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強欲魔女エレアノーラ~値踏み上手の銀箱女  作者: 彩栗ナオ
経済短編~ジルコール市異聞録
15/37

12~強欲魔女と魔女嫌いの爺さん

 

 ジルコールの街に住むゴンゾ爺さんは、筋金入りの魔女嫌いだった。


 先日、街に恵みの雨を降らせたと評判になった魔女――エレアノーラ=リッチポンドを見かけた時も、眉をひそめて遠巻きににらんでいた。


「まったく、魔女なんぞが……ろくなもんじゃねぇ」


 別に直接何かされたわけではない。

 ただ、彼の人生が魔術師によって狂わされた――そう信じている。


 若かりし頃、ゴンゾの父は詐欺紛いの魔術師に騙され、土地の権利書を巻き上げられた。そのせいで家庭は崩壊。両親は離婚し、妹は母に引き取られ、ゴンゾは酒に溺れた父に育てられた。


 殴られ、虐げられながら育った少年は、やがて16歳で家を飛び出し、自分の力だけで生きる道を選んだ。


 ──そして今日。

 ジルコールの街で財布を落としたゴンゾは、自警団に届け出をしようと詰所に足を運ぶ。そこで彼を待っていたのは――たまたま財布を拾って詰所に届けに来たは、銀箱女の異名をもつノーラだった。


 普段の振る舞いからすると、財布を丸ごと盗んでそうなノーラだが、お金にはフェアだと自称しておりお金の扱いには意外なことにフェアな性格であった。


 詰所の衛兵と中身を確認していたところであり、身分確認として財布の金額を問われるゴンゾ。財布の金額が、確認した額と一致したので晴れてゴンゾの元に財布は戻り安堵の息をつく。



「良かったね財布戻って」と声をかけるノーラに対し――




「……魔女か。余計なことを……!」


「は?」とノーラは目を細めた。


「畑を焼き家畜を殺し、伝染病をまき散らしたうえに人様の財産を盗む。それがお前達、魔女と魔術師の嘆きの暦の時代に行ったことじゃろ」



 ゴンゾはノーラにさらに日頃から、魔女や魔術師に対して募らせていた不満をぶちまける。自警団の者がまあまあとゴンゾをなだめる。



 まるで恩を仇で返すようなゴンゾの態度。その場をたまたま通りかかり、話が耳に入ったのはフレアリス。あからさまに表情を曇らせ、詰所の中へと静かな怒りをたぎらせ入って行く。


「あなた今、なんて言いましたの……?」


 ゴンゾに鋭い目線を向けるフレアリス。その身に纏う高貴なオーラと、怒りに震える声が周囲の空気を張り詰めさせた。


「魔女がどうのこうのって、まさか貴方、嘆きの暦の時代を正しいとでも?」


「な、なんだお嬢ちゃんは……」


「私はフレアリス=ヴァン=ルクレール。魔女であることと、貴族であることに誇りを持って生きておりますの。時代錯誤の偏見で人を貶めるなんて――まさに無知の象徴ですわ!」


「ちょ、ちょっと落ち着いて……!」

 ノーラが慌てて、フレアリスをなだめに入る。


 フレアリスはフンと鼻を鳴らし、「話す価値もありませんわね」と捨て台詞を残してその場を後にした。


 ──翌日。


 街の外れで一人、ゴンゾはフレアリスに怒られたことを思い出しながら、むしゃくしゃした気分で道端の石を蹴飛ばしていた。


「ちくしょう……貴族だかなんだか知らんが……」


 その時だった。石が飛んでいった先には、ぽつんと横たわる魔物――メメロンがいた。丸々とした羊のような体に柔らかな毛並み。メロンを思わせる柄模様で体長は1メートルほど。


 普段は温厚で、こちらから何もしない限り襲ってくることもなく、街の子どもにも人気の魔物だ。

 だが、乱暴をしたり攻撃したりすると話は別。

 怒ると目が白目になり。青筋を立て突進による体当たりをしてくる。


「ブモォ……!」


 石が当たり、案の定怒ったメメロンはゴンゾに向かって突進してきた!


「ひぃいいい!?」


 ゴンゾは必死に逃げるも、足はもつれ、追いつかれるのは時間の問題――


「《少水》!」


 魔術の水が地面に散らばり、メメロンの足元を濡らす。その冷たさに驚いたのか、メメロンは踵を返し、森の中へ去っていった。


 振り返った先に立っていたのは――ノーラだった。


「……助かったのか、わし」


「ええ、まあ。まったく、文句ばっかり言ってるからこうなるのよ。そういえば財布届けた拾得料で一割もらってなかったわね。きっちり頂こうからしら」


「な、なにぃ! やっぱり魔女はロクでもない奴じゃ……!」


 そう言いながらも、ゴンゾはポケットから銀貨を一枚取り出し、ノーラに投げ渡した。


「……まあ、助けてもらったことは感謝しといてやる。少しだけ、な」


 ノーラは、ふっと笑いながら銀貨を受け取った。


「はいはい。ご贔屓にね、じいさん」


 こうして、魔女嫌いの頑固爺さんゴンゾは、少しだけ強欲魔女に心を許したのだった

閲覧いただきありがとうございます。

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