俺が呼び出された理由とは?
レオン視点
時間は賢者殿に呼び出された時まで遡る。
「それで、私を呼びつけた理由をお聞かせ下さい」
王城に着くと間髪入れず謁見の間に通された。やれやれ、慌ただしいことで。
「おう、お前さんがやった「城落とし」の対策を教えやがれ」
ガルド王が唐突にそんな事を言い出した。
「……もう少し詳しくお願いします」
思わずため息を吐きそうになるのをぐっと堪える。流石に単刀直入過ぎるぞ。
それで詳しい話を聞くと、俺が帝国で使った「大量の眠り粉」で城の戦力を無力化した時の話だそうな。
「対策……と言われましてもね……」
「お前さんからこの話を聞いて、対応策を政務官全員で頭ぁ突き合わせて考えたが、一向に答えが出る気がしねぇ」
「だからこの策を考えた本人なら対応策も考えておろうと、ワシが進言したという訳じゃ」
ガルド王の言葉を引き継ぐ形で賢者殿がそう言い放ちやがった。また面倒な事を!
「対策と言われましても……異変を感じたら風の魔法で口と鼻を覆うくらいですかね? もしくは体全体に風魔法を纏って、眠り粉を吹き飛ばす……ですかね」
「……それしかねぇか」
「後は……事前に眠気覚ましの薬を飲んでおくとかですかね。そうすれば全員が眠る事はないでしょう」
完全な対策が出来ないからこそ、俺がこの策を使ったのだ。絶対に成功させなければいけなかったのだからな。
「わかった。その話はまた今度にするぞ。実はまた問題が起こりそうなので、その相談がしたい」
またか……まあ、俺としては情報が得られるだけで有難いのだけどな。
「ここからはワシが話そう。近頃、北の国が俄かに騒がしくなってきてのう」
「具体的には?」
「武器や食料の輸入、それも大量にじゃ。更には国境を封鎖し通行を制限しておる」
おいおい……それは、
「……戦争、ですか?」
「ワシ等もそう思ったのじゃが、彼の国には戦争をする理由が全くと言って良い程に無い。彼の国は獣人の王が治める、自然豊かで資源も豊富に取れる資源国じゃ。周辺国との貿易も活発で、どこかの国と揉めているという話も聞かん」
その話が本当なら、確かに戦争を「仕掛けて」来るとは思えない。
「それでも戦争の準備と思わしき事をしている、ならば北の国は「何か」に備えているのでは?」
「その「何か」、お主は何だと考えておる?」
「恐らく魔物……それも大量の」
この俺の発言で謁見の間はざわつき始めた。つまりそれは、
「……『大氾濫』というわけじゃな?」
「現状ある情報ではそう考えるしかありません」
詳しく調べれば違う可能性も見えてくるとは思うがね。
しかし……こうも連続で起こるなんて、あり得るのか? 何かキナ臭くなってきたぞ?
「結局はもっと情報を集めねぇと駄目ってことか。貴重な意見を聞けて助かったぜ。んじゃまた何かあったら宜しく頼むぞ」
俺はここでお役御免となった。ガルド王達はまだ会議を続けるそうだ。俺は賢者殿の転移魔法で帰宅する事にした。
「お主の意見は聞いていて楽しかったぞ。実に有意義な時間であった」
「貴女を楽しませる為に来たわけではないですがね……それではこれで失礼します」
俺の言葉を聞くと賢者殿は楽しそうに笑い、転移魔法を発動させた。
眩しい光が収まると、立派な我が家が目に入った。では中に入ろうとしたその時、
「おう、レオンの兄ちゃん。丁度良く会えたな」
ドワーフのガントンに声を掛けられた。はて? 工事に何か問題があったのか?
「工事が終わったんで、帰る前に挨拶をしに来たんだよ」
終わっただと? 早過ぎるな。流石はガントンと言うべきか、仕事が早い。
「この後はどうするんですか?」
「夕方に迎えが来る手筈になってる。それまで宿で酒盛りさ」
ドワーフと言えば酒好きだよな。おっと、それなら丁度良い。
「ではこれを差し上げます。皆さんで飲んで下さい」
そう言って俺はアイテムボックスからワインの瓶を五本取り出し、ガントンに手渡した。王都で買った物だけどね。
「いいのか? 悪いな」
「いえ。いつも丁寧な仕事をしてもらっているお礼ですよ」
「ありがたく貰っていくぜ。じゃあ、また何か作って欲しければ声を掛けてくれ」
宿に向かうガントンに礼を言い、俺は改めて家に入る事にした。
「……人が居る家に帰って来るのは何時以来だろうか」
両親と住んでいた学生の時以来か? 随分と昔のような気がする。
「……今帰ったよ」
何となく「ただいま」と言うのが気恥ずかしくなってしまったな。
「「「お帰りなさい」」」
妻達が揃ってのお出迎えだ。「お帰りなさい」と言われるのが、これ程嬉しい言葉なのだな。
「ただいま」
俺は自然と「ただいま」と口にしていた。ふふふ……これだけの言葉で幸せを感じられるのか。俺もまだ知らない事が沢山あるな。




