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鍵は『帝国』にあり

 ギルドに戻り魔石を換金する際に少々騒ぎになった。何というか、恒例行事になってきたな……。

 俺達が持ち込んだ魔石の量を見て職員が大声で驚く。

 ↓

 その声を聞きつけ、他の冒険者が集まって来る。

 ↓

 そして換金された金の多さに、冒険者が騒ぎ出す。まあ、何時もの流れだな。

 さて、そんな騒がしいギルドを離れ、鑑定屋に向かう事にした。

「ひっひっひ、よく来たねぇ。今日は何を鑑定するんだい?」

 相も変わらず、胡散臭い老婆の店主がお出迎えしてくれた。

「この剣の鑑定をお願いします」

「ほう……こいつは……」

 剣を見た老婆の瞳が鋭くなった。

「まあいい、鑑定すれば分かるさ。では始めるぞい。ぬぅ~ん……」

 何時もの怪しい掛け声と共に、老婆は鑑定を始めた。

「……やはりね。喜びな、こいつは『魔剣』だよ」

 ほう! そんな予感はしていたが、これで確定したか。

「素晴らしいですね。それで、どの様な魔剣なのですか?」

「ふむ、どうやら『風』の魔剣らしいね。魔力を込めると刀身に風の力が宿る、とある。銘は『嵐の飛剣(テンペスト)』だそうだ」

 何とも心揺さぶられる名前の剣なんだ。否が応でもテンションが上がってしまうよ。

「ひっひっひ、それで、コイツをどうする? 売れば数百万Gは下らないだろうねぇ」

 売値を聞いて、何人かの妻が息を飲んだ音が聞こえた。正に一攫千金だな。だが、

「残念ですが、これは自分達で使おうと思います」

 今は金より戦力アップの方が重要だ。それに金は魔石を売ればいいだけだしな。

「そうかい。そいつは残念だねぇ」

 と、肩をすくめる老婆。まあ、その代わりと言っては何だが、ダンジョンで見つけた他の品々はここで買い取ってもらった。これからもここを利用するだろうし、少しはサービスしておかないとな。

「ひっひっひ、毎度ありぃ」

 ご機嫌になった老婆に別れを告げ、店を後にした。




 さて、これからどうしようかと思案していたが、ふと気になっていた事を思い出す。

「そろそろ帝国について何か情報が入ったかもしれんな。一度、王城へ行ってみようと思う」

「そうですね。使者の方は早馬を使っていると思いますし、戻って来ていても良い頃合いですね」

 アリスのお墨付きも貰えたし、王城へ向かうとしよう。




 転移魔法を使い、王城の前までやって来た。そしてそのまま中へと入っていく。勿論、顔パスだ。

「おっ、お主等。丁度良かった、今しがた帝国へ向かった使者が帰って来た。お主等も一緒に報告を聞いていくとよい」

 中に入ると丁度そこに賢者殿が通りかかった。どうやらベストタイミングだったようだな。

 賢者殿を伴って、謁見の間に来た。中には既にガルド王をはじめ重臣の方々も揃っていた。

「おうレオン、よく来たな。これで全員揃ったな? おっし、報告を頼む」

 ガルド王がそう言うと、部屋の中央で膝をつき待機していた使者の男が立ち上がり、報告を始めた。

「はっ、報告します。我が王の代理として帝国の首都へ赴き、皇帝陛下に謁見を申し込みましたが、体調不良を理由に断られました」

「ちっ……前回使者を送った時と同じか……続けてくれ」

「はい。それで皇帝陛下の代行として皇子殿下と謁見いたしました。そこで、陛下よりお預かりした皇帝陛下への手紙を受け取ると、その場で開封し、中身を検めはじめました」

 使者のその言葉で場の空気が凍り付いた。というか、その皇子は馬鹿なのか?

「……あのクソガキ……俺達シャムフォリアをなめんのも大概にしろやっ!」

 当たり前の話だが、王から王へ宛てた手紙を本人の許可なく開封するのは外交儀礼上あり得ない暴挙だ。場合によっては、その場で打ち首になってもおかしくないレベルだ。いや、最悪それが原因で戦争に発展する事だってあり得る。ガルド王がブチ切れているのは当然の反応だ。

「ふぅ……まあ、その可能性も考えて、手紙の中は当たり障りのない内容にしておいたが……」

 何と言うか、呆れて物が言えなくなるとはこの事か。その馬鹿皇子は最低限の礼儀も知らんのか?

「その後、皇女殿下に挨拶したいと申し出たのですが、公務の為留守にしていると言われ、会う事は叶いませんでした。公務から帰って来られるまで待つと言ったのですが、いつ帰るか分からないと一方的に告げると、そこで謁見は終了してしまいました」

「その公務ってのも怪しいもんだぜ」

 確かに。だがそれ以上に怪しい事がある。顎に手を当てながらそう思案していると、

「ふむ、小僧。何か気になった事があるのか?」

 賢者殿が俺の方を見ながらそう言った。その言葉に反応し、部屋中の者が俺へと視線を移した。

「おう、何が気になったんだ? 構わねえ、言ってみろ」

 ガルド王が発言の許可を出した。ならば遠慮はしなくていいな。

「では……使者殿にお伺いしたい。謁見の際、皇子殿下以外の方がいらしたと思いますが、その方達の様子はどうでしたか?」

「そうですね……謁見では皇子殿下としかやりとりをしませんでしたが……ああそういえば、城に居た方々は、何と言うか生気がない……人形の様な感じで不気味でしたね」

「成程……」

 どうやら最悪の事態になっている可能性が高いな。

「おいレオン、どういうことだ?」

「恐らくですが、城に居る者は皇子殿下に操られて言いなりになっている可能性が高い、そう思います」

 俺のこの発言で部屋内が大いにざわつき始めた。俺の言葉が事実だとすれば、それは皇子による「クーデター」というに他ならない。暫くの間、この喧騒は続いていたが、

「おめぇら! 黙りやがれっ!」

 ガルド王が一喝すると、ピタリと喧騒は止んだ。見事だな。こういう所を見るとしっかりと「王」なのだと感心させられるな。普段はただのチンピラ親父にしか見えんがね。

「レオン、操られてるってのはどういう事だ?」

「この皇子殿下の無礼千万ぶれいせんばんな行い、場合によっては他国との戦争に発展しかねない物です。というより十中八九、戦争になります。無意味な戦争など国を亡ぼす要因にしかなりません。ならば大臣なり家臣が全力で止めるはずです。ですがそれも無かった様子。更に使者殿の感じた人形の様な人々……薬か魔法かは分かりませんが、城の者を操り支配下に置いて自分の思うがまま振舞っていると考えるのが自然かと」

「た、確かに。周りの家臣達は皇子殿下の行いを見て、一言も発しませんでした……改めて考えると、異常な光景でしたね」 

 俺と使者殿の言葉で今度は一転して静寂が訪れた。普通なら「そんな事はあり得ない」と一笑に付すのだろうが、状況証拠的に「黒」としか考えられん。

「どうやら、事態は一刻の猶予も無いと見るべきじゃろうな」

 静寂を破って言葉を発したのは賢者殿だった。

「すまんの。お主に頼る事になりそうじゃ」

「ああ。もう国として出来る事は、それこそ「戦争」しかねぇ。だが、こんなお互い何も益が無い事で、大事な兵士の命を無駄にするわけにはいかねぇ。済まんがお前さん達が頼りだ」

 元よりそのつもりだったのだ、想定していた事態の中で、最悪に近いという事が分かっただけでも収穫だ。それに俺達の「真の目的」に近しいと思われるからな。調べないという選択肢は無い。

「ああ、それと。皇子殿下の周りに不審な人物はいませんでしたか?」

「それなのですが、どうやら数年前に宰相が交代になったらしいのです。新しい宰相の名前は「ミザーマ・スリップ」と言う者だそうです。残念ながら、今回の訪問では合う事が叶いませんでした」

「ミザーマ? 聞かねぇ名前だな」

 どうやらガルド王も知らない人物らしい。一国の宰相になる者は、ある程度の家柄と実績が無ければ務まらない。国の有力貴族、ある程度国内外に名を知られている者が就任するのが通例だ。だがガルド王も知らないとなると、相当に怪しい人物だな。

「レオン、お前さんはコイツが黒幕だと思うか?」

 ガルド王の疑問はごもっともだが、

「黒幕……と断定するには情報がなさすぎます。少なくとも関係しているとは思いますが、その辺もきっちりと調べたいと考えています」

 さて、元の世界のサスペンス小説なら一連の出来事は全て繋がっている……というのが定番の流れだが、どうなるかな。

「では、早速明日にも帝国に向かおうと思います。一日でも早い方が良さそうなので」

「すまねぇ……頼んだ」

 俺達は急いで謁見の間から辞した。そして帝国に向かうに際し必要な物を町で買い揃え、一旦我が家へと帰宅した。


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