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第一話「この茶室、修羅場につき」

四月。桜舞い散る高校のグラウンドに、地響きが鳴り響いた。


 ドン、ドン、ドンッ!


「イチ!ニ!サン!シッ!」


 それは茶室から聞こえてくるとは到底思えない、威勢のいい掛け声だった。いや、正確には茶室“の裏庭”である。部室棟の隅にぽつんとある古びた平屋、その背後で、上半身裸の男が四股を踏んでいた。


「五十回目ィィ!気合いが足りんぞ新入生ッ!」


「ヒィィ……これ、本当に茶道部ですかァァ!?」


 俺は叫んだ。というか、泣いた。入学早々「茶道って渋いし、静かそうでいいかも」なんて軽い気持ちで見学に来ただけなのに。


「茶道は“静”なり。“静”とはすなわち、全てを制する“気”の流れッ! そのためにはまず肉体から作るのだ!」


「理論が迷子!!」


 目の前の男──鬼堂剛きどうつよしと名乗った茶道部の主将は、ガッチガチの筋肉をさらしながら腕を組み、まるで武闘派ヤンキーのように俺を見下ろしていた。いや、そもそもどうして正座の前に腹筋があるのか。どうしてお点前に入る前に滝行の写真を見せられたのか。


「お前、名前は?」


「し、白川……白川蓮です……」


「よし、蓮! お前の目には“茶”が足りねえッ! まずは心を整える! 呼吸ッ! ハァァァァァ……スゥゥゥゥ……!」


 謎の気功法を始める鬼堂先輩。すぐ横では、袴姿の先輩女子がきれいに座りながら、真顔でハンマーで炭を割っていた。


「えっ、それ道具壊しません!?」


「安心して。これ、“割炭式エア茶席”だから」


「言葉の意味が一個もわかんない!!」


 俺の新生活は、こうして幕を開けた。

 そう──静寂とは程遠い、“熱血茶道”の世界で。

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