表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/354

強襲! ハイデス帝国・帝城

 翌朝、まだ日が昇り切る前に宿を出発した。帝都へ向かう道中に作戦の成功率を高める為、エリカ皇女に色々と質問を投げかける。

「城の警備は、今どうなっているのですか?」

「あって無いようなものね~。今では兄上の言いなりになった兵士が~そこら中に突っ立っているだけね~」

 どうやら馬鹿皇子は、全て掌握済みだと思って油断しているようだな。

「その兵士達は、「洗脳」状態にあると思いますか?」

「……恐らくね~。どういう手段を使ったのかは、分からないけどね~」

 皇女は昨日「徐々に増えていった」と語っていた。ならば怪しまれない様に、一人一人魔法で洗脳していったと考えるのが自然か。

「皇妃様はどうなされているのですか?」

「母上は~兄上がおかしくなった時に、母上の実家に避難させたわ~。有力な貴族も領地に避難しているのよ~」

 それは朗報だ。これで皇帝の救出に専念できるな。

 うむ、エリカ皇女から話を聞いた上で、作戦変更の必要は無いと判断する。

 そして、遂に目標の帝都に到着した。




「……ここが帝都ですか? 何と言うか、活気がありませんわね」

 プリムラの言う通りだ。町の中心にあるメインストリートは閑散としていて、寂しさを感じさせる。露店も少なく、人通りが殆んど無いではないか。

「そんな……昔訪れた時はとても賑わっていたのに……」

「ごめんね~アリスちゃん。これが今の「帝都ハイデス」の姿なの~。私達皇族が不甲斐ないばかりに……」

「いいえ、皇女殿下の所為ではありませんよ。それに未だ間に合います、私達も協力しますので共にかつての賑わいを取り戻しましょう」

 むしろ皇女がいたからこそ最後の一線が超えられていないと俺は思う。この状況ならばとっくに血みどろの内戦に突入していても可笑しくない。

「……ありがとう~レオンちゃん」

 人通りのない道を足早に進み、俺達は巨大な城の前までやって来た。そこには当然門番の兵士がいるのだが、

「…………」

 門番の兵士二人は、虚ろな表情で立ち尽くしていた。目の焦点が合っていないな。

「ここは……お城……です。御用の方は……中に……お入り下さい……」

 俺達が近付くと、うわ言の様に同じ台詞を繰り返すのだった。おいおい、何とも雑な洗脳だな。もっと……こう、アニメや漫画の様に、しっかりと自我を持った保ったままの洗脳かと思っていたが……。いや、こちらは助かるから良いのだが……納得いかん。

「よし、作戦を開始する。ソニア、アリス、頼んだぞ」

「「はい」」

 現在の時刻は午前十時。こんな時間に城の前で集まっていれば、人に見つかり不審者として通報されそうなものだが、周囲に人影は全くと言っていい程存在しない。いるのは門番の兵士二名だけである。したがって、多少騒いだ所で誰かに見られる心配は無い。

 俺はこの作戦の為に購入した物をアイテムボックスから取り出した。それは小袋に入った粉末状のアイテム。「眠り茸」と呼ばれる睡眠作用のある茸をすり潰して粉末にした「睡眠薬」だ。魔物討伐にも役立つ優れものだが、扱いを間違えると自分達が吸い込んで眠ってしまう危険な代物だ。

 その危険極まりない粉を大量に買い付けたのだ。全ては皇帝を救い出す為に。

 俺がやろうとしている事は至ってシンプル。この睡眠薬を風の魔法を使って城の中に充満させる作戦だ。これで城の兵士は全員おねんねだ。その隙に俺達は風のドームを張り睡眠薬の効果を受けないようにし、正面から悠々と皇帝を迎えに行く。実に簡単だろう?

「では……いくぞっ!」

 まずは俺が風のドームを張り、味方全体を包む。すかさずソニアとアリスが魔法を使い、大量の睡眠薬が宙を舞う。そして生き物の様に睡眠薬を操り、城全体を覆うように魔法を駆使する。

 その余波を受けて、門番の二人が昏倒した。効き目は十分だな。

 その後、念には念を入れて、今度は睡眠薬を城内へと潜り込ませた。

 五分程使い、念入りに睡眠薬を城内に充満させる。外と内、両方から睡眠薬を流し込む。

「そろそろいいだろう。では、城内に侵入する。エリカ皇女殿下、案内をお願いします」

「ええ、案内は任せて~。父上の寝室は最上階にあるの~」

 エリカ皇女を先頭に、俺達は城内へと足を踏み入れた。当然だが、風のドームは維持したままだ。まだ城内には眠り粉が充満しているからな、当然、その備えはしておく。

 突入した城内は静まり返り、俺達の足音だけが辺りに響いている。

 城の至る所で、兵士が倒れ伏しているのを発見した。うむ、効果は抜群だったな。

 そしてそのまま城内を進み、何事も無く皇帝の寝室に辿り着いてしまった。おいおい、拍子抜けすぎだぞ。策が上手くいったからといって、これは酷すぎる。まあ、警備が完璧で俺の考えた策が防がれるのも、それはそれで困るのだが……。

 皇帝の部屋には当然鍵が掛かっていたが、

「これなら、よゆ~っしょ♪」

 桔梗がいとも容易く鍵を開けてしまった。皇帝の寝室の鍵すらも、桔梗の前では意味を成さないか。改めて桔梗の優秀さが証明されたな。

「父上っ!」

 扉の開錠に成功すると、エリカ皇女がいの一番に部屋の内部へ入っていった。俺達も続けて侵入する。

 すると部屋の奥にある天蓋の付いた豪奢なベッドに一人の男が横たわっているのが見えた。この人が皇帝か。本来は精悍な顔つきなのだろう。だが今の皇帝は、肌の張りは失われ、頬は痩せこけ、その精悍さは失われていた。

「……恐らく薬で眠らされているのだと思います、「眠り茸」とは別の薬で。先生なら詳しい事が分かると思いますが……」

 皇帝の容態を見ていたアリスがそう口にする。取り敢えず最悪の事態は免れたか。さて、これで用事は済んだな。さっさと退散させて頂くとしよう。

「皇帝陛下は俺が背負うとしよう。エリカ皇女、他に何か持っていくものはありますか?」

「いいえ~特には……あっ、待って。これを持っていくわ~」

 そういってエリカ皇女が手にしたのは、ベッドの隣に備え付けられている机の上にあった「王冠」であった。成程、それは大事な物だ。

「よし、ここから退散するぞ。ソニア、転移魔法を」

 皇帝を背負った俺がソニアに指示を出す。

「ええ、いくわよぉ?」

 エリカ皇女と皇帝を伴って、俺達はシャムフォリア王国へと帰還した。やれやれ、何とかなったな……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ