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驟雨の間
遺跡から、影が這い出る。
空からは、ざあ、と雨が降っていた。
乾いた砂を叩き、濁った水音へと変わっていく。
影の下から流れ出た赤色は、足元を染める。
やがて雨に薄められながら、ゆっくりと遺跡へと戻っていった。
まるで――
元の場所へ帰るように。
「……終わった」
呟きは、すぐに雨音に掻き消された。
ドシャァ、と一段強い雨が降る。
砂漠を知る者なら決して踏み込まない、ぬかるんだ地面。
それでも影は、よろめきながら歩き出す。
足を取られ、何度か体勢を崩しながら。
それでも、止まらない。
どれほど歩いたのか、分からない。
ふと立ち止まり、振り返る。
そこには、依然として大きく口を開けた遺跡があった。
闇を抱えた深淵が、何事もなかったかのように、獲物を待っている。
影は、しばらくそれを見つめ――
そして、前を向く。
雨は降り続いている。
疲れ切った体を投げ出したい。
そんな衝動に駆られながら、ふと幼き頃の記憶が蘇る。
誰もが聞かされたあの御伽話。
もう一つの伝説は、あの過去を閉じ込めていた深淵に、囚われたままなのだろうか。
歩き続ける影は、まだそれを知らない。
雨雲は垂れ込み、空を覆い、重なっていた。
次回は年内を予定しています。




