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サバイバル

Aグループは俺。

Cグループはミリーを倒したロール・アイト。

Eグループは赤騎士がそれぞれ優勝し、この3人でサバイバルをすることになった。


試合開始は1時間後。


俺はミリーが寝ている医務室に行き、暫くするとリム達がハヅキ、瑠美を連れて来た。


リムがミリーの容態を確認して問題ないと判断し一安心する俺たち。

そしてハヅキが俺にグローブを渡してきた。


それがなんなのかを聞くと1週間ほど前に言っていた俺の武器みたいだ。

右手のグローブの甲の部分には紅と蒼の宝石が半分ずつ互いを補うように円を描いて填められていた。


イフリート達にも協力して貰い中に宿っている力はそのままにして形だけを変えたみたいだ。


左手の方には魔剣を探していた時に見つけた風の聖霊意思が填められている。

これはまだ他の聖霊石がないことと、風の聖霊であるシルフが居ないことの2つの理由から今は一つだけ。


この先他の聖霊石を見つけてシルフに会うことが出来れば右手の様に形を変えて貰えるみたいだ。


聖霊石の力は魔力をながせば解放できるらしい。

だが、右手は2つの相反する力があるため使うときはどちらを使うか明確にイメージしながらながさなければいけないみたいだ。


「サンキュ、ハヅキ。絶対勝からな?」


「うん!頑張ってね、お兄ちゃん」


「ハヅキとルミには私達が付いてるから安心して本気を出して良いわよ?」


「ああ」


それから人数分の飯を買いに行って医務室で食べてから俺は決勝戦進出者の控え室に戻った。

そこには既にロール・アイトと赤騎士がいた。


近くで見ると赤騎士は本当に何から何まで赤かった。

イフリートと張るくらいだ。


ミリーは火の魔術を使うと言っていたが剣もあるといいうことは剣に魔法を乗せるのだろうか?


ロール・アイトは見ていたが剣以外は余り使わないのだろう。


関係なく倒すが。



「よろしくね?タクマ君?」


考察していると声を掛けられ、見てみると右手を差し出しているロール・アイトがいた。

一々フルネームは面倒だからもうアイトでいいや・・・。


「ああ、よろしく」


簡単に挨拶を済ませてそれ以降は何も話さずに始まるのを待つ。





10分程経った頃


『皆さん長らくお待たせしました!これより闘技大会決勝戦を始めます!

それでは選手の入場です!』


ワアアアアアアァァ!


「うるせ・・・」


一言ぼやいて闘技場内に先に向かう。


少しして後ろから2人分の足音が聞こえた。



『まず入場したのはAグループ優勝者タクマ・ミョウホウ選手。

続いてCグループ優勝者ロール・アイト選手。Eグループ優勝者赤騎士です』


俺たち3人は中央から均等の距離に立ち三角形を作る。


そして


『闘技大会サバイバル!始め!』


サバイバルが始まった。






最初に動いたのは赤騎士だった。


剣を抜き刀身が炎に包まれ次第に収まっていくと他の剣と同じだった刀身が赤く染まった。

それを見てアイトも剣を抜き構える。


反応が遅い・・・。


赤騎士はその場から一歩の踏み込みで俺のほうまで突っ込んできた。

右手に魔力を流し水の聖霊石を解放して拳を突き出すとその剣と拳がぶつかった。


この聖霊石に宿っているウンディーネの力はかなりの物だがそれでも赤騎士の刀身に傷を入れることは出来なかった。


そのまま俺たちは鍔迫り合いのような格好になったが、後ろから走ってきていたアイトが赤騎士目がけて剣を振り下ろした。


「相手は1人じゃないわよ!」


そう、これはたった3人とは言えサバイバル方式の戦い。

やっかいな敵なら一時休戦して2人で1人を攻撃しても何の問題も無い。


協力する気なんて全くないがな・・・。


ガキイィン!


アイトの剣と赤騎士の鎧がぶつかり甲高い音を立てる。

余程丈夫なのか、アイトの力が足りないのか剣同様傷一つ付かなかった。


しかも全く気をそらすことが出来ていないから意味が無い。


「たく・・・毒が使えなけりゃ何も出来ないのか?お前は?」


「な、気付いてたの?」


軽く弾き返され着地し再び剣を構えるアイトにそう言うと本気で気付かれてないと思っていたのかかなり驚いていた。

別にこの大会は『毒は使用禁止』などと言ったルールは無い。

使う奴が殆どいないだけだ。


「医者が診ればすぐに分かるだろ・・・つうかお前はいつまでこの状態を続けるつもりだよ?」


さっきから一向にアイトの方には見向きもせずに俺しか標的にしていない赤騎士に聞いたが何も言わなずに更に力を込めてきた。


「こっちを無視してるんじゃないわよ!」


アイトが鎧の弱点部分である間接部を狙って剣を振るったが当たる直前に赤騎士の全身が炎に包まれ、アイトは咄嗟に離れた。


俺?


勿論直撃。

超熱い・・・。


「いい加減離れろ!」


足払いを掛けて転ばそうとするが簡単に避けられる。

当てようと思っては居なかったからいいが・・・。


「魔法を無詠唱で使うって・・・どれだけの魔力なのよ?」


「そんなにすごいことなのか?」


未だ炎に包まれている赤騎士を挟んで会話する俺とアイト。


俺も未だ少し燃えているが右手を頭上に持って行き魔力を流す。


サバア!


と大量の水が出てきて俺の体を焼いていた炎を消化する。

そして今度は自身に治癒魔法を掛けて傷を癒す。


「!あなたも無詠唱で・・・」

「・・・・・」


「まぁな・・・」


適当に答えながら俺は跳躍して2人から距離を取る。

離れていても炎の近くは熱い・・・アイトが言っていた通り魔力はかなりのものなんだろう。


「さて、再開と行こうか?赤騎士さん?」


拳を構えると赤騎士も剣を構える。


アイトは今はどうでもいい・・・先にこいつだ。


アイトもそれを察したのか剣を納めて俺たちから離れた。


観客席からはそのことに付いての疑問が飛び交っているがそんなものはどうでもいい。




ダン!


同時に跳び


ガキイィン!


赤騎士の振り下ろした剣と俺の炎を纏った拳がぶつかった。


そこで数十発の打ち合いをして一瞬離れまた次の瞬間にぶつかり合う。

だが、俺の打ち合う度に俺の炎は小さくなっていった。


まあ、炎を使うってことは吸収しているんだろう。

さっきよりも赤くなっていた。


ガン!


「厄介だな・・・その剣」


ガシャン・・・


何も言わず鎧を鳴らして今度は剣を顔の横に持って半身を引いた状態で構えた。


すると赤騎士のからだが先ほどとは比にならない大きさの炎で包まれそれが全て剣に集まり巨大な炎の剣を造り出す。


「それが本気か?」


「・・・・・・ええ」


間が空いて聞こえたその声が一瞬誰から発せられてのか分からなかったがすぐに赤騎士から発せられたと分かった。


その声は高く澄んだ声をしていた。

歌手としてもやっていけるかもな?


「そうか・・・それなら俺も本気で行く」


俺自身、自分にどれだけの魔力があるのか未だ理解出来ていないが相手が本気ならこちらも出来る限りに本気で答えよう。


「オオオオオオ!」

ズアアアアアアア!


今解放出来る限りの魔力を全て解放し、全てを右手に込める。


ガッ!


凄まじい光が火の聖霊石から放たれ右腕を黒い炎が包み込んだ。

俺の魔力から生まれた炎だからか熱は全くと言っていい程感じなかった。


その炎は音も無く燃え続ける。


「・・・・黒い炎か」


「みたいだな」


右腕を引いて左手を前に出して構えを取る。




決着けり着けようぜ!」


「ああ!」


ドガ!

ダン!


「オオオオオォォ!」

「ハアアァァ!」


ドゴオォン!


ゴオオオオオオオ!


黒い炎と紅蓮の炎がぶつかり合い巨大な火柱が上がり、やがて黒い炎が赤騎士の炎を飲み込んだ。


炎はすぐに収まり闘技場の中央部分にその爪痕を残した。


そこには仰向けに倒れている赤騎士と折れた剣。


鎧にもいくつも罅が入っていた。

兜の部分は顔の右側が少し割れており綺麗な紅い瞳が見えていた。


「やっぱり女だったのか、お前」


「意外?」


近づいて声を掛けると結構元気そうな声が返ってきた。


「別に・・・なんとなくそうじゃないかと思っていた。

根拠はないがな?」


「ふふ・・・変なの。見ての通りわたしはもう戦えないわ?

後は、あの娘を倒せばこの大会はあなたの優勝よ?」


「そうなるな・・・じゃ、また機会が会ったら会おうぜ?」


「うん」


赤騎士をその場に残し俺はアイトの方に向かった。





「待たせたな?始めようぜ?」


「・・・・いいえ、私の負けよ。あんなの見せられて勝てると思える程おめでたい思考回路は持ち合わせてないわ。

優勝、おめでと」


そう言ってアイトは剣を地に投げた。


ガシャンと音を立てて地に着く。



この大会において武器を捨てると言うのは降参の意思を示す行為。

つまりこいつが言った通り


『ロール選手が武器を捨てました!これは降参と言うことになります!

よって、今年の闘技大会優勝者は!

タクマ・ミョウホウ選手だーーー!』


盛り上がる実況に対してしんと静まり返る観客達。

それはそうだろう?

こんな形で付いた決着に納得する奴なんて殆どいない。


「ふざけんなーー!ちゃんと戦え!」


「そうだそうだ!こっちは金払って見に来てんだ!」


その声を皮切りに闘技場内は非難の声に包まれる。


アイトは顔を俯けて肩を震わしていた。


そしてアイトが居る壁際の一番近くに居る観客がアイトに向かって手に持っていた飲み物を投げつけた。

すぐに接近してアイトの手を引きその場から離れさせる。


バシャン!


「あ、ありがと・・・」


礼を言われたが無視して壁に近寄り


ドガン!


殴りつけた。


それによって騒いでいた観客が一斉に静かになる。


剣を拾ってアイトの手を引き赤騎士の方へ向かう。


疲れたのかあの後すぐに眠ったようだ。

鎧ごと抱えて控え室に戻る。







「ほら」


「あ・・・ありがと」


「じゃ、俺はもう行くわ・・・あいつ等が言ったことなんか気にするなよ?

するだけ無駄だ」


赤騎士を長椅子に寝かせて剣をアイトに返してそれだけ言ってから俺はあいつ等の所に向かった。







「あ、タクマ!優勝したんだって!おめでとう!」


「ミリー・・・もう起きて大丈夫なのか?」


「うん!」


リム達の所に行くと起きてきたミリーがいて俺を見るなりそう言いながら駆け寄ってきた。

その様子からも、もう大丈夫だと言うことが窺えるから安心した。


「おめでとう、拓磨」


「「おめでとう!お兄ちゃん!」」


「おっめでとー!流石だね!タクマ!」


「あの炎は中々の物だったぞ!ボウズ!」


「水の使い方もよかったぞ?これからも精進しろ」


「はいはい・・・さて、宿に戻るか?」


「ええ」


「「「「は~い」」」」


「うむ」


「そうだな」





こうして闘技大会は俺の優勝という形で幕を閉じた。





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