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【外伝】 異世界に行ったので手に職を持って生き延びます  作者: 白露 鶺鴒
第三章 グラノス(本編4章)

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3-10.帰還


 帝国側の国境山脈手前にて、一泊。

 帝国から連れてきた4人のテントも寝袋もないが、とりあえず狩った魔物の毛皮を布団替わりにしてもらったが、ずっとダンジョン前で野宿していたため文句はでなかった。


 野宿の前にお湯を作ってやり、布で体を拭いたりはしたが……こいつらもよくこんな生活をしていたなと思う。

 だが、こちらから話を振って聞き出そうにも、大人二人は不満を隠しもしないので面倒になってやめた。子ども二人の質問にだけ答えつつ、適当に切り上げた。


「明日も移動だから、さっさと寝ろ」


 それだけ言って、おっさんと交代で見張りをして夜を過ごした。警戒はしていたが、4人ともぐっすりと寝ていたので、なにか起きることはなかった。


 

 翌日の昼過ぎにはマーレにたどり着いた。

 冒険者ギルドにてマリィさんから聞いた情報は、まさかの入れ違いでクレイン達がキュアノエイデスに出掛けていた。


 大人しくしている訳がないのは知っていたが、早すぎるだろう。

 


「おっさん。悪いんだが、この4人預けてもいいか?」

「奴隷契約だけしておいてくれ。他は面倒を見ておく」

「すまん。お師匠さんも向かったみたいだから、そっちは任せてくれ」

「おう」


 急いで商業ギルドにて4人の奴隷契約を成立させて、宿に連れて行く。


「俺はしばらく出掛ける。1週間は戻らないだろうから、自由に過ごしてくれて構わない。この宿には10日分の宿代は払っておく。あと、各自の路銀は渡しておく。わからないことはおっさんに任せてある」

「あのっ……」

「この町は冒険者の町だ。君達なりに今後どうしたいのかも、考えるんだな。悪いが、ずっと面倒を見るつもりもない。せいぜい1か月くらいだ」

「あ、あんたの奴隷だろう。責任をもつべきじゃないのか」

「ああ。君達に仕事を与えて働かせてもいいが、お互いに信用できないだろ? ……売買するにしても、多少の希望を聞けるようにする。君達が何をしたいか、この期間で考えるんだな」


 言うだけ言って、宿を出る。

 子供二人だけならこちらが引き取りも考えるが、大人二人が不満なのは見て取れる。悪影響しか与えていない。


 面倒だが、しばらくは手元に置いて周囲の反応を確認しつつ、さっさと扱いを決めないとだな。

 

「よう。兄貴の方じゃねぇか……おまえ、随分、薄情な兄貴だったんだな」


 部屋を出ると、絡んできたのはジュードだった。俺の顔を見るなり嫌味を言ってきたが、それだけクレインを心配してくれていたんだろう。


「こっちも事情があってな。その部屋に奴隷4人が泊まることになっている。問題を起こすようなら叩き潰してくれ」

「おいおい、どこで増やしたんだ?」

「帝国の陰影の誘いダンジョンの入口で拾った」

「……行ってきたのか?」

「ああ。逃げた連中もいるけどな……俺はクレイン達を追いかけてキュアノエイデスに行ってくる。〈安らぎの花蜜〉を届けないとだしな」


 俺の言葉に少し驚いたようにこちらを見てくる。

 「おっさんのおかげ」だと笑って誤魔化そうとしたが、「お前の実力なら当然だ」と返ってきた。どうやらクレインだけでなく俺のことも認めてくれていたようだ。


「わりぃ。妹が倒れたのにお前がいないから、つい悪態をついた。やるべきことやってたんだな」

「ははっ……お師匠さんのためだからな。妹も心配だが、仲間が診てくれる。とはいえ、貴族相手だとやらかしそうだから追いかける」

「おチビ……いや、クレインも一人前だと思うが、まあ、兄貴がいた方が安心だろ。戻ったら顔出せよ。酒飲もうぜ」

「酒ねぇ……まあ、さし飲みならいいぜ? またな」


 ジュードと軽く話をして、宿を出る。酒については、状態異常を防ぐポーションでも作ってもらうか。他の連中に醜態をさらしたくはないので、飲むなら二人きりにしてもらおう。



 一度、家に戻る道中、知っている気配を感じて裏道へと潜る。


「んふっ、お久しぶりですね」

「ああ、こっちに来ていたのか、ネビア」


 すぐに俺の目の前に現れたのは、情報屋のネビアだった。


「ええ。ご活躍だったようですね」

「何のことだ?」

「お二人で町を一つ、スタンピードから救ったそうですね」

「帝国でのことなのに君に情報が届いてるのか?」

「んふっ、王国でもあの町にいる御仁の動向を探りたい貴族が多いんですよ。まあ、あなただとわかっているのは、僕とか一部の者ですかね」


 情報を取り扱うだけに、隠しても無駄だろう。ダンジョン内での行動はバレていないようなので、その前の前哨戦についてまで隠すように言うことも無い。


「ああ、なるほど。それなりの金になりそうな情報だもんな。民を捨てて逃げた後、厚顔無恥にも町に戻るなんてな」

「んふふっ、その通りですね。その情報、いただいても?」

「ついでに、食料が町人には行き届かず、やせ細っていたとでも付け加えてくれ。多少の食料を融通しておいたがな」

「ええ、お任せください。……では、ご報告を」


 いくつか話を聞いたが、離れていた間ではたいした動きはないということだった。ただ、面倒事になるのが2点。


 クレインが聖魔法を使うという情報が高額で闇ギルドにて取引されている。これは、クレインが襲われたという情報と共に広がったそうだ。


 貴族はメディシーアの動向を探っており、高値で情報がやり取りされた。俺らが異邦人であることもだが、聖魔法の希少性はさらに目を付けられることになる。


 次に、クレインが生み出した新素材がそのまま代用可能だったこと。

 予想よりも早い。出来るだろうとは思っていたが、すでに出来ていたこともだが、その話すら広がりつつあるのは厄介だ。

 

「ネビア、情報規制は可能か?」

「皆が欲す素材ですから、すぐに探られるでしょう。彼女が作り出したことは隠せません。ですが、今後、彼女の情報はかなり制限されますよ」

「ん?」


 闇ギルドでも水竜の肝をどうするのか、その動向は裏社会でこそ重要で、警戒されていた。

 何せ、扱いやすく、解毒しにくい毒となる。毎回、それなりに裏側で流通する素材なだけに、メディシーアがどう扱うか、注目をしていた。


 それを全て、薬の素材にすると宣言したメディシーア。しかも、世間よりも先に裏で流通するように手配をした。


 クレインは多分、何も考えずにネビアに渡しただけだろう。


 ネビアも、裏の人間も困っていた素材を先に融通してくれたことには恩義があり、毒をばら撒かないという一貫性も評価したらしい。


 ネビアの方で動いた結果、今後、クレインの動向について漏らす場合、新素材の価値以上の対価を払わない限り渡すことはないらしい。

 ただし、貴族に雇われている私兵の情報屋は別。だが、それでもかなり制限が入るという。


「素材の価値ね……大金を積めば流れるんだろう?」

「んっふふっ……そんなわけないでしょう。素材が無くて困っていたところを助けた救世主ですよ? 現在の価値で取引されますよ、まあ10倍から20倍。天井知らずとも言われていますから、金だけ巻き上げて大した情報は流れませんよ」

「まあ、先に厄介な情報が流れた後だけどな」

「仕方ないでしょうね。聖魔法を使わなければ死んでいたでしょう。異邦人であり、聖魔法の使える存在という認識は覆らないですね。そもそも、襲った連中は貴族のひも付きが多いので、そちらからも流れますよ」


 クレインを襲ったのは国王派の仕業という話がすでに広がっているらしい。

 流したのはネビア。襲った連中の多くが、国王派の貴族のひも付き冒険者であるため否定もし辛いという。


「王国内は多少の情報で崩れるかい?」

「難しいでしょうね……ですが、僕としてはあなた方にはもっと活躍していただき、追い込んでいただきたいところですね」

「国王を?」

「王太子も忘れずにお願いしますね」


 国家転覆を狙うのはリスキー過ぎて、クレインは嫌がるだろう。

 平穏に暮らすことを夢見るクレインには聞かせられん。


「王弟殿下が上に立ってくれれば、クレインの出自をとやかく言う貴族は減るだろうな……今の王は、俺にとっても敵だからな」

「んふふっ」


 ネビアは嬉しそうに口角を上げている。

 革命を起こすほどではないようだが、不満を持っていることは間違いない。


「糾弾するネタを用意してくれ。そのうち王都でぶちまけてくる」

「おや、正面からでは分が悪いですよ?」

「俺への爵位を渡さない方針らしいからな。お師匠さんに何かあれば、王都へ挨拶に行く。ついでに不満をぶちまけても、誰も爵位を継げなかった負け犬の相手などしないさ……まあ、それがどう波及するかはわからんがな」

「命を狙われますよ?」

「わかっている。だが、そんなことをしなくても俺は邪魔で、命を狙ってくるはずだ。それなら、いい機会だからな、言いたいことを言わせてもらおう」

「任せてください。とっておきを用意しておきます、んふふっ」


 国王派を糾弾して力をそぎ落とす。

 混乱が大きくなればクレインに手を出す余裕もなくなるだろう。


 それに……俺の命を本当に狙えば、最後……お望みのクレインは絶対に国王派には靡かない。それくらいには俺が大事なはずだ。


「随分と厭らしい顔で笑いますね?」

「ははっ……窮鼠猫を噛む、こっちが思い通りに動くだけの哀れな小動物じゃない。ちゃんと思い知らせないと安全確保は難しいからな」

「んふっ……資料は用意しますよ。お手並み拝見と行きましょう」

「ああ、ついでに……仕事を追加だ。王弟派に潜り込んでるネズミ、あぶり出せるか?」

「……難しいことを平然といいますね。まあ、調べておきますよ。それでは……」


 クレイン達は、今朝、出立したとなると……追いつけるかはぎりぎりだな。

 家に帰って、風呂だけ入ってから、出発するか。


 

「まったく……元気になるとじっとしていられない子だな」


 ネビアが「こちらを」と言って、〈錬金蜂蜜〉の入った小瓶を置いていった。

 俺では、この素材が〈安らぎの花蜜〉と同じように使えるのかはわからない。


 本人の意識がしっかりとしてからは、数日で形にしてしまったという。

 今回の功績で、クレインの身は保障されただろう。


 あとは……カイアにでも頼んで、俺の新しい身分を用意してもらっておくかな。ついでに、兄で無くなっても側にいれるように取り計ってもらおう。



 さあ、急いでクレインを追いかけるか。



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