特訓開始
翌朝目が覚めた俺は、食堂へと降りて先に起きていた皆と合流する。
「おはよう、拓磨。ちゃんと眠れた?」
「ああ。そう言えば起きたとき何故か床にいたんだが?俺は
昨日ちゃんとベッドで寝たと思うんだけどな?」
『ああ、それはな・・・』
「あたし達がタクマと一緒に寝たかったから、この間みたいに寝たんだよ?」
「この間というと、トレイルの街でのことか?」
「ええ、そうよ。結構疲れてたのね?動かしても全然起きなかったし・・・」
「今回はミリーがお兄ちゃんの隣で寝たよ?」
ということは今回シロの隣で寝たのはリムか
「じゃんけんはしなかったのか?」
「この間は私とハヅキが拓磨を挟んで寝たでしょ?」
「ああ、そうだが?」
「ミリー前回負けちゃったから今回はミリーだけが拓磨の隣で寝たの」
「なるほど・・・そう言えば何か柔らかいモノに触れたような感触があったな?
あれはミリーだったのか」
「っ///」
言った途端レイラの顔が真っ赤になった。
俺はレイラのどこを触ってしまったんだろうか?
気にはなるが、聞いてはもっと赤くなりそうだな・・・・それも見てみたいな。
「なあ、俺はミリーのどこを触ったんだ?」
「な、そんなの・・・///」
「ミリー顔真っ赤よ?」
「ホント。トマトみたい」
ハヅキの言う通りレイラの顔は真っ赤だ。
「まあ、からかうのはこれ位にして・・・。
ミリー、今日はこれからどうする?」
「っ///」
「どうした?ミリー?」
「拓磨、自分がミリーをなんて呼んでるか気付いてる?」
「『なんて呼んでるか』?」
「ええ、さっきから拓磨はミリーを『レイラ』じゃなくて『ミリー』って
呼んでるのよ?」
「私も気付いてたけど、見る限りじゃ多分お兄ちゃんは気付いてないよね?」
「ああ、本当か?ミリー・・・あっ、ホントだ」
「ね?」
「ああ、何故だろうな?昨日までは確かに『レイラ』と呼んでいたが」
「まあ、いいんじゃない?多分ミリーは急に名前で呼ばれて照れてるのよ」
「そうなのか?ミリー?」
「ぅえっ!う、ううん。そんなこと無いよ!唯・・・」
「唯・・・?」
「やっと名前で呼んでくれて・・・嬉しかっただけ」
「そうか。これかもよろしくな・・・ミリー」
「うん!こちらこそ!」
『良いモノだな・・・』
一連のことを見ていたシロが呟いた。
シロが言っていた『良いモノ』が何のことを言っているのかは、分からなかったが
俺もこの先ずっと皆とは『良いモノ』でいたいと思った。
あの後朝食を食べた俺たちはとりあえずは自由行動ということで一時解散したが、
俺とミリーは特訓をしようと思い共に行動いている。
ミリーが言うには『城内に大会参加者用の修練場がある』ということらしいので
そこに向かっている。
「今年はどれ位参加者がいるのかな~?」
「去年はどれ位だったんだ?」
「30人くらいだったよ。例年よりも参加者の人数がかなり少なくて、
一昨年までは最低でも3日間は掛かってたんだけど、あまりにも少なかったから
たった1日で終わっちゃった」
「3日か。どれだけの人数がいたんだろうな?」
「そうだね・・・500人はいたかもよ?」
「また大量だな」
「ねぇ・・・。今回も30人なんてことは無いと思うけど・・・」
その後も暫く他愛ない会話を交わしながら城への道を歩いた。
城に辿り着くとそこには大勢の人集りが出来ていた。
おそらく全員が参加希望者だろう。
そこに『赤騎士』と呼ばれる者がいないか少し探して見たが、見つけることは出来なかった。
「なあ、あの場に『ジーク・ハルベルト』はいるのか?」
「え?どうだろう。流石にこれだけの人数がいると分からないな・・・」
「そうか。なら向かうとしよう」
「うん」
人混みをかき分けて進むのは怠いのな。
「ミリー、少し俺に掴まってくれ?」
「え、なんで?」
「今から跳ぶ」
「は?『飛ぶ』って空を?」
「俺が言っているのは跳躍のことだぞ?」
「ん。ああ!『跳躍』ね!なんだ、ビックリした。
それじゃあ、ん!」
と言ってミリーは俺に両手を広げてきた。
「どうした?」
「だから!抱っこしてよ!」
「・・・・何故?」
「安心するの。タクマに抱っこされてると、『何があっても守ってくれる』って
感じになって・・・。だから、ね?おねがい?」
グッ!こいつ・・・。上目遣いなんてしやがって、俺を目覚めさせる気か?
「守るといっても、この短い距離だが・・・仕方ない」
ミリーの背中と膝の裏に手を廻し抱きかかえる。
「ほら、これでいいか?」
「うん!」
全く本当にロリコンになりそうで心配だ。
「跳ぶぞ。しっかり掴まっていろ?」
「うん」
ダン!
軽く跳んだつもりだが20メートル以上跳んでしまった。
まさか自分の力がここまでとは思っていなかったので、俺自身
驚いているが、下にいる参加希望者もかなり驚いているようだ。
とりあえず人垣は超えたので良しとしておこう。
「タクマ、すごいね!こんなに跳ぶなんて思った無かったよ!」
それは俺もだ・・・。
「タクマ・・・随分と派手な登場だが何か用か?」
希望者の名前を書類に書いていたブレットがこちらに気付き声を掛けてきた。
「ああ、ここに参加者用の修練場があるとミリーが言っていたのでな。
それを使わせて貰いたくて来たんだ。
今、使うことは出来るか?」
「ああ、問題は無い。城の中にいる騎士に声を掛けてくれれば
案内してくれる」
「そうか。助かった。ではな・・・」
「うむ。頑張るのだぞ?」
「ああ」
「うん!」
城に入り適当に騎士に声を掛け案内して貰った。
ミリーは入るときに降ろしたからな?
案内して貰った先にはシロが龍に戻っても十分な程の広さを持つ修練場があった。
「大した広さだな・・・。これなら思う存分戦える」
「でしょ?本番もここでやるんだよ」
「そうなのか?」
「うん。『場所を分けると面白い戦いが見れななくなる』って
初代の王が、そうしたんだって」
「余程の戦闘狂だったんだな、王は・・・」
「だね」
「よし、では早速始めるとしよう?ミリー、準備は良いか?」
「うん。いつでもオッケー」
俺たちは互いに距離を置いて戦闘の準備をした。
「行くぞ!」
「行くよ!」
ミリーがどれ程の力を持っているのか楽しみだ・・・。