帝国潜入・前夜
自宅に戻り夕飯を食べていた時、ふとアリスを見ると夕飯を食べる手が止まっており、暗い顔で俯いていた。
「アリス。帝国の皇女の事が気になるのかい?」
俺の言葉でアリスは俯いていた顔を上げ、俺の顔を見つめながら、
「はい……帝国の皇女……エリカ姉様は、私が幼い時から良く面倒を見て頂いていたのです。私にとって、エリカ姉様は姉代わりといってもよい方で、今でも憧れの人です。そんなエリカ姉様が、今どんな状態でいるかも分からないなんて……」
成程ね。アリスにとって、エリカ皇女は本当に大切な人なのだろう。だが俺の予想では皇女は無事なはずだ。といっても確たる根拠があるわけではない。それに、今のアリスに必要な物はそんな気休めの言葉ではない。
「そのエリカ皇女の為に、アリスは努力してきたのだろう? そんな自分の努力をまずは信じろ。それでも不安なら俺を信じろ」
その俺の言葉で、アリスの瞳から不安の色が徐々に消え去っていった。
「……申し訳ありませんでした。エリカ姉様の事を考えると、不安になってどんどん悪い方向に考えが向かってしまって……」
「不安になるのは分かる。そうなった時はもっと俺を――いや「家族」を頼ってくれ」
俺の言葉にアリスを除く妻達が大きく頷いた。ふふ、俺の妻達は最高だな。
「皆様……はいっ」
これでアリスは大丈夫だな。ああ、それと「これ」の使い道を話し合うか。
「今日手に入れた『魔剣』だが、ローリエに使ってもらおうと思っている」
「私……ですか?」
俺の提案に驚いた表情をするローリエ。理由は色々とあるが。
「戦力強化という点で見れば、ローリエがこの魔剣を使うのが一番効果的だと思う。それと、消去法でローリエしか使えないというのもあるがね」
ブロードソードを使えるのは、現状リラとローリエの二人のみ。そしてリラは既に魔剣を使っている。つまりはそういう事だ。
「分かりました。この魔剣でより一層の活躍を約束します!」
手にした魔剣を高らかに掲げそう宣言するローリエ。うむ、期待しているぞ。
「では、本題に入ろう。明日以降の具体的な行動を決めていくぞ」
基本方針はもう決めているが、細かい所は皆の意見を聞いて詰めていきたい。
「まず、俺達は馬車を使わず帝国に向かう。馬車を使わないのは、俺達の足で直接向かった方が速いからだ」
妻達は俺の話を神妙な面持ちで聞き入っている。
「その後、帝都に向かいながら情報を収集していく。最終的な作戦は帝都で決めようと思うが、今の時点で考えている作戦は二つある」
ピッと人差し指を立てながら、
「一つ目は、皇女とコンタクトが取れた場合。皇女から皇帝の現在の状況、馬鹿皇子の状況を聞き、最終的な作戦を決める」
次は中指を立て、
「二つ目は、皇女とコンタクトが取れなかった場合。そうなったら城へ忍び込む事も考えている。そして皇女と皇帝を探し出し転送魔法で即座に王国まで撤退する」
今の話を聞いて「城の中で転移魔法は使えるのか?」という疑問があると思うが、答えは「イエス」であり「ノー」でもある。どういうことかと言うと、城の外から城の中へ転移する事は出来ないが、城の中から外への転移は出来る。考えれば当たり前の話だが、どこからか転移魔法で兵士を城の中に直接転移させ続ければ、それだけで城を落とす事が出来る。当然その事態は避けたいから外からの転移は防ぐ。
逆に、城に籠城した際に王族を安全に退避させる手段として転移魔法を使いたい。つまり、自分にとって都合の悪い事は禁止にして、都合の良い事はそのまま使用する。そういう話だ。
「作戦については以上で終わりだ。何か質問があれば言ってくれ」
「城に忍び込む……といっても、どうやって忍び込むつもりですの?」
元・王女のプリムラがそう問いかけてくる。うむ、良い質問だ。
「その方法だが……」
………………。
「……という策を使う。これならば見つかる可能性は低く、比較的安全に忍び込めるはずだ」
俺が頭に思い描いた策を伝えると、全員が目を丸くして言葉を失っていた。
「……確かにその方法なら誰にも見つかる事は無いかもしれませんね」
とローリエ。
「はっはっは! 面白いじゃないか。そんな方法良く思いついたさね」
とセフィラ。
「……笑い事ではありませんよ? 我が城も同じ方法で忍び込まれてしまう、と思うと……」
とアリス。
王都で「とある物」を見つけた時にこの策を思い付いたのだ。
昔やったゲームに、今と似た様なシチュエーションがあってな。「その物」を使い、それを真似させてもらうという訳だ。
「質問は以上か?……よし、それでは明日に備えて早めに休むとしよう」
作戦会議を終え、全員で寝室へと向かった。
「では……明日への英気を養う為に、たっぷりと愛し合いましょう。だ・ん・な・さ・ま♪」
妻達が各々服を脱ぎ、全裸となってベッドの上に集合した。マリーさん? それだと俺の英気が養われないと思いますが?
まあ、明日から数日は「夫婦の営み」を我慢しなければならないだろう……ならば仕方ない、気合を入れるとするか。
「今夜は、おねぇさんからね♡」
一番手はソニアか。ソニアがゆっくりと俺の下腹部に腰を下ろすのを見ながら、明日の朝日が拝めるようにと祈るのだった。




