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後始末の方が大変だよな……

 ここからは後日談を語ろう。気絶させていた兵士達は、皇子が死亡した事によってなのか、ミザーマが居なくなったからなのかは不明だが、洗脳は綺麗さっぱりに解除されていた。兵士達は洗脳時の記憶もしっかりとあるようで、厳罰を恐れたが、

「今回の事、全てはわしと愚息の責任である。したがって諸君等には一切の責任は無しと判断し、罰則は与えん」

 この皇帝の宣言で大きな混乱は避けられた。更にメイドや使用人も全員洗脳されていたそうだ。皇女さえどうにか出来ていたら、本当にクーデターが成功していたと思うと、肝を冷やしたよ。

 俺達と言えばだが、特にやれる事も無いので、客間で休んでいるところだ。

「これから、帝国はどうなるのでしょうか?」

 城のメイドが淹れてくれた紅茶を飲みながらプリムラがそう尋ねて来た。

「ふむ。国の政治を担う人材は無事なようだからな、政治面ではそれ程問題ないだろう。問題なのは経済面と治安面だ。商人は逃げ出し、有力な冒険者も国を脱出してしまっている。これらの問題の解決には膨大な時間と金が必要になるな」

 どれだけ低く見積もっても五年は掛かるだろう。金に至っては想像もしたくないな。国家予算何年分になるかなぁ。

 コンコンと部屋のドアがノックされた。それにマリーが対応する。

「お休みのところ失礼いたします。陛下が皆様に話したい事があるそうで、謁見の間までお越し頂けますでしょうか?」

「はい、大丈夫です。案内をお願いします」

 メイドに先導され謁見の間にやって来た。部屋の中は綺麗に片付けられ、先程の戦闘痕は何処にも見られない。あの短期間でよくもまあ。

「急に呼び出して済まない。其方達と早急に話し合いたい事があったのでな」

 部屋の中には玉座に座る皇帝と、その隣に立つ皇女が居た。そして入り口に兵士が二人か、随分と寂しい感じだ。

「先ずは礼を言わせてくれ。此度の事、其方達がいなければ帝国はその歴史に幕を下ろしていたであろう。本当に感謝する」

 そう言って皇帝は椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。隣のエリカ皇女もそれに倣う。やれやれ、皇帝がそうポンポンと頭を下げるもんじゃない。

「頭をお上げ下さい。私共は依頼を受けそれを遂行しただけですので」

「……そうか。それで、その依頼の報酬の事だが」

「それなのですが……陛下、我々は報酬の受け取りを辞退したいと思います。その分は是非、帝国の臣民の為にお使い下さい」

 この事は客間で休んでいる時に妻達と話し合って決めた。俺としては新たに得られた「情報」で元は取れていると思っているからな。

 俺の言葉を聞いて皇帝も皇女も目を丸くして驚いている。その様子では俺達の報酬をどうするかで相当悩んでいたな?

「本当によいのか? 一国を救ったのだ、褒美は思いのままぞ?」

「はい。その分はシャムフォリア王国のガルド王に請求しますよ」

 勿論冗談だよ……半分くらいはね。俺の小粋なジョークで場の雰囲気は和んだな。

「……だが、国を救った英雄に何も褒美を取らせないのは国の威信に関わる。そこでだ、代わりに娘のエリカを嫁に差し出そうと思うのだが、どうだろう?」

 この展開も事前に予想していたよ。

「陛下。私は女性をそのように扱うのは反対します。それに私は平民の冒険者です。夫婦とは、お互いをよく理解し信頼し合って初めてなるものだと考えています」

 この世界では皇帝の考えが普通なのだろうが、俺は肌に合わない。

「いやすまん。建前は褒美だが、本音は皇帝としても父親としても是非レオン殿の嫁になって欲しいのだ」

 ほう? その本音とやらを聞こうじゃないか。

「この国の跡継ぎは、娘のエリカ一人になってしまった。もしエリカに何かあれば、皇帝の座を巡って貴族同士で醜い争いが起こるだろう。皇帝として、それは是が非でも避けなければならんのだ。したがって早く結婚して跡継ぎを産んで欲しいと、そういうわけだ」

 いつの世もどこの国でも権力闘争は行われるのだな。面倒な事だ。

「それにな、父親としては本人が本当に好いた相手と結婚させたいという思いがあるのだ。幸いエリカはレオン殿の事を好いている様子でな、これ以上の条件に当てはまる人物は他にいないだろう」

「もう、父上ったら~」

 それを聞いたエリカ皇女は頬に手を当て満更でもなさそうに微笑んでいた。これはあれだ、アリスの時と同じ状況だな。

「おお、そういえばアリス王女とは「婚約」という形になっているのだったな。では、エリカも同じく婚約という事でどうだろう?」

 帝国としても、これでシャムフォリア王国との繋がりも深くなる。再び帝国で問題が起きれば、俺と王国に援助を求めやすくなるのは間違いない。俺としてもエリカ皇女は大変魅力的で好ましい女性だ。外見は勿論、内面もね。

 俺としても断る理由はないのだが、これ以上妻が増えると……ね? 体が……持たないと、思うんだよね。「俺の体がもたないので断ります」というのもなぁ……。

 そんな事を考えていたら、急に視界が狭まり、立ち眩みの様な状態になった! 何だ? 何が起こっているんだ?

 そして辺り一面に光りが溢れ出すと、俺は見覚えのある場所に移動していた。




「ここは……『神域』か! そしてこの強引なやり方……ガーベラではなく『きさま』か?」

「ピンポンピンポ~ン、だ~いせ~かい! 世界一周旅行をプレゼント~……って言うんだっけ? こういう時は」

 前回の時と同じく、光の球体がふわふわと眼前に漂っていた。

「ちっ……それで何ようだ? さっさと要件を済ませろ」

「舌打ち? 一応神様だよ? ボクは。それにツッコミも無し? もっと心に余裕を持った方が人生楽しく過ごせていいよ?」

「はぁ……確かにその通りだな。では、神が人生を語るとはどんなジョークだ? それとクイズなら「ニューヨークに、行きたいかー‼」の方がいいと思うぞ?」

「うんうん、やっとツッコミが出たね……ってクイズのツッコミ、流石にそれ古すぎると思うよ? オジサンにしか伝わらないよ?」

「俺は立派なオジサンだ」

 体は若返ったが、心や考え方まで若返るわけではない。それに年を取る事は決してマイナスではないと声を大にして言いたい。

「茶番も満喫したし、そろそろ本題に入ろうか」

「自分で茶番とか言うな……それで? その本題とやらは?」

「うん。キミに依頼した件がいい感じに進んだので、その報告と御褒美をあげようと思ってね」

 丁度いい。俺も聞きたい事があったのだ。

「それで『神』よ。率直に聞くが、現在の達成率はどの程度なのだ?」

「そうだねぇ、約十パーセントかな? 凄い速さだよね~。この調子で頑張ってよ」

 これで一割か。分かってはいたが先は長そうだ。

「それでね、これからの『戦い』は苛烈を極めるだろうと思って、キミの体をパワーアップさせてあげるよ。効果はシンプルに『身体能力の向上』だね」

「パワーアップ、ね……それが「ご褒美」とやらか?」

「いえす、ざっつらいと! 嬉しいでしょ?」

 ふむ。確かにこれから先、予期せぬ強敵と戦う事になるのは必定。手札は多い方が良いか。

「では、頼む」

「オッケー。それじゃあ……ほいっ」

 神の言葉と共に暖かい光が俺に体に吸収される。

「不思議な感覚だな……それで?」

「ん? 終わったよ?」

「終わっただと? それにしては何も変化が無いが?」

「キミに与えた力は、この場で効果を発揮する物じゃないんだよ」

「そうなのか……筋肉が膨れ上がったり、金髪になって髪が逆立つとかを期待していたのだが……」

「いやいや、どこの野菜星人の話さ。それはアニメの見過ぎだよ?」

 まあ、この神が俺の不利になるような事はすまい。ありがたく頂戴しておこう。

「いつ効果が出るのだ?」

「普段通り過ごせば、今夜には分かると思うよ」

 何か引っかかる物言いだが……今夜か。

「それはそれとして……エリカちゃん、いい子だよね? 嫁にしないのは損だよね?」

「何だ、藪から棒に? まあ、損得の話ではないが……確かに彼女は魅力的な女性だ」

 突然何を言い出すかと思えば……。恐らく俺の心を読んだのだろう。わざわざ貴様に言われるまでもない。

「それじゃあボクの用事は済んだから、キミを元の場所に戻すね」

「ちょ、まっ……」

 静止の言葉より早く、周囲が光に包まれた。くそっ、言いたい事だけ言ってお仕舞いか。まだ聞きたい事があったのにっ……。

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