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野営をしよう。本来の目的をようやく果たせるな

 とは言ったものの、こちらのやる事は至ってシンプル。接近されない様に遠くから魔法を撃つだけだ。

「いい機会です、レオン様に教えて頂いた魔法を使いましょう」

「……うん」

「ええ。それじゃあ……いくわよぉ?」

 アリス、リラ、ソニアの三人が魔法を発動しようと魔力を高める。成程、あの魔法を使うつもりか。では、俺も合わせるとしようか!

「「「『水圧破斬ウォータースライサー』‼」」」

 俺とリラは指先から、アリスとソニアは杖の先端から、激しい勢いで水流が放たれた!

 水のレーザーがヒートスライムを縦横無尽に切り裂く! あっという間にヒートスライム達は魔石へと姿を変えた。




「硬そうな鱗ですが……」

「ならば鱗が無い場所を攻撃すれば良いだけですわ」

「この手の輩はそれが一番ですね」

「なら、アタイとローリエで奴等をひっくり返すとするかね」

「そこをあーし等が攻撃するって事ね」

 早速、ローリエとセフィラがラヴァアリゲーターをひっくり返していく。二人の膂力なら造作も無い。そしてマリー、プリムラ、桔梗がひっくり返って腹部を無防備に晒したラヴァアリゲーターを切り伏せていく。

 ほどなくしてヒートスライムとラヴァアリゲーターを全滅させた。事前に桔梗が罠の探知も行っており、戦闘自体も特に苦戦する事は無く良い状態だと言えるな。

「(ガーベラ、今の時刻を教えてくれ)」

「(はい。現在の時刻は21時35分になります)」

 思ったより時間が過ぎていたな。まあ、魔物を見かけては全て倒して進んでいたしな、こんな時間にもなるか。

「次の階層に到着したら、そこで野営の準備をしよう」

 そうして辿り着いた二十二層。そこも二十一層と同じ広めの部屋となっていた。部屋の隅に移動し野営に必要な道具をアイテムボックスから出し、野営を始める。




 パチ……パチと焚き火が燃える音が静かに木霊こだまする。今はマリーの作った夕飯を食べている所だ。

 メニューは保存食用の干し肉と野菜を煮込んだスープ、それに王都のパン屋で買ったパンだ。何時もの夕飯に比べれば大分質素だがリラ曰く、

「……普通は……硬い干し肉と……固いパン……それを水で……無理矢理……流し込む……十分……豪勢……」

 だそうだ。だが無理に余所様の「普通」に合わせる必要は無いな。俺達は俺達の「普通」でやれば良い。

 ふむ……いっそ、キッチンをアイテムボックスに入れて持ち運ぶか?……いや、流石にそれは止めておこう。

 皆の腹を満たしたスープは、思ったよりも美味かった。マリーの調理の腕が良いのもあるだろうが。

 その後、寝ずの番について話し合った。

「最初は俺、プリムラ、ソニア、セフィラが寝ずの番をする。次がマリー、リラ、アリス、ローリエ、桔梗が交代で寝ずの番をする。時間は五時間を予定している。時間に関してはガーベラが教えてくれるから何も心配はいらない。何か質問はあるか?」

「夫君、一ついいかい?」

「ふむ、セフィラか。何でも質問してくれ」

 さて、一体どんな質問がくる?

「毎晩している「夫婦の営み」は、今夜あるのかい?」

「……無しに決まっているだろう……」

 何か重大な事を見落としているのかと危惧したが……斜め上の質問だったな。他の嫁達もクスクスと笑っているぞ。




 先に寝る五人は毛布に包まり横になった。暫くすると静かな寝息が聞こえ始めた。ふむ、しっかり眠ったようだな。特にアリスは初めての野宿だろうし、しっかりと眠れるか心配だったが、杞憂だったな。危険は無かったとはいえ長時間の探索と戦闘で疲れが溜まっていたのだろう。

 起きている俺達がやる事と言えば、焚き火を消さないように、時折薪をくべるだけだ。なので眠気を抑える為に、小声で雑談に興じる事にした。

「この世界に来てどうだ?」

 丁度良い機会なので、気になっていた事を聞いてみた。

「毎日がとても充実していますわ。城の中では決して出来ない体験をすることが、何よりも楽しいのです」

 プリムラはそう言って微笑みかけてくれた。

「そうねぇ。こうやって大勢で一緒に過ごすなんて、考えた事も無かったわぁ。おねぇさんはこの世界に来なければ、死ぬまで一人で生きるつもりだったからぁ、毎日が楽しいわぁ」

 ソニアも同じ様に微笑む。

「確かにね。剣闘士としての生活も嫌いじゃあなかったが、退屈でつまらないとも思っていた所だったからね」

 セフィラは普段見せない柔らかい笑みを浮かべていた。

「そうか。それは良かった」

 この世界を楽しんでいるようで何よりだよ。

「元はと言えば、俺の身勝手な都合でこの世界に連れて来てしまったのだ。それに「嫁になれ」などという無茶な要求まで呑んでくれて、本当に皆には頭が上がらないよ」

 普段は決してこんな事は言わないが……たまにはいいだろう。

「大丈夫ですわ。ワタクシを含め、皆様が必ずこう言うでしょう……「私は、今幸せです」と」

 そのプリムラの台詞で、不覚にも涙腺が緩みそうになってしまった。

 俺は、俺自身の事を、世界で一番「臆病者で卑怯者」だと思っている。きっと俺は、そんな俺を認め優しく寄り添ってくれる女性を望んでいたのだろう。

 元の世界では、それなりの地位に就いていたからな。そんな弱みを見せるなんて事は出来なかった。そして寄って来るのは地位や金目当ての女ばかり……ああ、そりゃあ結婚出来ないわけだ。嫁達……いや『妻達』に感謝しなければな。

 思っていた以上に会話が弾み、あっという間に時間が過ぎていった。そして、




『(マスター。五時間経過しました。)』

 と、ガーベラの声が脳内に直接聞こえてきた。む? もうそんな時間か。ならば寝ている妻達を起こすとするか。

「時間になった、皆を起こしてくれ」

 皆を起こす役割はプリムラとソニアとセフィラに任せた。うん、俺が起こさないのは配慮しての事だ。あまり寝顔は見られたくはないだろうしな。

「お疲れ様でした、旦那様。後は私達にお任せ下さい」

 起床し、軽く身支度を整えたマリーがそう言って来た。

「ああ、宜しく頼む。ガーベラ、時間が来たらマリーに教えてやってくれ」

『了解です。』

 起きてきた皆と入れ替わる様に、俺達は毛布に包まりゆっくりと眠りについていく。


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