それぞれの想い・プリムラの場合
プリムラ視点
「順番的に、次はワタクシの出番ですわね」
自分自身の事を語るのは、どことなく面映ゆいですわね……コホンッ。ではワタクシの人生の軌跡を辿るといたしましよう。
ワタクシは父親を国王に、母親を王妃に持つ所謂「お姫様」として生まれました。国は大陸の北部にある小さな国でしたわ。
物心つく頃から立派な淑女になるべく様々な習い事を修めました。その教育のお陰か、幼い頃のワタクシは読書が趣味の物静かな女の子でしたわ。
ある日、お母様に一冊の絵本を読んでもらったのが、全ての始まりでした。
その絵本の内容は、王子様が悪い貴族に捕らわれたお姫様を助けに行く……どこにでもある英雄譚を絵本にした物でした。
ですがその本を読んで、ワタクシはとても感銘を受けましたわ。ワタクシもこの王子様の様に誰かを助ける人になりたいと。ふふふ、お姫様にではなく王子様に憧れる所がワタクシらしいですわね。
その日から、ワタクシはお母様に頼んで剣の練習をさせてもらいました。お父様は苦言を呈していらっしゃいましたが、お母様は笑って許してくれましたわ。
剣の稽古を続けていたある日、緊急の要件を伝える伝令が城へと駆け込んできました。伝令によれば付近の村に魔物が襲撃をしたとの事。そして救援を呼ぶ為に自分が馬を走らせて来た事。
その話を聞いたワタクシは、城を飛び出し襲われたという村へと、馬と共に走り出していました。今にして思えば、馬鹿な事をしたなと。王女が一人で魔物を退治しに飛び出すなど。ですが当時のワタクシはようやく剣の腕前を試せると思い、その事で頭がいっぱいでした。
村へ到着すると、数匹のゴブリンが民家を襲っている所に出くわしました。気が付いたらワタクシは無我夢中で剣を振り回していましたわ。城の兵士が慌てて到着した時にはワタクシが全てのゴブリンを倒し終わった後でした。
城に戻ると、お父様を始め城の方々にこっぴどく叱られましたわ。ですが、ワタクシは後悔などしておりません。助けた村人から「ありがとう」と言われた時の感動は、生涯忘れる事は無いでしょう。
その後もワタクシは民から助けを乞われれば、すぐに駆け付けました。そんなワタクシの功績が認められたのでしょうか、誕生日にワタクシ専用の剣をプレゼントされましたわ。とても嬉しかったのを覚えています。
ですが、それから幾月が流れたある日……母が、病気でお亡くなりになりました……。
しかしワタクシはこの国の王女。民の為、悲しんでいる暇などありません。
お母様が亡くなりしばらくして、お父様が新しく妻を迎える事になりました。国王として当然だと思いますが、この継母がとんだ女狐だったのです。
ワタクシが健やかに成長し、何時しか「王国の至宝」等と呼ばれ始めた頃、突如としてワタクシの輿入れが決まりましたの。
お相手は遠い国の聞いた事も無い伯爵家だったのです。王女が嫁ぐに家格が釣り合わず、我が国に何の利益も御座いませんでした。これはおかしいと思い調べた結果、全てあの女狐が決めていた事が判明しました。
ワタクシはすぐにお父様にこの事を相談しましたが「王女なのだから国の為に尽くせ」と言い取り合ってもらえません。どうやらあの女狐がお父様にある事無い事吹き込んでいたのでしょう。
ワタクシの味方はこの城の何処にも居ないと悟り、悲しみで食事も喉を通りませんでしたわ。
ですが、本当に悲しかったのは、もうこの手で愛する民草を守れない事。ワタクシの『英雄譚』はここで幕引きとなったのでした。
輿入れの日の朝、最後にこの国の事を目に焼き付けようと、バルコニーへと向かいました。未練がましく大事な剣を抱きしめたまま。
これも王女の勤めとだと、全てを諦めかけたその時……光り輝く扉が目の前に現れましたの。
その時のワタクシは……何と言うか、正常な判断が出来ない状態でしたので、躊躇わず扉を開きましたわ。
ですが、その判断が間違っていなかったと、今ならハッキリと言えますわ。だって、世界で一番素敵な「旦那様」に出会えたのですから。そしてワタクシ一緒に『英雄譚』の続きを紡いでくださるのですからね。
「以上でワタクシの話はお終いですわ」
少々長く語ってしまいましたが、皆さんは真剣に聞き入ってくれましたね。
「だからプリムラは、人を助ける事にこだわるのねぇ……」
そう言ってソニアが何度も頷いていました。ふふ、絵本がワタクシの原点ですからね。




