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上級ダンジョン攻略・その弐

「! 何かが近くにいますっ!」

 マリーがそう忠告すると同時に見えない何かがパーティ全員に飛び掛かって来た!

「これは……蛇か!」

 襲撃者の正体は「ハイドスネーク」だ。砂の色と同じ体色をしていて、姿を見えづらくして襲ってくる危険な魔物だ! 足音等も無く接近に気付けなかった!

「ここは獣人である我等にお任せを!」

「音や姿を消しても「匂い」までは消せてないさね!」

 ローリエとセフィラの二人が率先してハイドスネークを迎撃していく! 常人よりも嗅覚が鋭い獣人ならではだな。しかし二人に任せきりというのも忍びない。要は保護色をどうにかすればいいわけだ。

 ならばやる事は単純明快。魔法で『水』を創り出して、周囲の地面を水浸しにした!

 すると周囲の砂が水を吸い込み茶色から黒へと色を変化させた。そして露わになる茶色のハイドスネークの姿。これでもう迷彩は意味を成さないな。

「流石は旦那様ですわ! これならワタクシにも倒せます」

「姿が見えさえすれば!」

「……反撃する……」

「これで思う存分叩き潰せるさね!」 

 これにより前衛組が息を吹き返した。では、俺は後衛として皆を援護するかな。

 程なくして襲ってきたハイドスネークは全滅した。

「やれやれ……上級ともなると力押しだけでは上手くいかんか」

「そうですね、確かに手強く感じます」

 アリスが眉を顰めて、そう呟いた。

「う~ん、でも今直ぐに出来る対策は無いんじゃないかしらぁ?」

 ソニアの言う通りだな。ここは当初の予定通りに十階層のボスを討伐して帰還するのが良さそうだ。

 その後も魔物を撃退しつつ探索を続けていると、遠目にオアシスの姿を確認出来た。

「ふむ、今回は一発で転移魔法陣は引き当てられなかったか。代わりに面白い物があったな」

 オアシスの真ん中には「宝箱」がポツンと鎮座していた。シュールな絵面だよな……まあ、ダンジョンだしそういうものだと割り切るか。

「では、罠が無いか調べます」

 アリスが魔法で罠の有無を確認する。すると、

「……罠を感知しました」

「解除は出来るか?」

「……申し訳ありません、私の力量では無理ですね」

 アリスが声のトーンを落としてそう答えた。

「それなら、どういったトラップが仕掛けられているかは分かるか?」

「……恐らくですが、吹き矢のトラップでしょう。蓋を開けたら飛び出す仕掛けだと思います」

 ふむ、それならば対策は簡単だな。

「俺が後ろから宝箱を開ける。皆は宝箱の前に立たないようにな」

 全員が安全な位置に退避したのを確認し、俺は宝箱を開けた。

 ピシュ!

 という風切り音と共に、宝箱の中から吹き矢が飛び出した。結構な速度だったな、当たればそれなりのダメージを受けるだろう。トラップを作動させ安全になった宝箱の中身を確認する。中には金属で造られたブーツが入っていた。

「まあ、綺麗なブーツですこと。どの様な効果があるのでしょうか?」

 上級ダンジョンの宝箱だ、期待してもいいだろう。

「鑑定を楽しみにしておこう。では先へ進むとするか」

 適度な休憩を挟みオアシスを後にする。そして再び砂漠を歩き始め少し経ったその時、

「! 上さねっ!」

「来たか! 全員回避しろ!」

 襲撃者を最初に察知したのはセフィラだった。何か大きな物体が複数俺達の頭上目掛けて飛来してくる!

 とは言え「こいつ等」の存在は事前に予習済みだ。冷静に対処すれば問題無い。その証拠に、全員余裕を持って回避出来ている。

 襲撃者の正体は「レイドホーク」と言う鳥類の魔物だ。数は全部で三羽。鋼鉄並みの硬度を誇る嘴と翼を持ち、高度から強襲してくるこの砂漠エリア最大の敵になる。レイドホークの対策有る無しで攻略難易度が天と地の差が出ると言われる程だ。無論、俺達も対策済みだよ。もっとも、先程使った魔法が大きなヒントになったのだがな。

 攻撃に失敗したレイドホーク達は再び高度を上げ再度の襲撃準備に移った。

「よし! 全員俺の傍に固まれ!」

 俺の号令で密集陣形の様な形を取った。こうなっては、回避はおろか移動もままならない。血迷ったか? と思われるかもしれないが、これが最適解さ。

 俺は頭上に空気を圧縮させた「板」を、魔法で作り出した。念入りに魔力を込めて固めてやったよ。

 レイドホークは当然「それ」に気付くことなく、再び急降下攻撃を仕掛けてきた!

 ズガンッ‼ ズガンッ‼ ズガンッ‼

 レイドホーク達は大きな音を立て「空気の板」に激突した! あれだけの速度で突撃してきたら、例え「板」の存在に気付いたとしても避けられまい。

 レイドホーク達は板の上でピクリとも動かなかった。魔石に変化していないので死んではないな。恐らく気絶しているのだろう。俺は魔法を解除し、順番に止めを刺していった。

「しっかし、魔法ってのは本当に便利だねぇ」

 魔石を拾っていたセフィラが、しみじみとそう言った。

「魔法を使えば何でも出来る。逆に言えば魔法を使わなければ何も出来ない、ここはそういう世界だ」

 そのせいで科学も医学も発展しなかったのだがな。何事にも良し悪しはあるのさ。

「アタイは生まれて此の方、闘技場の外に出た事が無かったからね、魔法と言えば敵を倒す手段の一つ程度の認識だったさね」

「ならばこの世界に来て、さぞや驚いただろう」

「ああ。人が生活する中で、当たり前のように魔法を使う光景を見れただけでも、この世界に来た意味があったよ」

 良い傾向だ。この広い世界を自由に謳歌おうかして楽しんで欲しいものだ。

 その後も魔物を倒し、時には流砂に足を取られながらも着実に奥へと進んで行く。そして遂に目標の十階層に到達した。

 十階層の景色は先程までと変わらず一面の砂漠だった。ボス部屋と言うよりボスフロアと呼んだ方がいいな。

 不気味なまでの静寂。さて、何処から来る?

 不意に大地が鳴動めいどうし、目の前の地面が大きく爆ぜる! 砂の中から現れたのは巨大なソードスコーピオン――その名もズバリ『ボススコーピオン』だ。その足元には無数のソードスコーピオンを従えている。さあ、ボス戦の始まりだ!


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