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遂に「アレ」を手に入れる準備が整ったぞ

 王都から家に戻ると、マリーを筆頭に妻達が夕飯の支度を始めた。それ以外のメンバーは中庭へ向かったようだ。我が家の日常だな。

 夕飯の席での話題はやはり王都観光の事だ。皆楽しそうにそれぞれの感想を語り合う。良い笑顔だ、有意義な休暇になったようでなによりだ。

 夕飯を食べ終えて命の洗濯をしに風呂へ入る。体を洗い終え湯船に浸かってリラックスしている時に、俺は今後の事を話し始める。

「将来的にだが、俺はこの町――カルディオスを活気ある町にしたいと思っている。昔は人が多くて賑やかだったのだろう? リラ」

「……うん……十年前の……『大氾濫』より前は……王都みたい……だった……」

 リラが力のない声でそう答えてくれた。昔を思い出してしまったのだろう。

「俺はこの町が好きだ。得体の知れない人間であるこの俺を快く受け入れてくれた町の人々もだ」

 ギルドの受付嬢であるハンナ。ギルド支部長のライアン。素材買い取り所のバルガス。宿屋『そよ風亭』のナッシュ、ポーラ夫妻。後ついでに門番のグレッグ。上げれば切りがない程大勢の人々に助けられた。俺はその恩返しがしたいのだ。

「それは素晴らしい考えですね、旦那様。私もこの町の人達には大変助けられました」

 俺と同時にこの町を訪れたマリーも大いに賛成のようだ。

「だが、具体的に何をしたらいいかは目下考え中だ。良ければ皆の知恵を貸して欲しい」

「勿論ですよ、旦那様」

「ええ。民の為、一緒に考えていきましょう」

「うん……楽しみ……」

「おねぇさんの蓄えた知恵が役に立つと思うわぁ」

「立派な心掛けです。私も見習わなくてはいけませんね」

「はい。私も見習いたいと思います」

「国を救ったと思ったら次は町おこしかい? 退屈しなさそうで嬉しいさね」

「面白そうだね、あーしも協力するよ」

「そんな事~冒険者の考えるじゃないわよね~。でも~そこがレオンちゃんの良い所よね~」

 俺のこんな適当な考えを聞いても、誰一人笑わず協力を約束してくれる妻達。俺は本当に果報者だよ。

 そんな素晴らしい妻達に感謝を込めて、今夜はたっぷりと愛し合った。それはもうじっくりねっとりと、全員足腰が立たなくなるまで愛したよ。




 朝日が昇り、一日の始まりを告げる小鳥のさえずりが聞こえてくる。さあ今日も一日頑張ろうか。周囲の惨状をどうにかしてからだがな……。

 町を豊かにする。確かに昨日そう言ったが、それでも優先するのは俺達夫婦に関する事だ。まずは身近な所から手を付けていくのは定石だな。

 そういう訳で俺は早速行動を開始する。俺の欲望……ゲフンッゲフンッ俺達夫婦の幸せの為に。最初に向かったのは冒険者ギルドだ。ここは市役所的な役割も担っている。そこで家の周囲の土地を買い上げる事にした。ギルドの職員が「貴方なら無償でいいですよ?」と言ってきたが、街に還元するという意味も兼ねてしっかりと金を払って購入した。

 これで良し。次はユニスに会いに行く為に王都へと移動する。

「お待ちしていましたレオンさん。ご注文の服は出来上がっていますよ」

 昨日の約束通りに服を受け取ると、妻達は店の奥に移動し新しい服に着替えて出てきた。

「皆、良く似合っているぞ」

 やはり服装が変わると気分も変わるな。華やかに感じるし目の保養にもなる、良い事尽くめだ。うん、まあ……今まで着ていた普段着が……その、何と言うか「質素」だったのでな、余計にそう感じる。

 新しい服は、注文通り白いブラウスに黒地のベスト、それに白を基調としたスカート。これは全員共通だが、細かい所で各個人の個性を出している。例えばマリーならば頭にホワイトプリムを付け、スカートの前方部にエプロン風の刺繍が施されている。元メイドのマリーにピッタリだ。元の世界で見かけたら「何のキャラのコスですか?」とか「写真、一枚いいですか?」と声を掛けられるだろう。

「それで、レオンさん。この服に何か名前を付けたいと思うのですが、何かいい案はありませんか?」

 名前か……シンプルに「学生服」では味気ないか。それに「学生」の意味が通じないだろう。ここはいっそ、

「『ユニスの制服』……というのはどうでしょう?」

「えっ? 何故私の名前を?」

「何故って、これは貴女が作った服ではありませんか。当然の事では?」

 それらしい理屈を述べユニスを丸め込む事に成功する。これでよし、次は「アレ」をアイテムボックスから取り出す。

「連日の注文で申し訳ないですが、これを使って服を作ってほしいのです」

「これは……マーフォークの皮ですか? 手に入れられたのですね」

 商人のジャックに貰った物だ。これで作るのは勿論「アレ」だな。俺は紙とペンを取り出し、サラサラと簡素なデザインを描いていく。

「これは、新しいブラジャーとショーツですか? 少し布面積が小さいようですが……」

 水を弾く素材、ブラジャーに似ている――そう、何を描くそうそれは『水着』だ。愛しの嫁達に自分好みの水着を着てもらう。これもまた『漢』のロマンだ。異論は無いな?

「形は似ていますが、これは水の中で活動する際に着用する物です。名前はそのものズバリ「水着」ですね」

「なるほど! それで水を弾く素材を使うわけですね。これなら明日には出来上がっていると思います」

 それは何よりだ……おっと、大切な事を伝え忘れていた。

「それと、この店に「服が欲しい」という人が来たら、出来るだけ安い値段で売ってあげて下さい」

 この店は高級店に分類される。本来なら無茶なお願いだろうが、今の状況ならいける筈だ。

「レオンさんの作ったミシンのお陰で、手間が減り数も作れるようになったので問題ありませんよ」

 グッド! 相変わらず話が早くて助かる。少々慌ただしいがユニスに別れを告げ、店を後にした。


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