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ハヅキ・カーアイル

グアアアァァァ!


ドゴッ!


襲いかかってきたオーガをぶっ飛ばす。

それだけで他の奴らが諦めるとは思わなかったが、今ので約半数が俺を警戒し始めた。


どうやらオーガも馬鹿ばかりでは無いらしい。


オーガは身長約二メートルの魔物だ。

それは平均的なものであり、力の大きな者は三メートルを超える者もいるらしい。


そんな者足りの中で警戒した者は戦い慣れした者。

今尚俺に襲いかかってきている者は、今まで禄に戦わずグランド・オーガに守られてきた者だろう。


襲いかかってきた者は容赦なんてしてやらない。


「お前らがこれまでどれだけの者を殺してきたか・・・そんなことはどうでもいい。

だが、仲間の村に手を出したのは間違いだったな。」


『なぜ?』


「ほう、これは驚いた。話ができるオーガもいるんだな?

で、『なぜ?』とは」


『お前たちがこの森に入ってきた時から我は主人からお前を見張っておくよう命じられた。

だから、お前がここに来ることも分かっていた』


「それならば質問など意味が無いだろう」


『そうではない』


「?」


『お前がここに来ることは分かっていたが、その理由が分からないのだ。

たかだか数十分前に会った他人の為になぜここまで来たのだ?』


「お前たちがレイラの村を滅ぼしたから・・・それだけだ」


俺にとってはそれだけがここにいる理由。

それ以外の理由は必要ない。


『お前はそのためだけにここに足を踏み入れ、無駄に命を落とすのか?』


「何を言っている?俺はお前たちをぶっ飛ばしに来たんだ。

命を落とすつもりなどない」


『・・・・・』


「言いたいことが終わったのなら、始めようか?」


『何をだ?』


「分かっている筈だ。

今ここにいるどのオーガよりもお前は強い、それに、俺が相手なら力を隠す必要もないだろう?」


『お前は本当に何者なのだ・・・?』


「ただの異世界人さ」


『・・・なるほどな、主人がお前を見張るよう命じた理由がよく分かった。

ならば!』


瞬間力が爆発した。


これがこいつの力か、戦闘は結局全然していないからよく分からないがそれでも分かるほどに、こいつの力は強大だ。


なぜ、こんな奴らに混じっているのか不思議で仕方が無い程に。


『我が今まで全力で戦ったのは、主人のみ。

主人には全く通用しなかったが、この力をお前が受けて生きている保障など無い』


「それは結構だ、それ位じゃないと意味がない」


『行くぞ!』


「来い!」


ズガアアァァァ!


突進してきたオーガの腹に拳を放つ


ドゴッ!

『ガハッ』


吹っ飛びそうになったオーガの足を掴みこちらに引き寄せもう一発腹に撃ち込む。

『ゴフッ・・・!なん・・なのだ?

おま・・・え・・のその・・力・・・・は?』


「世界最強の魔法使いの力・・・のほんの一部だ」


『フッ・・・それは・・ま・・・た』


「俺の名前は知っているかもしれないが一応自己紹介をしておく。

タクマ・ミョウホウだ。

お前の名は?」


『オー・・ギュス・・・ト』


「流石だなオーギュスト。本気で向かってきてくれたこと、感謝する」


『お前・・・は、変な・・・・奴・・だな?』


「よく言われるよ。もういい加減に休め」


『ああ・・・そう・・させ・・・・てもら・・・う』


オーギュストは気を失った。

死んではいないだろう、仮にもこの場にいるオーガの中では最強なのだから


「流石だね~・・・タクマ君?」


「お前がグランド・オーガか?」


「そうだよ。まあ、正確にはこの身体を貰ってるから、この姿がボクって訳じゃないけどね。

あ、でもミリーの村はこの身体で滅ぼしたけどね」


今のグランド・オーガの身体は身長が130㎝ほどの小柄な少女で髪は漆黒で腰の辺りまで伸びており、服は髪と同じく漆黒のワンピースを着ている。


「そうか。では、その身体から出て行って貰うとしよう」


「そんなことができるの?ボクが身体から出るのは、身体の持ち主が死んだときか闇の属性で攻撃を受けた時だよ」


「だから何だ?」


「っ!」


俺が一瞬で間合いを詰めるとグランド・オーガは驚いたような顔をした。


「俺はお前をぶっ飛ばすことができればそれでいい」


できるかは分からないがリムの力を少し貰っているのだから大丈夫だろう


拳に力を集め、闇をイメージする。


すると、拳が黒いものに覆われ始めた。

これが『闇』だろう。


グランド・オーガは先程よりも驚いていた。

これが闇だと言うことは間違い無いようだ。


闇は邪悪なものとして捉えられることが多かったが、その力を使っている今そんなことは無いと言うことを理解した。


闇は誰もが心に抱えるもの。

闇を知っているから光に憧れる。

光を知っているから闇に憧れる。


「今のお前にとって、闇が光のようなものだろうな?

俺の世界では『浄化』というと、光をイメージする者が多いが

俺は闇をイメージしていてな。


・・・今は悪くない気分だ」


「そ・・・そんな。闇を使えるのは『魔王』だけの筈」


「なら、俺は魔王になるのかもしれないな?」


今はそんなことはどうでもいい、さっさと身体から出て行って貰おう。


「君は・・・一体何者なんだ!」


「さっきも言ったろ?

ただの異世界人だ」


ズン!


「カハッ!」


「闇の属性で攻撃を受けた時」そういっていたので、攻撃なら何でもいいのだろうと思い、腹に掌を押し込む。


それだけで効いたようだ・・・身体から『何か』が出てきた。

おそらくこれがグランド・オーガの本体だろう。


持ち主は倒れてしまったが、気を失っただけだろう。

戦いの被害が及ばないよう、結界を張っておく。


俺はまだ何も習得していないがなぜ、こんなことができるのだろうか?

帰ったらリムに聞いてみよう。


まあ、その前にこいつを何とかしよう。


「お前が本体か?」


「そうだよ」


「ならば、なぜ形は身体のままなんだ?」


「その身体に長く入りすぎた所為で形が定着しちゃったんだよ。

でも、紛れもなくこれがボクだよ」


「そうか・・・」


「本気で行くよ?」


「当たり前だ、そうでないとぶっ飛ばしても意味がない」


「余裕だね?闇が使えるからといって、それだけでボクに勝てると思ってるの?」


「お喋りはもう面倒だ、早く始めるぞ」


「そうだね・・・行くよっ!」


ダッ!


同時に駆けだし中央で激突する。


その際生じた衝撃波で周りにいたオーガの殆どが吹っ飛んだ。



グランド・オーガが突き出した拳を掴みそのまま投げ飛ばすが、壁にぶつかる寸前に回転し壁を蹴ってこちらにまた向かってくる。

今度は俺が吹っ飛ばされそうになったが、踏みとどまりそのまま殴り合いになった。


俺の攻撃をグランド・オーガは躱し、グランド・オーガの攻撃を俺も躱す。


偶にどちらかの攻撃が当たってもそのあとはまた躱しあっているので消耗戦になっている。

そんな戦いが数時間続いたが、いい加減決着を付けなくては二人に心配を掛けてしまうかも知れない。


「中々粘るんだね・・・でも、こんな楽しい戦いは久しぶりだよ。

君がこの世界に来てくれたこと、感謝するよ」


「それはどうもっ!」


「っと、危ない危ない」


「よく言うな?

殆どくらってなんかいないくせに」


「食らって無くても動き続けるのはきついんだよ?」


「そうか、では終わりにしようか?」


「そうだね」


「いくぞっ!」

「いくよっ!」


ズガガガガガガガガガガ!

ドッ!ドガッ!バキッ!ゴッ!


「やっぱり強いなあ!お前は!」


「そっちも・・・ねっ!

とても人間とは思えないよ!」


「おおおおおおおお!」

「はあああああああ!」


ドゴォッ!


「ガハッ!」


俺の拳がグランド・オーガに直撃した。


「ほん・・・とに。

君は・・・何・・・・者・・だい?」


「ただの異世界人だとさっきから言っているだろう」


「そう・・・だね。

ボクの・・・完敗・・だよ。

ご・・めん・・・ね」


「いいさ、俺の気はもう済んだからな。

だが、もしもまた仲間の大切な者に手を出したら、

そのときこそ容赦はしない」


「・・・・・・分かった」


「ゆっくり休めよ」


「・・・スゥ・・・スゥ・・・」


「・・・全く」


眠ったグランド・オーガを横にさせて、身体の持ち主の結界を解く。


「とりあえずここから出るか・・・」










「ん・・・ここ・・は?」


「目が覚めたか?」


「お兄ちゃん・・・だれ?」


「俺はタクマ・ミョウホウだ。お前自分が誰だかちゃんと分かるか?」


「うん、何か少しふらふらするけど、大丈夫だよ」


「そうか、なら名前を教えてくれるか?」


「ハヅキ・カーアイル」


「ハヅキか・・・いい名だな」


「・・・・」


「どうした?」


「くぅ・・・すぅ・・・」


眠ってしまったか。

ま、無理も無いだろう。


ずっと、器にされていたんだからな。


ふと、グランド・オーガの言葉を思い出す。


『ミリーの村はこの身体で滅ぼしたけどね』


ということは、ハヅキはいつかその時のことを思い出すかも知れない。

ただの女の子にその現実はあまりにも酷すぎる・・・だが、

受け止めなければいけないことも事実だ。


せめてその時までは俺たちと一緒にいる方がいいだろうな。

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