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第1章:異世界への扉

皆さんはじめまして。読んでもらえるのかわからないですがよろしくお願いします。



構成、設定変えました。

第1話「転生者の魔法書」


 その日、折場旬おりば・しゅんは特に何の予定もなかった。

 平日、有給消化の木曜日。目覚ましをかけずに起き、コンビニの弁当をつまみ、コーヒーを飲んで、ふと思った。


「――久しぶりに、図書館でも行くか」


 特に本が好きというわけでもない。けれどスマホを眺めていても頭に何も入ってこない。目の前の現実に意味を見いだせなかったから、なんとなく“違う世界”が読みたくなったのかもしれない。


 最寄りの市立図書館は平日の昼ということもあって閑散としていた。

 冷房の効いた静かな空間。ほこりの匂いと紙の手触り。それだけで少し満たされた気分になる。


 文芸書の棚を適当に見て回る。ファンタジー、SF、ミステリー……。

 気づけば、ふと目を奪われた。


 それは、一番下の段に無造作に置かれていた。表紙にタイトルだけが印刷されている、古びた装丁の一冊。


『転生者の魔法書』


「……ラノベじゃない、よな。これ」


 背表紙に作者の名前も出版社のロゴもない。見覚えのない装丁。

 興味半分で手に取って、隅の閲覧席に腰を下ろす。


 1ページ目に、こう書かれていた。


“この書を開いた者よ。君は、選ばれし読者である。”


 続くページには、異世界のような風景描写が綴られていた。

 王都、魔導士、剣士、グリモア……。どこかで読んだような、でも少し違うような世界。


 けれど、どこか生々しい。

 まるで現実のような空気と、人物たちの心情がひしひしと伝わってくる。


(…妙にリアルだな)


 目を離せなくなった。ページをめくる手が止まらない。

 気がつけば周囲の物音が遠のき、指先の感覚がぼやけていく。


 次の瞬間――


 視界が、闇に沈んだ。


 ***


「……おい。おい、しっかりしろ!」


 誰かの声が聞こえた。

 息を吸う。肺に入ってくるのは、湿った草と土の匂い。


 目を開けると、そこには見知らぬ空があった。白い雲。高い木々。太陽の光がやけに強い。


「……は?」


 思わず漏れた声に、自分でも違和感を覚える。

 声が……若い。まるで10代の少年のように。


 目の前に、男が立っていた。粗末な布の鎧をまとい、腰には剣。

 その男が、ホッと安堵の表情を浮かべる。


「オリバー……お前、目が覚めたのか! 本当に良かった……」


「オリ……バー?」


 自分の名前を呼ばれた――けれど、それは“俺”じゃない。


 戸惑いながら、地面に手をついた。軽い。体も細い。

 視線を落とすと、着ているのは見慣れない服。腕も細く、手には小さな本が握られている。


 ……あの図書館で読んでいた本だ。


 表紙には、確かにあの文字が刻まれていた。


『転生者の魔法書』


「おい……しっかりしろって、オリバー。お前、あの時、剣をかばって……」


 男が続ける。どうやら“この身体”は直前まで死にかけていたらしい。


(まさか……これは……)


 異世界。

 本。

 転生――。


「……そうか。俺は、オリバーって名前なんだな」


 そう言うと、目の前の男が一瞬だけ怪訝な顔をした。でも、すぐに笑ってうなずいた。


「お、おう。記憶が混乱してるのか? まあ、でも……無事でよかったよ!」


 違う。

 俺は“折場旬”だ。

 だけど、この体には――もう一人の記憶が、うっすらと残っている。

 「オリバー」という名の、別の少年の人生が。


(オリバー、お前……死にかけてたんだな。俺が、お前の体を借りて生きてるってことか)


 手の中の魔法書を見つめる。

 開くと、そこにはさっきはなかった文章が一行だけ、浮かぶように書かれていた。


“火の粉は、空から降る。愚者はそれを見上げ、賢者は盾を取る。”


「……どういう意味だよ、これ」


 未来? 予言? ただの物語の一節?

 分からない。けれど、何かが始まろうとしている気がした。


 この本は――ただの物語じゃない。

 そして俺は、もう戻れない場所に足を踏み入れてしまった。


 異世界。

 魔法。

 そして、転生者としての運命に。


(オリバー……お前の人生、少し借りるぜ)


 折場旬――いや、“オリバー”は静かに立ち上がった。



つづく


感想とかあればよろしくお願いします。

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