』と呼ばれていたのだ。

いきなり自分で名を考えるのも・・・そういえば


「黒龍?」


『・・・ん、なんだ?』


「お前は何年生きているんだ?」


『分からぬ。我等龍にとって、時間とはさほど意味を持たぬのだ。

お前達人間の寿命はせいぜい70~80年だろうが、我等龍は『幼龍』の時に

その長さが決まるのだが、我は決まらなかったのだ』


「それはつまり・・・」


『そうだ。我は死なぬ、ということだ』


「成る程。なら、自分が少なくとも何年生きているか、はっきり覚えていないのか?」


『ああ、そうだ。だが、既に五千年は経っているだろう・・・』


「そうか」


五千年。それだけの時間をずっと名を持たずに生きてきたのか・・・


途方も無いな。俺たち人間にはどう足掻いても届かない時間だ。


「ならば、名はハヅキに付けて貰おう」


『ハヅキとは?』


「さっきいた三人の中で一番小さかった者の名だ。

子どもは正直だからな・・・案外良い名を付けてくれるかも知れないぞ?


ちなみにもう一人は、ミリー・レイラだ」


『そうか、では期待をしておこう』


「ああ、そうしてくれ。では飛ばすぞ!」


『うむ』


ドン!








「もう、着いたか・・・」


『あれだけ飛ばせばそうだろう?』


「それもそうか。

だが、たったの10分で着くとは思わなかった・・・俺の体はどうなってるんだろうな?」


『それは魔王に聞けば良かろう』


「そうだな、連れてきたのあいつだし。

宿に向かうか」


『我が一緒で大丈夫なのか?』


「何とかなるって」


『適当だな?』


「適当が一番だ」


何事もそんなに深く考えても仕方が無いからな。そんなのはただ疲れるだけだし、

俺はきついのは御免だ。





「ただいま~」


「お帰り、拓磨!」


ガバッと、いきなりリムが抱きついてきた。


周りの視線が痛いのだが・・・


「リム、とりあえず離れてくれ。苦しい」


「あ!ごめんね。嬉しかったから」


「悪かったな心配ばかり掛けて、これからは大丈夫だからな」


「うん!」


『これがあの魔王か・・・』


「うわっ!なにこの狼?」


「それに着いては部屋に戻ってから話す。

今は、ハヅキとレイラのことが優先だ」


「それも、そうね・・・」


今のところ問題は無いようだが、このままでは何れ何かが起こってしまうかも知れない。

そうなる前に解決しなくては・・・


「部屋に行くぞ?」


「うん」

『うむ』




部屋には着いたが、物音は一切していない。

まだ、ほんの少しだがレイラの性格が暗い者で無いことくらいは分かる。


それが、こんなに静かだと言うことは余程衝撃的だったのだろう。


『死んだはずのハヅキが生きていた』という、事実が・・・


「レイラ、入るぞ?」


ガチャ


「・・・あ、タクマ!お帰り!

龍は倒したの?流石だね~」


「レイラ・・・」


「いや~やっぱり、グランド・オーガをたった一人で倒しただけあるね。

うんうん」


「レイラ、無理をするな」


「っ!・・・な、なに言ってるの?無理なんてしてないよ~。あははは・・・」


「大丈夫だ、リムも言ったが、俺たちはどこにも行かない。

だから、全てをぶつけてくれて構わない。」


言いながら、レイラの頭を撫でる。

すると、徐々に目に、涙が溜まり始めた。


「いいんだ。泣きたければ泣け。我慢しなくていい」


「・・・う・・・ぅ・・タクマァ・・」


「ああ、今は泣け。

ハヅキのことは、その後だ」


「うん・・・うん・・・・ありが・・ぅ」


それからレイラは泣き続けた・・・





「落ち着いたか?」


「うん、ごめんね・・・みっとも無いとこ見せちゃって」


「良いのよ、もう仲間なんだから。泣くときだって遠慮はいらないわ」


「そう言うことだ」


『うむ、人間の絆というのも中々だな』


「うわっ!なに、この狼!?」


「全く同じ反応だな?」


「当たり前でしょ!狼がいたら普通驚くわよ。

拓磨はずれ過ぎよ」


はいはいと・・・


「ハヅキはずっと眠っているのか?」


「見事に流したわね?」


「タクマだからね」


「それもそっか」


お前ら俺をどう見てるんだ?

今はどうでもいいが・・・


「それで、ハヅキは?」


「あ、うん。ずっと眠ってる。

起こそうとしても触れることが出来なくなってるの」


「なに、リムはさっき触れていたが?」


「そうなの。さっきは触れることが出来たのに今は出来なくなってる。

だから、私たちは看ていることしか出来なかったわ・・・」


このことも器にされていたことが関係しているのか?

それとも・・・


そうだとしたら


「拓磨?」

「タクマ?」


「ハヅキ、起きろ」


簡単に触れることができた。


「「え・・・?」」


二人揃って何とも間抜けな顔をしているが、今はどうでもいい。


「ん・・・あ、さっきのお兄ちゃん。

おはよう」


「ああ、おはよう。ぐっすり眠れたか?」


「うん、大丈夫だよ」


「そうか」


『そのものが『ハヅキ』か?』


「ああ、そうだ。今は、まだ待ってくれるか?確認す「シロちゃん!」る・・・は?」


「「え・・・?」」

『ぬ?』


今度は俺まで間抜けな顔になっているだろう。

自分でもハッキリ分かる。


「「「シロちゃん?」」」


はもった。きれいにはもった。


「わ~い!」


もふっという効果音がつきそうな感じで黒龍に抱きついた。


『む?なんだ!いきなり!』


「わ~、もふもふ!」


『止めぬか!こら!』


「きゃ~、おもしろ~い」


バタバタと黒龍の背に乗っかり騒ぐハヅキとそれを何とかふりほどこうとする黒龍。

その光景はとても微笑ましいものだ。





こうして黒龍の名は『シロ』という、至極単純な名前に決まった。


これからはもっと、賑やかになるだろうな?


楽しみだ・・・






余談だが、黒龍の事は女将さんには何も言われなかった。

ある意味凄いな、女将さん

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