一難去ったら次何難?
「タアッ!」
ネイミルがウンディーネに突きを繰り出すがそれは水の剣に止められた。
おそらく水の質を変えているのだろう?
そうでなくては水で槍を受けることなどできない。
ゴアァ!
「うお、危な!しかも熱!」
ネイミルの方を見ていたら火の玉が飛んできた。
イフリートがいつまでも掛かってこない俺に焦れて仕掛けてきたのか?
意外と短気だな・・・?
それはおいといてこっちも始めるか。
「ハッ!」
できるだけ早く決着を着けるため不意打ち気味に拳を繰り出す。
しかし、避けられた。まっすぐなら避けられて当たり前か。
攻撃を躱したイフリートはそのままさっきよりもでかい火の玉を10発以上撃ってきた。
「いやいや!多過ぎるだろ!」
とりあえずその内の3発くらいは避けられたが、残りが当たりそうになった。
なので蹴り飛ばすことにした。龍神の洞窟でも同じことをやったし。
「オラアァァ!」
一発を蹴り飛ばしたがやはり熱かった。そりゃ聖霊の力なら当たり前だよな・・・。
我慢はできるから何とかなるか。
残りを全部蹴り飛ばすことはできないし(足が焼ける)イフリートは『隙あり』とでも言わんばかりに突っ込んでくる。
仕方ない・・・殴るか。
「ふっ!はっ!多すぎだ、ボケ!」
愚痴りながら火の玉を殴ってイフリートに返却したがそれらは全て吸収された。
火の聖霊だからな・・・。
イフリートは拳を突き出してきた。
それに俺も拳で対抗する。
ドガッ!
当然拳はぶつかった。
そしてそこからは打ち合いになったが、俺の攻撃もイフリートの攻撃も殆ど当たらない。
擦る程度だ。これじゃ埒があかない・・・一旦距離を取るか。
攻撃を避けて俺は瑠美がいる方向とは逆の森に跳んだ。
イフリートは一瞬遅れたがそれについてきて後ろからまた火の玉を放ってくる。
飛び道具は厄介だな・・・。しかも今は空中だし、どうにもできん。
当たらんことを祈るばかりだ。
「よっと」
地に足が着いたので、
ドガッ!
すっかり聞き慣れた音を聞いて森の中に駆けた。
だが、すぐに切り返し戻るとちょうどイフリートが火の玉を撃とうとしていた所だった。
「ナイスタイミング!」
そう叫びながら、そのままの勢いで鳩尾にパンチを喰らわした。
完全に不意を突かれたイフリートは撃とうとしていた構えのまま動きが止まり
火の玉は次第に消えて、その場に倒れた。
「ふう・・・結構疲れた。それにしても暑かったな・・・火山にでも行って鍛えるか?」
俺もその場に座り込み少し休憩することにした。
ま、ネイミルは大丈夫だろう。
多分。
ネイミル
「はっ!やっ!もう!いい加減喰らってよ!」
さっきから突いたり、振り下ろしたり、薙ぎ払ったりしてるけど
全然当たらない。
突きは剣で受け止められるし、振り下ろしと薙ぐのは少し体をずらして避けられるしで・・・
「もう!面倒くさい!うわっ!」
愚痴を言ったらその一瞬を突いて攻撃してきた。
それで体勢を崩されてしまって、よろけながらも何とか躱した。
所々服が切られたり擦った所から血が出たりしたけどこの際構ってられない。
本気で行かないとこっちがやられちゃうよね?
さっきタクマに自分で言ったことを思い出した。
でも、本気出すと疲れるんだよね~?仕方無いか・・・
ウンディーネが迫ってきた。なんか剣がさっきよりも大きくなってる。
そしてそれを交差させて斬りつけて来たけど、
「はあ・・・」
ため息をつきながら槍で受け止めた。
「仕方無いから本気でいくよ?・・・ハアッ!」
受け止めたままそう言って槍を振り抜き剣ごとウンディーネを吹っ飛ばした。
距離が取られないようにボクもそれを追って、その場から駆けだし連続で攻撃する。
キキキン!キキキキキン!ガ!ギギギギギン!
さっきよりも速度を上げて連続で斬りつける。
それでもウンディーネは全部防ぐ。
「全く・・・この体勢でよく防げるよね?『流石は聖霊』とでも言うべきかな?」
ここはまだ空中なのにさ・・・・。
ザッ!
でもやっぱりその内地面に着くからね?
一気に距離を取られた。
「もう・・・このままやられてくれれば良かったのに~・・・」
さっきのも結構疲れるんだよ?言っても意味ないから言わないけどさ。
ウンディーネは近戦闘は部が悪いと思ったのか遠距離攻撃に切り替えてきた。
水圧を極限まで高めた水を何発も放ってくる。
でも、槍を回転させて全部防いだ。
そして攻撃が止まったと同時に槍を投げた。
「いっけえぇぇぇぇ!」
槍はまっすぐウンディーネに飛んでいく。
でも直前で剣に弾かれて空高く舞った。
「そう来るよね!やっぱり!」
投げた後すぐにボク自身も駆けだして弾かれると同時に跳んだ。
そして衝撃で伸びた鎖を掴んで回転を掛けてもう一度、
「今度こそ終わりだよ!やあぁぁ!」
今度は思いっきり投げた。
ギュオオオオオオ!!
槍は回転が掛かっていることもあってその威力を更に増しながらウンディーネに向かって行った。
それをウンディーネは、
ギイイィィイイン!
また剣で受け止めた。
さっきよりも堅さを増してる・・・結構危ないみたいだね?
着地したボクはウンディーネに向かって駆けだし槍を蹴り上げた。
そして重心が前に掛かっていたウンディーネはそのまま前のめりに倒れてきた。
ボクは振り上げたままの脚をそのまま振り下ろす。
ズガン!
それはちょうど頭にヒットして地面にクレーターを作りながらその場に倒れ伏した。
ヒュンヒュンヒュン・・・
パシ・・・
「はあ、疲れた・・・できれば聖霊とはもう闘いたくないな」
槍を受け止めて愚痴を零す。
「ま、いいか。結構楽しかったし!」
タクマといればこれからももっと、楽しいことがあるだろうしね?
まだ仲間もいるみたいだし・・・
「どんな人たちなのかな~?楽しみ・・・」
これから会う仲間を想像すると思わずにやけてしまった。
自分でもこれほどまで人と会うことを楽しみにしていると言うことがなんだか意外だった。
そんなことを考えていると
「ネイミル!終わったか~?」
「あ、タクマ!うん!終わったよ~。そっちは?」
「こっちも終わった!ていうかさっきまで休憩してた」
「それなら加勢してくれても良かったじゃん?ひどいよ?」
「いや、お前なら大丈夫だと思ってな・・・」
呼ばれて振り返るとタクマが近寄りながら聞いてきて、それに答える。
それにしても・・・凄いね?タクマは・・・やっぱり一緒にいればこれから楽しいことが
もっとありそう。
ホント楽しみだな!
拓磨
「・・・・まあ、いいや。それで、イフリートは?一緒じゃないの?」
少し間があったが納得したネイミルは納得してイフリートのことを聞いてきた。
「まだ、あっちで伸びてるぞ?本気で殴ったらなかなか目を覚まさなくてな・・・こっちも随分派手にやったみたいだが、大丈夫なのか?
お前の怪我にしろ、このクレーターにしろ・・・」
ネイミルは所々から出血しているし、クレーターはかなり深い。
そしてそこで伸びているウンディーネ。
気絶しているだけだから大丈夫だろうが一応治癒術を掛けておくか。
「ネイミル、少しじっとしていてくれ?怪我を治す」
「え?タクマって治癒術使えるの?」
「ああ、すぐ終わる・・・」
ミリーの時のように手を翳して、
『この者の傷を癒せ』
コオォ・・・
光がネイミルを包み傷が治っていく。
服は直らなかったがな・・・瑠美に頼むか。裁縫得意だし。
裁縫道具とかあるのか?
まあ、いいか・・・。
「・・・・・・」
ネイミルは自分の体を見て確認していた。
そして俺を見たが、
「・・・・・・・・」
黙ったままだった。何だろう?俺何かしたっけ?
ミリーたちも全く同じ反応したからな・・・何でだろうか?
「どうした?」
「タクマ・・・・どうしてこんな治癒術をたった一言で使えるの?」
「ん?これは以前仲間の傷を治そうと思ってやってみたらできたんだ。
何か問題があったか?」
「『やってみたらできた』って・・・こんな治癒術使える人いないよ!
今まで色んな世界の魔術を見てきたけどこんなの無かったもん!」
「そうなのか?」
いきなり詰め寄りながら言ってくるネイミルに少し押されながらなんとかそう答えた。
こんなに慌てる程のことなのか?俺が使った治癒術は?
「それより此奴らを何とかしないか?そろそろあいつらの所に行きたいんだが?」
「あ・・・ごめん。そうだね?ルミも待たせてるし・・・っ!」
ネイミルは急に後ろを振り返った。
俺もそれにつられてその方向を見ると何かが飛んできた。
それはこれまでも何度か闘ったし今も俺達の仲間であるシロの同族。
龍だった。
「はあ・・・」
『一難去ってまた一難』
そんな諺を思い出した。
さっさとあいつらの所に行きたいんだがな・・・。