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龍神

「リムはその内目を覚ますだろう。それで『龍神の洞窟』までは

後どれ位かかる?」


「タクマの速さなら1時間も掛からないよ?」


「俺そんなに速いのか?自分ではいまいち分からないんだが?」


「速いってレベルじゃないよ。あれは。あたし達結構飛ばして此所まで来たけど、

そんなに長く走れないもん。シロは多分大丈夫だけど・・・」


『うむ。我はまだまだ速く走れるぞ?だが、そうなるといくら結界があっても、

ハヅキに負担が掛かってしまうからな。これ以上は無理だ』


「それならハヅキとリムはあたしが連れて行くから、タクマとシロは先に行ってていいよ?

二人くらいなら大丈夫だし?」


その提案はいいかも知れないが、レイラに負担が掛かり過ぎてしまう。

それに、人二人を抱えての走行となれば、万が一魔物に襲われたとき応戦できないだろう。


「いや、それではレイラが危険だ。シロ、お前はこのままハヅキを乗せてレイラ達と来てくれ。

それなら魔物が現れても危険は無い」


『確かにそうだな。では、一度ハヅキの結界を解いてくれ。龍に戻りたいのでな』


「ああ」


結界に手をかざし解けるよう念じると、結界はすぐに消えた。


・・・リムの目が覚めたら今度こそ聞いた方がいいだろうが、面倒だな。

このままでいいか。


『ミリー。お主も我の背中に乗ってくれ。落ちないようにしっかり掴まっているのだぞ?』


「うん、分かった。ちょっと待ってね・・・。

よいしょ。

ほっ。ん、いいよ。シロ」


『よし、ではしっかり掴まっていろ』


シロの体がこれまでと同じように光を放ち、その光が収まると昨日の龍がそこにはいた。


レイラはその背中で『わ~!おっきい!』とはしゃいでいる。昨日は腰を抜かすほど

驚いていたのにな・・・。


『シロちゃんはシロちゃんだもん』


ハヅキの言葉が脳裏を掠める。正にその通りだ。


「シロ!誰にも見つからないようにできるだけ高く飛んでくれ!

レイラ達には結界を張っているから慣れれば問題は無い!」


『了解した。では、また後でな』


「ああ。頼んだぞ?」


『任せておけ』


「よし。あ、そうだ。『龍神の洞窟』は何か目印のような物があるのか?」


『いや、目印は無いが、見ればすぐに分かる。名の通り龍の様な形をしているからな』


「そうか、分かった。では行くとするか・・・」


本気で走ってどれだけ保つかも知っておいた方がいいだろうな。


ドガッ!


また先程と同じ音がしたがもう気にしないことにしよう。






ミリー



「タクマ速いね~。もう全然見えないよ?あんな速さで保つのかな?」


『あの者なら何も問題は無かろう。我等もゆくぞ?』


「あ、そうだね。いつでもいいよ?」


『うむ。しっかり掴まっておれよ?』


そう言った後、シロは翼を羽ばたかせ空へと舞い上がった。


すごいな~。まさか龍に乗って空を飛ぶ日が来るなんて思わなかったよ。

これも全部タクマのお陰だね。


それにしてもタクマって本当何者なんだろう?


昨日来たばかりなのに全然取り乱したりしないし、会ったばかりのあたしの為にグランド・オーガと戦ってくれたり。

ハヅキを助けてくれたり。そのことが何よりも嬉しかったなあ。


そう言えば結局何でハヅキが何で生きているのかは分からないままだったな。


シロに聞いたら分かるかな?


「ねぇ、シロ。聞きたいことがあるんだけどいい?」


『む、なんだ?』


「あのね、ハヅキのことなんだけど。ハヅキはね昔あたしを庇って死んでしまったの」


『なに?それはどういうことだ?』


「うん、それを聞きたいんだけど。順を追って話すからまずは聞いて?」


『うむ、了解した』


「ありがとう。それでねハヅキが死んだ後のことはよく分からないけど、

昨日タクマがグランド・オーガと戦ったっていうのは言ったよね?」


『ああ、聞いたが・・・それと何か関係があるのか?』


「うん。タクマが言うにはハヅキはグランド・オーガの『器』にされてたらしいの。それでグランド・オーガの本体もハヅキの姿形が定着しちゃってたらしいんだけど?

その事しか今は分かってないの。この情報だけで何か分かる?」


『ああ、理解した。おそらくハヅキは『生まれたと同時に器にされた』のだろう。

そして宿主の死と同時に力が目覚めその後は『ハヅキ・カーアイル』としてでは無く

『グランド・オーガ』として生きてきた。


だが、先日『タクマ』という一人の人間の手により、力の一部を残したまま、

器から引き離されたことが原因で本来は死んだ筈のハヅキ力が残った為、命が繋がれ今

こうして生きているのだろう』


「そっか。村を滅ぼしたのはグランド・オーガだけど、ハヅキを救ってくれたのも

グランド・オーガだったんだね?」


『そう言うことだな。だが、それも『タクマ』という一人の人間がいたからこそ

できたことだ』


「そうだね。タクマと出会えて本当によかったよ・・・」


ありがとう、タクマ。


戦ってくれただけでも感謝しきれないのに、ハヅキまで救ってくれて。


「ハヅキもありがとう。生きててくれて」


『よかったな?』


「うん・・・ホント・・ぅ・・に・・・よか・ぐす・っ・・た」


『泣いているのか?遠慮はいらないぞ。泣きたいときは泣くのが一番なのだから』


「うん・・・ぐす・・・あり・・・が・・と。シロぉ」


本当にありがとう。友達にまた逢えて仲間もこんなにできて・・・。


「ん・・・?あれ、ここは?・・・えっ!空!何で空!?って、この龍は昨日の・・・

あっ。ってことはシロか。な~んだ、慌てて損した」

「ん~。よく寝たぁ~。うわ~空飛んでる~。すご~い!」


リムとハヅキが起きちゃった。何もこんなタイミングで起きなくてもいいのに。


「ち、ちょっと!どうしたのミリー?なんで泣いてるの?

何かあった?シロ!何かした!それと拓磨はどこに行ったの?」


『なっ!誤解だ!我は何もしておらぬしタクマ先に洞窟に向かった!』


「ミリー大丈夫?」


「うん・・・だいじょうぶだよ。ごめんね。心配させちゃって」


「ううん。何も無いならよかった。

・・・ねぇ、この龍がシロちゃんの本当の姿?真っ黒だね?」


そっか、ハヅキは昨日寝てたから見るのは初めてだもんね?


「そうだよ。真っ黒なのは、黒龍だからね。当たり前じゃない?」


「そっか」


「そうそう」


あたし達が勝手に納得して談笑を始めてもシロはリムに質問攻めにされてた。


ごめんねシロ。でも、本当にありがとう。





拓磨




走り出すこと20分。シロの言っていた通り龍の形をした洞窟が見えてきた。

待つのも面倒なのでそのまま洞窟へと突入する。


「洞窟と言う割に暗くは無いんだな?これも『龍神』とやらの影響か?」


とりあえず奥に進むとするか。魔物に遭遇しても何とか逃げ切れるだろう。



奥を目指すこと数分。なにやら広けた場所に出た。


「もう終わりか?たったの数分しか歩いていないが?」


『お主何者だ?』


「いきなり話しかけるなよ?ビックリするだろ?

まあ、いいか。俺はタクマ・ミョウホウだ。そっちは?」


『この洞窟の主である、龍神だ。お主何の目的があって此所まで来たのだ?

ただの人間では此所に辿り着くまでに龍達によって、やられている筈だが?』


「いや、龍には一度も遭遇しなかったぞ?」


『なに!そんな筈は無かろう!この場で一度も龍に遭遇しないなど、これまで

無かったことだ!』


そんなことを言われても無いものは無いのだから仕方がない。


「それは、今はどうでもいいだろう?いい加減姿を見せてくれないか?

こんな所を誰かに見られたら唯の危ない奴だ」


『それもそうだな。そのまま真っ直ぐ進むがいい。数キロ行けば我の元に辿り着く。

だが、道中には龍が出るからな。それだけは忘れるな』


「忠告をありがとう。受け取っておくさ」


言われた通り真っ直ぐ進むと壁を突き抜け、その先に途哲もない広さの道があった。


これも龍神の力だろうか?大したモノだ。


『グウウウウウウウ』

『ゴアアアアアアア!』


「おっと、ここからは龍が出るんだったな?昨日は結局戦っていないから、

俺の力が通じるかどうか分からないが、戦るだけ戦ってみよう」


シロ程では無いが、結構な大きさの龍三体がいた。その中で赤い龍だけは他の2体とは違い

2本足で立っている。


その龍を筆頭に三体が一斉にブレスを吐いてきた。


色は、白、赤、緑の炎であることから、それぞれの属性が

『光』『火』『地』であろうと予測する。


しても意味は無いが・・・。


そのブレスを避けて次の攻撃が来る前に白い龍の懐に入り込み、下から腹を渾身の

力でぶん殴る。


ドゴッ!


『ゴアアッ!』


白い龍の体は浮いたばかりか、天井に叩きつけられ落ちてきたがどうやら気絶だけで済んだようだ。

今の俺の力で龍を殺す程は無いと分かっていても、『万が一』と言うこともあるからな。


「残り2体」


『グアアアアア!』


仲間がやられて怒ったのだろう?

緑色の龍がこちらへと飛んでくる。

確かに上に行かれると俺ではどうしようも無いが・・・。


ゴオッ!


また、避けられると思ったのか、今度は先程よりもスピードのある球形の炎を

吐いてきた。


これなら避ける必要はない。


「はっ!」


ズガン!


俺はその炎を緑の龍へと蹴り返した。


『グオッ!』

ドガアアアアアア!


自分の攻撃を喰らった緑の龍はそのまま落ちて気絶した。


「意外とやれるもんだな。さて、あと一体」


(お主は一体?)


「ん、ああ。(タクマ・ミョウホウだ)」


(なぜ『念話』が使える!)


(使える奴が仲間にいてな、おそらくそいつの影響だ)


(そうか。大したモノだな。その『そいつ』とやらと行動してどれだけ経つ?)


(まだ今日が二日目だが?)


(なんだと!あり得ん!)


(『あり得ん』と言われても『あり得る』から俺はこうして念話を使っているんだが?)


(確かにそうだが・・・)


(もういいだろう?来ないならこちらから行くぞ?)


そう言って俺は走り出し、一気に赤龍との距離を詰める。


(なんだ、その速さは!)


(お前、さっきから驚き過ぎだ。隙だらけだぞ?)


(むっ!)


足払いを掛けようとするが、もう少しの所で躱された。

流石2本足・・・は関係ないか。


赤龍はそのまま飛び上がり、急降下してきた。

ブレスでの攻撃は止めたようだ。


1度目は躱し2度目は蹴り飛ばしたからな。後は直接攻撃しか残っていないと思ったのだろう?

連続で撃つなりすればまだ捌けはしないモノを・・・。

動揺しすぎて思考能力が低下しているのか、それを考える頭が無いのか?


(馬鹿か?)


(馬鹿ではない!)


ズガアアアアァァァ


赤龍の爪が俺のいた場所を削り飛ばすが、俺はそれを跳躍で躱し赤龍の真上へと

移動する。


(いや、馬鹿だろう?)


そのまま落下の力を上乗せした踵落としを背中に叩き込む。


ドガッ!


「グアア!」


赤龍はそのまま気絶した。一応確認の為に首筋に手を当てると、脈ははっきりしていたので、

大丈夫な様だ。


「さて、進むか・・・」


その後も何度か龍と遭遇したがさほど苦労はせずに倒すことが出来た。


全て気絶させただけなので、そのうち目を覚ますだろう。



奥に向かう途中、赤と青の光を放つ鉱石を発見したのでなんだろうと思い、軽く

触れてみると、なにか大きな力を感じ折角なので貰うことにした。





それから、数分後


「ここか?とりあえず入るか・・・」


入ると白銀の龍がこちらを見て驚いていた。


『お主本当に此所まで来たのか!?

それも無傷とは!龍とは遭遇しなかったのか?』


「いや、したぞ。だが、全員倒した。心配するな、気絶させただけだ」


『お主はどれだけの力を有しているのだ?』


「さあな。俺自身よく分からない。それよりもお前が龍神か?」


『ああ、そうだ』


「そうか。それは分かったが・・・」


『どうした?』


「もう少し小さくなれないか?さっきから見上げている所為で首が痛いんだが?」


『むう、確かにそうだな。ではお主に合わせ我のもう一つの姿である人間になるとしよう』


ほう、龍は人間にも姿を変えることが出来るのか。便利だな。

俺がそんなことを思っている間に龍神の姿が人間に変わった。


身長は俺と同じ位で髪は龍の時の名残か白銀のままで後ろで縛っている。

目は青いが、見るだけでなにか威圧感の様なモノを感じる。


体にはどこかの国の紋章だろうか?それが胸の所に大きく描かれている鎧を

全身に装備していた。


この姿でも名は『龍神』なのだろうか?


「なあ、その姿でも名は『龍神』なのか?」


「いや、この姿の時は『ライズ・ブレット・ホロギウス』と名乗っている」


「ああ。ではお前が王国騎士団団長か・・・」


俺が一人で納得していたら


「拓磨~」

「タクマ~」

「お兄ちゃ~ん」


リム達の声が聞こえたので振り向くと・・・


ドゴオオオと壁をぶち抜きリム達三人を乗せたシロが、俺とブレットのいる空間に

現れた。


「お前らもう少し静かにこれなかったのか?それとシロ!

結界を張っているとはいえ、危険なことはするな」


『すまぬ。この者達がどうしても言うので、仕方なくな』


まあ、確かに此奴らに一度に頼まれたらどうしようもないな・・・。


「帰るときは歩いて行くからな。シロも狼になっておけ」


『了解した』


カッ!


『ふう、我は少し疲れた。帰るときに起こしてくれ』


「それなら運んでやるからもっと小型になっておけ?」


『すまぬな』


その後シロは頭に乗るくらいの大きさになり眠った。


「お前らもこれからはあまり無理をさせるなよ?」


「「「は~い」」」


三人が揃って返事をしたのでブレットの方へと向き直るが、別に此所に来たのは

訓練の為だったので、もう用は済んだのだから此所にいる理由は無い。


なので・・・


「よし、帰るか」


「なっ!待て、お主何か用があったのでは無いのか?」


「いや、もう用は済んだ。邪魔したな?

それではリム『テレポート』を頼む」


「任せて。『テレポート』」


シュン


「何だったのだ?しかし、あのタクマとやら無傷で此所まで辿り着くとはな・・・。

一度手合わせしてみたいモノだ」

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