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変革への確かな一歩

 その後、少しの間警戒を続けていたが、マリーと桔梗から問題無しとのお墨付きを貰い、警戒を解いた。

「アリス、負傷者を任せてもいいか?」

「はい。お任せを」

 負傷者をアリスに任せ、無事である戦士風の男に話を聞くために彼等に近付いた。

「貴方は大丈夫ですか?」

「あ、ああ……大丈夫だ。助かったよ」

 ふむ、受け答えもしっかりしているし、問題はなさそうだ。

「あ……あのね……?」

 すると突然腕の中の女性が話しかけて来た。

「ボクも大丈夫だから……ね? そろそろ、下ろして欲しいかなぁ……な~んて……」

「確かに、何時までも抱きかかえているのは失礼ですね。すみませんでした、直ぐに下ろします」

 俺はゆっくりと彼女を地面に下ろした。

「ふう……そういえば自己紹介して無かったね。ボクはユッカ、見ての通りエルフだよ。改めて、助けてくれてありがとう」

「私はレオンと申します。助けることが出来て良かったです」

 エルフの少女――ユッカを交えて話をする事となった。

 話を要約すると、普段は固定メンバーでダンジョンに潜っていたが、メンバーの弓使いが所用で王都に行くことになってしまった為、急遽メンバーを募集した。その追加メンバーがユッカだ。そして何時も稼ぎ場にしている十五層で狩りをしていて、そろそろ帰ろうかと相談していた時に、先程の豹型の魔物に襲われた。

「あいつは五十一層から出る「ブリザードファング」って言う魔物だよ。ボクは他のダンジョンで見た事あったからね、直ぐに『異階種』だって気が付いたよ」

 その為、彼女は直ぐに撤退を進言。だが撤退よりも早く襲って来た所為で数名が負傷。回復薬で傷を治し逃走しようとするも、魔物は執拗に追いかけてきた。数日の間、戦闘と逃走を繰り返して何とか逃げ切ろうとしたが、遂に魔法使いの男とシーフの男がクリーンヒットを貰い動けなくなってしまった。更に追い打ちを掛ける様に、今迄の戦いで回復薬を使い切ってしまっていた事にそこで初めて気がついたのだとか。

「それで、もうここで倒すしかないと思って戦っていた時に、キミ達が現れたんだよ。ホントもう駄目かと思ったよね」

 本当に間一髪だったのか。間に合って本当に良かった。

 因みに、戦士風の男の一人の鎧が大きく破損していた。広場で発見した金属の破片はこの男の鎧だと言う話だ。

「レオン様。負傷者の手当てが終わりました。お二人共命に別状はありません」

 アリスが負傷者の情報を報告する。

「そうか、それは良かった。では、少し休憩したら出口までお送りします」

 休憩を取り、転送の魔法陣を目指し移動を開始した。

 その後は特にトラブルも無く転送の魔法陣に辿り着き脱出に成功した。

 ギルドに到着すると、中に居た人々から盛大な拍手で迎えられた。無事に助け出した事を称賛する声でギルド中が沸き立っている。一部、美女を侍らせている俺に対しやっかみの声もあったが、そいつ等には後日「お話」をしなければなるまいな。無論、拳でね。

 ギルドや助けたパーティから謝礼として金を渡されそうになったが、丁重にお断りした。

「依頼を受けた訳ではありませんし、何より俺達が勝手にやった事ですから」

 この俺の発言で場が更に盛り上がったが、続く出来事で場のテンションが最高潮になる。

 その理由は、俺達が倒した『異階種』が五十一層の「ブリザードファング」だと判明したからだ。

 どうやら最近は五十一層まで行ける冒険者がおらず、ブリザードファングの討伐報告は皆無だったそうだ。それなのにいきなり五匹も倒したとなれば、それは騒ぎにもなろうというもの。謝礼金を受け取らなかった理由の一つに、このブリザードファングの魔石が結構な金額になったというのもある。

 ああ、そう言えば。今回の件を王都ギルド本部に報告してランクを上げてくれるよう、推薦してくれるらしい。こちらは喜んで受けさせてもらったよ。

 ギルド内はお祭り状態になり、今にも宴会が始まりそうな雰囲気だったので、慌てて退散する事にした。ユッカを伴って。

「今日は本当にありがとうね」

 本日何度目か分からないお礼を言うユッカ。気にするなと言ったのだがな。それよりも、俺は疑問に思っていたことを尋ねた。

「あの状況、貴女一人なら逃げ切れたでしょう? 何故逃げなかったのですか?」

 そう、彼女の能力からすれば、一人で逃げ切るのは容易だったはず。

「ああ……うん、そうだね。でもさ、臨時とはいえパーティの一員になったんだし、見捨てて逃げるっていうのは……ね?」

 どうやら彼女は、この世界では異端と言える部類の「お人好し」なようだな。実に俺好みだ、俺の中で彼女に対する評価が高まったよ。

「えっと……それでね、助けてもらったのに何もお礼をしないのは、ボクの気持ちが落ち着かないからさ、お礼を受け取って」

 そう言って彼女はおもむろに近づき、俺の首の後ろに腕を回し、顔を近づけたと思ったら、

「ちゅ♪」

 唇を奪われてしまった。

「えへへ……じゃあボクは宿に戻るね。今度は一緒に冒険しようね~」

 一方的にそう告げると、彼女は風の様に走り去ってしまった。何故だか分からんが、直ぐに再開しそうなそんな予感がするよ。それと唇の柔らかい感触も良かったが、それよりも気になったのは胸部に感じた圧倒的な質量と柔らかさの方だ。つまり彼女は……。

 と、そんな事を考えていると「むにゅ」という音と共に左腕に柔らかい感触が。そちらに目を向けると、マリーが俺の左腕をその立派な双球の間に挟み込む様に抱き着いて来た。

「それで、この後はどうしますか? 旦那様」

 そう言う彼女の声色と瞳が普段と違っていた。これは……あれだな。

「王城へ向かおう。ミシンが完成していると思うから、それを受け取りに行こう」

 そう言いながら、マリーの頭を優しく撫でる。するとマリーの表情が徐々に和らいでいく。ふふ、マリーのこういう所が愛らしいと思うよ。




 ミシンを受け取る為に王城へとやって来た。そしてそのまま城内へと進んだ。門番は俺を見るとあっさりと中へと入れてくれた。もう殆んど顔パスだな。

 前回と同じ部屋でガントンと面会した。

「おう、頼まれてた「ブツ」は完成してるぜ。城の針子はりこの連中に試してもらったが、問題無く使えたぜ。それに針子の連中が今すぐにでも欲しいと騒ぐ程だったぜ」

「流石ですよ。ガントンさんに頼んで正解でした」

 未知の物をしっかりと完成させるか。国のお抱え職人は伊達では無いという事か。

「それで、こいつを一つ作るのに、大体……これ位だな」

「成程……では五台ありますので、謝礼としてこの金額をお渡ししますね」

「おう。確かに受け取ったぜ」

 ミシンを受け取り、アイテムボックスの中へと収納する。

「今後も私の注文品を作ってもらえますか?」

 俺の無茶な要求をこなせるのは、この人しかいない。

「いいぜ。アンタが持ってくる仕事は楽しいモンばかりだしな。何時でも受け付けるぜ」

「有難う御座います」

 実に有意義な時間を過ごせたな。今後が楽しみだ。




 ガントンに別れの挨拶をして、早速、完成したミシンをユニスに届ける為、店に向かう。

「こんにちはユニスさん。例の「秘策」を持って来ました」

 早速、持って来たミシンを使い実演して見せた。うん、元の世界の物と比べても遜色ないな。本当にガントンは良い仕事をする。

 実演を見ていたユニスの目つきは真剣な物になり、食い入る様にミシンと俺の手元を見ている。

「……と、この様な感じですね」

 一通り説明を終えるとユニスさんが、

「これは凄い物ですよ! この「ミシン」を使えば今までの何倍もの速さで服を縫えます!」

 興奮で顔を紅潮させたユニスが大声でそう言った。今にも躍り出しそうな雰囲気だな。

「取り敢えず、五台用意しました。皆さんなら直ぐに使いこなせると思いますよ」

「はい! 今日中にマスターしてみせます!」

 両の拳を握りしめ気合十分の御様子。思わず頭をなでてしまいそうになるな。

「それで、後日でいいので新しい服を作って欲しいのですが……」

 俺はすかさず紙とペンを取り出し、頭の中にあるイメージを絵に起こす。

「これは……」

 俺が書き上げたラフ画を食い入る様に見つめるユニス。

 白を基調としたブラウスに黒のベスト、チェック柄のスカート、ニーハイソックスと、言わば「学生服」のファンタジー版だな。これを嫁達に普段着として着せたい。オシャレを知らない嫁達に自由に服を着るという事の喜びを教えたい……と言うのは建前で、本音は可愛い服を着た嫁達が見たいという俺の願望である……そう願うのは男として当然だよな?




「今日は夜通しで作業しますよ!」

 と、ユニス店長が意気込んでいたが、無理はしないで欲しいものだ。とはいえ、あのテンションではそれも無理かな?

 王都では食材を買い足し我が家へと帰還した。

 夕飯を取り、今日の疲れを癒す為、風呂へと向かう。

「ど~お? あーしのおっぱいスポンジは。気持ちいいっしょ?」

 桔梗が全身泡だらけになり、胸を使って俺の体を洗ってくれている。最近は嫁達がこうして俺の体を洗うのが恒例となっているのだ。全身の疲れが吹き飛ぶよ。

 その後、風呂でのお礼も兼ねて、じっくりとたっぷりと嫁達を愛し、そして眠りについた。


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