帝国の皇女様
昨晩の祈りは通じたようだ。無事に朝日を拝む事が出来たよ。
ああ……うん。取り敢えずベッドと体を綺麗にしようか。何時もに増して酷い有様だ。
続々と妻達が起床し始め、協力して昨夜の後始末をしてその後、全員で朝食を取る。
「よし、帝国に向け出発する。気を引き締めていこう」
朝食の後、帝国に向かう為王都へと転移魔法で移動した。そして山沿いを北に向かって進んで行く。
そして何度か魔物の襲来を退け、遂に帝国領内に到着した。その後少し進んだ所で、小さな集落を発見した。どうやら街道沿いにある宿場町のようだな。
「ここに住む人達から何かしらの情報が得られればいいのだが……」
集落に立ち寄り、住民から幾つか話を聞くことが出来た。
・数年前から魔物の数が増え始めた。
・同じ時期から野党も増え、治安が悪化した。
・その為、商人等が立ち寄らなくなり、物価が高騰している。
と、大体こんな感じだ。
「数年前……それは皇帝陛下が病に伏せられた頃、という事でしょうか?」
「アリスの言う通りだろう。そしてあの馬鹿皇子が代行を務め始めた頃とも言えるな」
成程ね。帝国がこの様な悲惨な状態になっているのに、その話が王国に入って来なかったのは、情報を運んでくる商人がいなかったからか。
その後、帝都に近付くにつれて魔物の襲撃が徐々に増えてきた。聞いていた通りだな。治安維持が行き届いていない。という事は、
「へっへっへ……金目の物と女を置いていきな。そうすれば命だけは助けてやるぜ?」
こういう愚か者も現れるという事だな……はぁ……。
「おめぇ達もついてねぇなぁ。この俺、サンブル様率いる「サンブル傭兵団」に出会っちまうんだからよぉ」
そう宣った、なんとか盗賊団のなんとかという奴の後ろには、五十人程のゴロツキ共がぞろぞろと姿を現した。傭兵団ねえ……実際は「盗賊団」だろうに。もしくは、所詮数だけが取り柄の「烏合の衆」だな。
既に俺とアリスとソニアは魔法を放つ準備は整っている。だが奴等の誰一人とて、それにすら気付いていないのだからな。
「おうおう、びびって声も出ねぇか? 安心しろ、女は俺様達が可愛がって……」
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
「何故、お前達は揃いも揃って悠長に眺めているんだ? 既に戦いは始まっているぞ?」
俺とアリスとソニアが『風の刃』の魔法をゴロツキ共に放った! それなりの魔力を込めてな。
それ魔法でゴロツキの内、十人程が首と胴が泣き別れになった。
「……へっ?」
それを合図に、妻達が一斉にゴロツキ共に襲い掛かる!
「消えなさいっ」
「民の平穏の為、成敗させていただきますわ!」
「……数が多い……でも……それだけ……」
「騎士として、あなた方を許すわけにはいきません!」
「はっはっは! 少しは歯応えがあるんだろうねっ?」
「きゃはっ♪ お掃除お掃除っと」
ゴロツキ共は一人、また一人と命の灯を消していった。誰一人としてまともに戦えていないな。恐らく今まで抵抗しない弱者ばかりを相手にしてきたのだろう。それが透けて見えるな。
「ば、馬鹿な……五十人いたんだぞ? それがあっという間に⁉」
頭目の男が次々とやられていく味方を見て、驚愕で顔を青ざめさせていた。
「じょ、冗談じゃねぇ! こんな所で死んたまるかっ!」
自分が不利と悟ると、頭目の男は仲間を見捨て一目散に逃走を始めた。実に小悪党らしい選択だが、逃さんぞ!
「むっ? あれは……いかん!」
頭目の男の逃走先に人影が! 旅人か? 体格から察するに女性のようだが、こんな時に! 最悪のタイミングだ!
「どけーーっ! 死にたくなければ道を空けろっ!」
頭目の男が目の前の女性に向かって武器を振りかざす。ちっ、間に合うか?
「あらあら~物騒ね~。でも、死ぬのは貴方の方よ~?」
ビュン、という風切り音が聞こえると同時に、頭目の男の首が吹き飛んだ。
首を斬り飛ばしたのは、あの女性のようだが……冒険者だったのか? 太刀筋が見えなかったぞ。
後ろを振り返ると、あちらの戦闘も終了していた。これで一息つけるか?
そう思っていると、件の女性がこちらに近付いて来た。現状では敵か味方か分からないからな、警戒しておくのが正解だな。
「助かったわ~。貴方達が倒した賊は~本来私が討伐する予定だったの~。お陰で仕事が早く終わったわ~」
随分とのんびりとした喋り方だな。だが決して不快とは感じない、不思議な感覚だ。
女性の姿がハッキリと視認出来ると、俺は驚きで思わず目を見開いてしまった。
見た目から推測するに、恐らくは人族。身長は少々高めで、腰まで届く長く美しい紫色の髪に、赤を基調としたセクシーなパーティードレスを着用している。深いスリットから覗く生足が艶かしい。しかしそれよりも、ドレスから色々とはみ出している大き過ぎる胸に目が奪われてしまった。妻の中で一番大きいソニアに匹敵する爆乳だと?
と、ここまでならさして問題は無かったが、真に俺が驚いた事は、彼女が手に持つ『死神』を連想させる巨大な鎌だ。無造作に立っているだけだが隙が全く無い。それだけで彼女が有数の実力者である事を示している。
「……エリカ……姉様……」
いつの間にか俺の隣にやって来たアリスが、小声で呟き呆然としている。なに? 彼女がエリカ皇女だと?
「あら~? その声と~私の事を「姉様」なんて呼ぶのは~……」
アリスは被っていたフードを取り、彼女へ向かって駆け出した。
「エリカ姉様っ!」
アリスはその勢いのままエリカ皇女に抱き着いた。
「あらあら~、アリスちゃんに会うのは何年ぶりかしら~。大きくなったわね~」
そう言ってエリカ皇女は、アリスの背中に手を回し、優しく抱きしめた。感動の再開だな、声を掛けるのはしばらく待とうか。




