水着を受け取りに行きます
目を覚まし、ベッドの惨状を目の当たりにしても驚かなくなったな。慣れとは恐ろしい。そして手慣れた手つきで後始末をこなす。
「今日はユニスの店に寄った後、ダンジョンに向かおうと思っている。あまり休み過ぎても体が鈍ってしまうからな」
朝食を食べながら今日の予定を話し合う。
「そいつはいいね。組手も悪くはないがやっぱり実戦が一番さね」
そう言ってセフィラが満面の笑みを見せた。うん、我慢させていたみたいで悪かったよ。
そんなセフィラに急かされて、素早く準備を終えて王都へと出発したその時、コンコンッと家のドアをノックする音が聞こえた。何気にこの家の来客は初めてだな。
とは言ったものの、客人の正体には心当たりがある。俺が扉を開けるとそこに居たのは、
「おう、レオンの兄ちゃん。約束通り造りにきたぜ」
我が家を訪問してきたのは、ドワーフの職人ガントンだった。そしてガントンの後ろには、同じくドワーフの職人と思われる方々が十数名待機している。何とも頼もしい光景だ。
「では、施工場所に案内しますね」
案内と言っても家の隣だけど。
「ここにお願いします。それと入り口は家の中庭から入れる位置にお願いします。」
「おう、任せおけ。それと工事中は少しうるさくなると思うが、そこは勘弁してくれよ?」
「大丈夫です。丁度出掛けようとしていた所なので」
それは丁度良いタイミングだったな。
「そうか。それじゃあ始めさせてもらうぜ」
「宜しくお願いします」
ガントンに別れの挨拶をして家に戻り、その後改めて王都へ移動するのだった。
「あっレオンさん! 昨日の「アレ」はレオンさんの所為ですね?」
ユニスの店に着くと開口一番ユニスがそう言いながら詰め寄って来た。はて? 何やら怒っている様子だが?
「昨日「ここで珍しい服を買えると聞いた」って大勢の人が押しかけて来たんですよ。詳しい事を聞いたらあの制服の事だったんです」
ああ、もう宣伝効果が出ているのか。しかしそれは喜ばしい事では?
「注文が増える事は良い事では?」
「それはそうなんですが……しかし事前の予告なくあれだけのお客様が来店されたら、流石に対応出来ませんよ」
キャパシティを超える人が来てしまったのか。それは申し訳ない事をしたな。
「それはそれとして。注文の服は仕上がっていますよ」
「早速着てみたいわ~」
とエリカが言うので、彼女が店の奥に行き完成したブラジャーとショーツを身に着け登場した。それにしてもユニスの切り替えの早さには驚かされた。
「ど~お? 似合ってるかしら~?」
「ふむ、実際に着用している所を見ると、より一層エリカのスタイルの良さが際立つな」
「はい……採寸の時に分かってはいましたが、やはり凄いですね」
女性のユニスですらエリカの下着姿に目を奪われているんだ。男なら一目見れば恋に落ちてしまうだろうな。他人に見せる気はさらさら無いがね。
「これを着けていると、胸が揺れなくて楽だわ~」
エリカも気に入ったようで何よりだ。
「それで、ですね……『水着』の方なのですが……」
次の依頼品である水着の話になると、途端にユニスの歯切れが悪くなった。うん? 何か問題があったのか?
「実はレオンさん分の水着を初めに作ったのですが……」
当然だが俺の分も頼んでおいた。普通のトランクスタイプの水着な筈だが?
「レオンさんの分を作るのにマーフォークの皮を使い過ぎてしまってですね……」
そう言ってユニスが取り出したのは、俺がデザインした水着のブラよりも面積の小さい「超マイクロビキニ」になっていた。
「受け取ったマーフォークの皮の量では、女性の皆さんの分を作れなくなりそうだったので、この様になってしまいました。申し訳ありません」
下の方も切れ込みが激しいハイレグ仕様になっている。まあ、何という事でしょう……俺が考えた際どいデザインの水着が、更に際どい水着になってしまいました。
「素晴らしいですユニスさん! 私の想像以上の出来ですよ!」
「ふぇ?」
思わずユニスの肩を掴んで大きな声を出してしまった。おっといかんな、紳士たるもの常に冷静でなければ……よし。
「つまり、これで大丈夫ですよ、と言いたいのです」
「そ、そうですか、それなら良かったです」
ユニスの腕は確かだし試着はしなくていいだろう。着ている所を見るのは、プールが完成してからのお楽しみにしておこう。
それでユニスから水着を渡された時に思った事は、これ、どれが誰の水着か分からなくなりそうじゃね? だ。試しにとマリーの水着をアイテムボックスに入れたら、しっかりと「マリーの水着」と識別された。本当にアイテムボックスは万能で便利だな。
後顧の憂いも無くなったので全員分の水着をアイテムボックスに収納する。これで用事は済んだな。
「では私達はこれで。お仕事頑張って下さい」
「はい。いつでもお越し下さいね」
ユニスに挨拶をして俺達は次の目的地「上級ダンジョン」に向かうのであった。




