第一試合
今年の闘技大会は参加者が多いこともありA~Eまでの五つのグループに分かれており、それぞれのグループの優勝者がサバイバル形式で戦いを行い最後まで残っていた奴が優勝。というシステムだ。
そんで、俺はAグループでミリーはCグループ。そして何故かBグループにリム、ネイミル(いつ戻ってきた?)、イフリート、ウンディーネが居た。
・・・なにやってんだ、あいつら?
ついでに言っておくとB・Dグループは団体戦となっており一組最低でも4人(最高6人)はいないといけない。
あの4人がね~・・・大丈夫だろうか?なるようになるか。それなら放っておこう。
さて、最初の相手は『カイト・サイラス』か・・・この前一緒に酒飲んだ奴の一人だな。
二回戦以降の相手を見てみると何故か全員酒を飲んだ奴だった。誰かが吹き込んだりしたのだろうか?
それともブレット辺りが何かしたのか?・・・気にしてもどうにもならないな。
ミリーの方を見てみるとホッとしたような残念なような複雑な顔をしていた。
俺も近づいてCグループのトーナメント表を見てみるとハルベルトの名前がないことに気付いた。
成る程・・・前回負けた奴だから倒したかった思いはあるが、今回も負けてしまうかもしれないという思いもあったのか。
ん・・・?
俺は自分のトーナメント表を見てみた。暫くして勝ち上がると五回戦でハルベルトと当たることが分かった。
「めんど・・・」
つい口に出てしまった。
「何が?」
「おお、ミリー。いやな、勝ち上がるとハルベルトと当たるんだよ・・・」
「え、ホントに?どれどれ・・・・・あ、ホントだ」
俺の言葉にミリーは俺とハルベルトの名前を探して納得する。
そして、俺を見て・・・。
「絶対勝って、タクマ」
そう言ってきた。
『さあ、いよいよ今年の闘技大会が幕を開けました!昨年は参加者が少なかった今大会ですが今年は多くの猛者が参加し大いに賑わっております。私も楽しみです!
では、こんな野郎の話は余り長く聞きたくないでしょうから早速それぞれのグループの一回戦を開始しましょう!
野郎共!準備はいいかーーー!』
オオオオオオオオォォ!!!
『選手の入場だ!一人目は今回が初出場となる『タクマ・ミョウホウ』選手!対する相手は昨年は参加しませんでしたが一昨年の大会では五回戦まで勝ち上がった『カイト・サイラス』選手だ!』
こういう実況はいつ聞いても『無駄にテンション高いよな~・・・』位しか思わない。
向こうにいた頃暇だったので点けていたテレビでプロレスやら何やら見ていたが審判はやたらテンションが高い。マイクがあるとは言え、疲れないのだろうか?
と、こんなどうでもいいことを考えているうちに闘技場に着き、サイラスも着いた様だ。
こっちに手を振っている。
俺はそれにチョキで返す、と
「おい!」
と返ってきた。
『それでは早速始めましょう!試合開始!!』
その合図と同時に俺は駆け出しサイラスに仕掛ける。俺の早さに驚いたのかは分からないが一瞬動きが止まったが何とか躱した。そして一歩下がり剣を構える。
そこで俺たちの動きは止まった。
サイラスはこちらの隙を窺っているようだ。構えた態勢のまま右に少しずつ移動していく。
「・・・・」
「・・・・」
「ハッ!」
「なっ!?」
俺は待つのも面倒なので拳を地面に打ち付け砂煙を発生させる。一種の目眩ましだ。サイラスは驚いたようだがこの間に決めさせてもらうとしよう。
タン!
ズン!
「ガッ!・・・お前、この間とは、全然、違うな?」
「これは戦いだからな・・・またそのうち戦おうぜ?」
「・・・・ああ」
気を失ったサイラスをその場に寝かせ俺は闘技場を出た。瞬間湧き上がる歓声を聞いて次の戦いに意識を向ける。
(待ってろ?ハルベルト。お前は絶対に潰す)
控え室でCグループの戦いを見ていると丁度ミリーが戦っている所だった。相手は女だが、モニターで見ても鍛錬を積んでいることが分かった。騎士か何かだろうか?装備している鎧には紋章があった。
ミリーと相手が急接近し鍔迫り合いの状態になる。
離れて接近し撃ち合ってはまた鍔迫り合い。この状態が暫く続いた。ミリーも少しは魔法が使えるがどうやらそんな余裕はないらしい・・・唱えようとしてもすぐに邪魔され結局は撃ち合うことになる。動きながら詠唱はまだできないようだ。
相手が魔法を使えるどうかは分からないが今の所使う様子は無い。既に使っているのかも知れないが。
その後も一方が押すことはあったが決着は着かなかった。ミリーはだいぶ体力を消耗している様だが相手は疲れた様子が無い・・・。
永続型の魔法、なんてものがあるかどうかは分からないが、もしあるとしたらあいつはそれを使っているのだろう?そうでも無ければミリーが体力でここまで差をつけられるとは思えない。
肩で息をしているミリーに対して相手は全く呼吸が乱れていない。
お互いが距離を取った時それは起こった。
『ハアァァァ!』
ミリーが魔力を解放すると共に魔剣が光を放つ。
その光は強く強く輝き続け収まると同時にミリーは駆けだした。
相手は突然のことに焦ったようで反応が遅れたが何とか撃ち合いに持ち込んだ。だが、明らかにミリーの方が押している。
『これはミリーが勝つ』
おそらく誰もがそう想った筈だ。
もちろん俺も・・・。
「?どうしたミリー・・・」
ミリーの動きが突然止まり相手はその隙に距離を取り剣を鞘に収めた。
『まるで試合はこれで終わりだ』とでも言うように・・・。
そして・・・ミリーが倒れた。
あまりにも急なことに観客全員が静まりかえりあれだけ煩かった司会者でさえ静かになっている。
結局その試合は相手の勝ちとなった。
医務室に運ばれたミリーの所に行った俺は診察したとお思われる医師に動だったのかを聞いたところ、遅効性の毒が検出されたと言うことが分かった。命に別状は無いが今日1日はまともに動けないらしい。
解毒は行ったから心配は無いとのことだ。
ミリーの顔色を見ると確かに辛そうでは無かった。規則正しい寝息を立てているから本当に大丈夫なのだろう。
額に掛かった髪を横に流して頬を撫でると手に擦り寄ってきた。
心地よさそうに小さく笑って手を掴む。
「タクマぁ・・・がんばれ」
「・・・・ああ。ゆっくり休んでろ、ミリー・・・」
最後にもう一度治癒魔法を掛けて医務室を出るとリムが居た。
「ミリー・・・大丈夫なの?」
「ああ、一応治癒魔法を掛けておいたからな・・・そっちはどうだ?」
「もちろん勝ったわよ。私達が負けると思う?」
「全く思わねぇよ・・・上手くやれてるようで良かったさ。負けるなよ?」
「当たり前よ・・・拓磨こそ負けたら許さないからね?」
「分かってる。そんなつもりは毛頭無い・・・敵が増えただけだ」
「絶対勝つのよ?拓磨」
その言葉を背に俺は控え室に戻った。