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マイホームが完成したらしい……

 俺達は『神域』からダンジョン街に戻ってきた。それでは、これからの動向について話し合うとしますか。

「今日は王都に戻り宿に泊まるとしよう。ああそれと、既に夕暮れ近くだ。今からダンジョンには入らないぞ?」

「それ位の事はアタイにも分かってるさね。だからそんな顔でアタイを見ないでおくれよ」

 そうは言っているが、ソワソワと体が小刻みに揺れているのを俺は見逃さんぞ? 俺が一言、苦言を呈さなければどうなっていたことやら……。

 ソニアの魔法で王都へと移動し、門から中へ入ろうとしたら門番に呼び止められた。

「魔法師団長様から、レオン様を見かけたら王城に来るようにと言伝を受けています」

 呼び出しだと? 何か問題でも起きたのか?

「承知しました。これから城へ向かいたいと思います」

 とは言え、呼び出したのが例の『賢者殿』となれば、一抹の不安は拭えんな。かと言って無視するという選択はあり得んし……面倒事は勘弁して欲しい所だよ。

 王城の城門前に到着すると、そこには人影が一つ。子供程の背丈、そして長く大きな杖……そう、我らが賢者殿が既に俺達を待ち構えていた。

「うむ、よう来た。今日はお主等に報告したい事があったのでな……ところで女子が一人増えてるようじゃが?」

「はい、門番の方に伺いました。それと彼女はセフィラ。新しい『嫁』です。それで、その報告とは一体?」

 この雰囲気なら悪い報告ではなさそうで安心だ。セフィラについてはありのまま正直に報告するのが吉だ。

「また嫁を増やしたのか? 英雄色を好むと言うが……健康には気を付けるのじゃぞ? それはさておき……ふっふっふ、勿体ぶるのも悪かろう。では、発表するぞ……お主等の住む「家」が完成したぞい」

 家……だと?

「その「家」と言うのはカルディオスで建築中の?」

「うむ。建築を請け負っていた棟梁から、家が完成したと報告を受けてな。これからそれをお主等と一緒に見に行こうと思ったわけじゃな」

「アレから未だ数日ですよ? もう完成したのですか?」

 この世界の家は数日で建てられるのか? いや、魔法を使えば可能か?

「あの連中に言わせれば、数日「も」掛かったそうじゃ。中々に面白い仕事だったとも言っておったな」

 興が乗って多少無茶な家の見取り図を描いた記憶があるが、あれを数日で完成させただと?

「楽しみでもあり、恐ろしくもありますね」

「なあに、心配いらんよ。「仕事が生き甲斐」と公言する連中じゃ、腕は確かじゃぞ」

 元より、国の推薦だ。それ程心配はしていないが。

「ほれ、行くぞ? 早うワシの周りに集まらんかい」

 そんなに急かさなくともいいだろうに、この賢者殿も家を見るのが楽しみなのだろう。




 転移魔法でカルディオスの門前に到着し、町の中に入る。何時もここにいる門番のグレッグが見当たらなかったのが気にはなったが、流石に年中休み無しで仕事している訳ではあるまい。

 町中を歩き、着いた先は町の外れに位置する場所だ。元は空き地だと記憶していたが、そこには一軒の家が建築されていた。

 いや、これは「家」では無く「豪邸」と言うべき代物だった。確かにあの図面通りに建築すれば、これ位の規模の家になると理解はしていたが、尚更この速さで完成した事に驚愕させられたぞ。

「これが鍵じゃ。家主が一番初めに入るのがよかろう」

 鍵は俺から見れば前時代的、この世界では標準的な鉄製の物だ。扉の鍵穴に差し込み軽く捻ると、「カチリ」と音が鳴り、扉が開いた。

 扉を開け中に入ると、広い「玄関」がお出迎えしてくれた。馴染み深い光景に感動してしまったよ。

「旦那様? ここは一体何でしょうか?」

 俺以外の全員が頭の上に「?」を浮かべ、この場所に戸惑っている。

「ここで靴を脱いで家に入るんだよ。慣れないうちは大変だと思うが、頑張って慣れて欲しい」

 俺が手本を見せ靴を脱ぎ玄関から上がると、それに倣い次々と靴を脱ぎだして家に上がっていく。うむ、近い内に内履き(スリッパ)を用意しなければな。今日の所は素足で上がるとしよう。

 正面の扉を開くとそこにはリビング、ダイニング、キッチンが一体となった――所謂LDKと呼ばれる空間が現れた。

「基本的に全員ここで過ごす事になる空間だな。来客等もここでもてなす。どうだ? マリー。キッチン周りで何か意見はあるか?」

「そうですね……実際に使ってみなければ何とも言えませんが、問題は無いと思います」

 キッチン周りを色々とチェックしていたマリーがそう答えた。恐らくここはマリーが中心となって動くだろうから、彼女が問題無いと言うなら心配ないな。

「それにしても、既に家具も配置されているのは何故だ?」

 ソファーやテーブル、椅子等も設置されていて、今直ぐにでも生活出来る状態だぞ。

「それはな、お主が渡した図面に細かく描いておったじゃろう? それを見た棟梁達が興味を示してな。ウキウキで造っておったようじゃ」

 しまったな。図面を描いている時には気にならなかったが、この家の建築様式は俺が元居た世界の間取りを参考にしている。明らかにこの世界の物ではない。この世界の職人が珍しがるのは当然だな。迂闊だったか? どうにもこの世界に来てからというもの、普段の冷静な行動と判断が出来ていない様に思える。これは一体……まさか……?

「ほれ、次の部屋へ行くぞ? ぼさっとするでない」

 少しの間、思考の海で泳いでいたが賢者殿の声で呼び戻された。あの人を自由にさせると何をするか分かったもんじゃない。俺は慌てて移動を開始した。

「ほれ、ここがお主が一番拘っていた風呂場じゃぞ」

 リビングを出て家の奥へと向かった先の扉を開けながら賢者殿がそう言った。扉を開けた先には広々とした脱衣所があった。更にその奥の扉を開けると俺が思い描いていた以上のクオリティの風呂場が現れた。

 十人以上が同時に入れる湯船、そして何かライオンっぽい顔のオブジェから湯船に向かってお湯が滾々と流れている。王都にある例の高級宿に設置されていた物と瓜二つだな。

「ほうほう、中々に良き風呂じゃな。ワシも入っても構わんか?」

「……機会があれば構いませんよ」

「うむ。楽しみにしておるぞ」

 相手は懇意にしている国のお偉いさんだ、無下には出来ん。「迷惑です」なんて言えないよな。ここはなあなあで済ませるのが無難だろうさ。

「次は二階じゃ。階段を上がるぞ、足元に気を付けるのじゃ」

 来た道を少し戻った所にある階段を上がる。勾配も緩やかで幅も広く上りやすい階段だな。

 二階に上がり一番近くにある扉で止まった。

「ここがお主等の寝室じゃ。家主であるお主が扉を開けるのが良かろう」

 と言う訳で、俺が先頭になって扉を開けた。

「寝室にしては広いような? それにあれは一体……」

 部屋に入っての第一声はマリーだが、その言葉はここにいる全員の思いを代弁していた。

 広めの寝室というのはまあ問題ない。問題はそのだだっ広い寝室の奥にデンっと鎮座している巨大なベッドだ。

「ここの家主は嫁が沢山いるので、極大のベッドを用意してくれとワシが頼んでおいたのじゃが……うむ、これなら全員で寝ても問題なかろうて。夫婦の営みもはかどると言うものじゃ。どうじゃ? 嬉しかろう?」

「ソウデスネ、アリガトウゴザイマス」

 大きくするにも限度があるだろうが。最早キングサイズとかそういう話ではないぞ。人が二十人寝っ転がっても未だスペースに余裕がある。部屋自体が広いのも、このベッドを置くためか。それと夫婦の営みについては余計なお世話だ。

「どうせ直ぐに嫁が増えるんじゃ、今の内に大きめのベッドを拵えた方がいいじゃろう? 現に一人増えとるしな」

 その賢者殿の言葉にうんうんと頷く嫁達。くっ……反論したいが、現在進行形で嫁を増やしている俺が何を言っても無駄か。ここは話題を逸らすのが正着せいちゃくか。

「ところで、このフロアには他にどの様な部屋があるのですか?」

「露骨に話を逸らしに来たのう……まあ良い、残りの部屋は全て空き部屋じゃ。お主等の好きに使えば良い」

 少々強引だったが、話を逸らす事には成功したようだな。空き部屋という事なので、個室が欲しい人に使わせるのと、後は物置としてでも使うかな。

「次で最後になるかのう。中庭に行くぞ」

 そう言ってさっさと一階に下りていく賢者殿の後ろを慌てて追いかける。

 中庭に到着したが、ここも希望通りになっていた。鍛錬の場として活用出来るように、動きながら武器を振り回しても未だ余裕のある広さ、素晴らしいな。ん? 庭の端の方にある見慣れない物体は? 見た所「案山子かかし」に似ているが。

「端にあるあの物体は何ですか?」

「うむ。あれはワシが考案した『訓練用・頑丈案山子君改』じゃ。その名の通り頑丈で壊れにくく、多少の損傷は自動で修復する優れものじゃ。流石に粉々にされてしまっては修復されんがのう」

「王国軍でも正式に採用されている物です。性能は確かですよ」

 ローリエの補足が入る。まあ、名前以外は問題無いようだな。本当に名前以外は……。

「一通り案内が終わった所のでワシは帰るとするかのう」

「わざわざ御足労頂き、ありがとうございました……そうだ賢者殿に頼みたい事があったのを思い出しました」

「ほう? お主の頼みなら何でも聞いてやろう」

 折角、賢者殿に会えたんだ、例の件を聞いておこう。

「マーフォークという魔物の皮を手に入れる事は出来るでしょうか?」

「なんじゃ、珍しい物を欲しがるのぉ。残念じゃがワシの手元には無いわ。じゃが、知り合いの商人に頼んで手に入れて貰うとしよう」

「お願いします。重ね重ね、御礼を申し上げます」

「大したことはしておらん、気にするでない」

 そう言って賢者殿は手をヒラヒラと振り、転移魔法で帰って行った。やれやれ……精神的にとても疲れたな。


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