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リムの想い

「まあ、とりあえず紹介する。

義妹の琉美だ」


「よろしくお願いします」


きれいな会釈をして皆に挨拶する。

それを見たリム以外の反応は・・・


「よろしく~・・・あたしはミリー。

それにしてもタクマって妹いたんだね?

全然話さなかったからちょっと意外」


「よろしくね、私はハヅキ。これからよろしく」


『我はシロ・・・こう見えても本来の姿は黒龍だ。

よろしくな?』


「はい!」


皆の自己紹介を聞いて元気に返事をする瑠美。


良かったな・・・こっちに連れてきて。


「それで、拓磨。これからどうするの?

3日後は大会だけど?」


「そうだな・・・ミリーの特訓もしなくてはならないし・・・」


「あたしはいいよ?」


「ん・・・?」


「特訓はシロに付き合ってもらうよ。どこか広い場所に行けば

もとの姿に戻っても被害は無いだろうから、タクマはルミを案内してあげたら?

久しぶりに会ったんでしょ?」


『そうだな・・・5日も会えなかったのだ。

悲しかっただろう?


こうして再び会えたのだから今日くらいは兄妹水入らずで過ごすと良い。

こちらのことは心配するな』


「そうそう。折角会えたんだからね?

私も今日はミリー達といるから心配しなくて良いよ?」


・・・・ここまで言われたら断るわけにはいかないな


「お兄ちゃん・・・」


「ん、どうした?瑠実?」


「みんな・・・いい人だね?」


「ああ。なかなかこんな奴らには会えないぞ?

そう言う点では俺はこっちに来れて本当に良かったと思ってる。


お前を置いて行ってしまったのはすまなかったがな・・・」


どこにも行かないと言ったのにそのすぐ後に消えてしまって・・・


「いいよ」


「え?」


「こうしてまた『逢えた』それだけで私は十分だよ?

それにこんな素敵なみんなに逢えたんだもん・・・本当に良かった。


ありがとう・・・リム」


「え?私?なんで?」


急に礼を言われて驚くリム。


確かに今のは急すぎだな・・・


「だって、リムがいなかったらお兄ちゃんはこっちに来なかった。

それは私がここにいるみんなと逢えないってことでもあったから・・・

だから『ありがとう』だよ?」


「・・・・・・・・・」


言われてリムは静かになってしまった。


その様子に皆が心配して近寄る。


「リム?どうしたの?」


「お姉ちゃん?」


『どうしたのだ?』


「リム?」


「ほら・・・素直に喜べ?

今更俺たち相手に遠慮はしなくていいだろ?」


この俺の言葉に皆は尚更分からなくなったようだ。


「『どういうこと(だ)?』」

「「お兄ちゃん?」」


「リムは嬉しいんだよ・・・」


「嬉しい?」


瑠実が復唱する。


「ああ。もしお前がリムの立場だったら相手からこんなことを言われると

思うか?」


「ううん・・・責められるとおもう」


「あたしも・・」


「うん」


『それが当たり前だと思うが?』


そう。それが当たり前なのだろう?


だが、血は繋がっていないとはいえ俺と瑠実は兄妹だからな。

当たり前の基準は違う・・・


「ホント・・・あなたたちって・・・」


そこでようやくリムが口を開いた。


「やっぱり兄妹なのね?常識が私たちとはずれてる所とか特に・・・」


「そうだよね~・・・タクマについてきたとはいっても

いきなり異世界に連れてこられてこんなに落ち着いていられるなんてね・・・」


「お兄ちゃんの妹だからね・・・」


『いや・・・この2人の間に血の繋がりはない』


「「「え?」」」


シロのその言葉に3人が揃って疑問の声を上げる・・・。


後で説明しようと思っていたからちょうどいいな。


『ルミがこちらに来たとき我は魔力を感じたがそれはタクマとは

別のモノだった。

血の繋がりがあるのなら魔力の質には少なからず共通点が存在するが

この2人の魔力は全く異なるモノだ・・・』


魔力だけでそこまで分かるのか?


それにしても瑠実にも魔力が合ったとは意外だな。

異世界補正と言うやつだろうか?


「ねぇ、お兄ちゃん・・・『魔力』って何?」


「そうだな。その辺も含めて街を歩きながら説明しよう。

それじゃ俺たちはその辺を歩いてくる・・・夜には戻るからな?

シロ、頼んだぞ?」


『ああ、それはいいが・・・おぬしの口から言わなくていいのか?

我が説明できるのはさっき言った所までだが・・・』


「いいさ。詳しいことは帰って来てから話す」


『そうか・・・分かった。気を付けてな?』


「ああ」


「行ってきます」






リム



「ねえ、シロ?」


『なんだ?』


「さっき言ってたこと・・・ホントなの?」


『ああ、あの2人に血の繋がりは無い。

それがどうかしたのか?』


「ううん・・・何となくね」


タクマの世界ではどうだったかは分からないけどこの世界は

結婚は自由。


年齢制限はあるけど女性は14歳。

男性は16歳で結婚できる。


お互いが認めれば。


ルミはどうなのかな?


「リム?」


「え・・・あ、何?」


「大丈夫?」


「何が?」


「なんかすごく難しい顔してたよ?考え事?」


「ルミちゃんのこと?」


ハヅキは勘が鋭いわね・・・。


「そうなの?」


『みたいだな・・・』


「うん。ちょっとね・・・ルミは拓磨をどう思ってるのかなって」


「『どう』って?」


「好きなのかなって・・・」


「当たり前だよ」


「え?」


ハヅキに言われて思わず声を出してしまった。


どういうことだろう?


「お兄ちゃんに逢ったばかりの私たちがもうこんなにお兄ちゃんを

好きになってるんだよ?

それなら私たちより長い時間を一緒に過ごしてきたルミちゃんが

お兄ちゃんのこと好きなのは当たり前じゃない・・・」


「そうだよね~。まだたったの6日しか経ってないのにもうこんなに

タクマやみんなといるのが楽しいんだもん。


ルミがタクマを好きなのは当たり前だよね?」


『そうだな・・・我もお主等と共に行動しているが、

一度も『独りに戻りたい』などという感情が出てくることは無かった。

あやつに逢っていなかったら今日も独りで空を飛んでいたのだろうな?』


「シロ、なんか詩人みたいだよ?」


「ホント・・・結構ロマンチストなの?」


『お主等・・・』


ミリーがからかい混じりにそう言ってハヅキも便乗してシロが呆れて・・・

こんな穏やかな時間をみんなと過ごすことができて・・・


「リム、ありがとう」


「え?」


またさっきみたいに急にお礼を言われて間抜けな声を出してしまった。


「リムがいなかったらあたしはハヅキと再会できなかったしこんなに

楽しい時間を過ごすこともできなかったから・・・だからタクマを

連れてきてくれてありがとう」


微笑みながらそう言われて私は目頭が熱くなったのを感じた。


私ってこんなに涙腺弱かったっけ・・・?


「私からもありがとう。お姉ちゃんがお兄ちゃんを連れてきてくれた

から、こうしてミリーと逢えた。

シロちゃんとも会えたしね?」


ハヅキにまで言われて更に涙があふれそうになる。


『確かにあやつと逢ってからの時間はまるで退屈しなモノだからな。

その時間を過ごすことができるようになったのはお主のおかげだ・・・

我も礼を言おう』


シロの言葉で完全に涙腺が決壊した。


「・・・ぅ・・・く・・っ・・・・」


「ち、ちょっとリム?どうしたの?

ハヅキ・・・」


「分からないよ・・・どうしたの、お姉ちゃん?

どこか痛いの?」


『どうした?』


急に泣き出した私をみて驚いたのか、みんなが心配の

声を掛けてくる。


「・・ぅ・・くて・・・」


声を出そうとするけどうまく出てくれない。


「え?なに?」


「うれ・・・しく・・て・・ぅ・・・」


「え、何が?」


「みんなが・・・『ありがとう』って・・・ぅ・・言ってくれて・・・

今・・まで・・・・こんなに・・・ぅく・・お礼・・・言われた・・こと

・・・無かったから・・・」


「・・・よしよし」


「ふぇ・・・?」


いきなりミリーに頭を撫でられてなんとも間抜けな声が出た。


「ミリー?」


「大丈夫・・・あたし達はどこにもいかないよ?

もしリムがどこかに行ってしまっても絶対に探し出すから。ね?」


「ミリーの言う通りだよ?お姉ちゃんはもう独りじゃないんだから。

これからもずっと一緒にいよ?」


『もしお主を連れ去ろうとする者が現れたら我が全力で排除する。

だから安心するがいい・・・』


「みんな・・・ありがとう」


「なんのなんの!仲間なんだから当たり前だよ!」


「そうそう」


『うむ』


「本当に・・・」


私といてくれて、こんなにも楽しい時間を過ごしてくれて・・・

何よりも仲間になってくれて、本当に


「ありがとう」


今できる限りの笑顔でお礼を言った。


「もう大丈夫?」


「うん・・・私は拓磨が好きだから。

ルミが拓磨をどう思っていてもそれはルミだけの感情。


それは私にはどうにもできないから・・・私は私で頑張るだけ」


「そうだね・・・でもあたしも負けないからね?」


「わたしだって負けないよ!」


「もちろん!これからもよろしくね!」


「「うん!」」

『ああ』


ありがとう・・・拓磨。


拓磨のおかげでこんなにも素敵な仲間に逢えた・・・。




本当に・・・ありがとう。



「さあ!特訓を始めましょうか!」


「「おおー!」」

『うむ!』


これからどうなるのかなんて分からないけど・・・もっと楽しくなるといいな。




 

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