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今回は、俺の出番なしで終わると思っていのだがね……

「……は~っはっは。見事に受け止められたか! アタイの負けだよ」

「いえ。紙一重の勝負でした。手が痺れて上手く動かせません。もし次があったら受け止めきれないかもしれません」

「今回は「次」が無い勝負だったんだ、そんな「もし」の話は無意味さね」

 あれだけ激しい攻防をしていたというのに、終わった途端に二人は笑顔で談笑し始めていた。俺には良く分からない感覚だな。

「負けたのにこんなに気分が良いのは初めてだよ。これからの生活《戦い》が楽しみになってきたよ」

 色々とあったが、どうやら無事に終わりそうで何よりだよ。それよりも、今の「生活」のルビがおかしくなかったか?

「さあ「次」は誰が相手してくれるんだい?」

 悉く俺の予想を覆してくれる!

「これで終わりじゃないのか? もう十分だろう?」

「何言ってるんだい? これだけ強者が揃ってるんだ、相手をしないと失礼に当たるってもんだ。常識だろう?」

 それは貴女の世界での常識だよな? これが『脳筋』と言うやつか。

「それに、この空間は時間が進まないんだろう? ここでなら幾ら戦っても問題無いはずさね」

「むっ……それは……」

 痛い所を突いてくるな。今までメリットしか無いと思っていた機能がここでデメリットになるとは……。

「あなた様。ワタクシも是非お相手したいと思っておりましたので……」

「申し訳ありません旦那様。私もお願いしたいです」

「……わたし……も」

 前衛組の嫁達も血気盛んだ……。これを止めるのは骨が折れそうだ。

「ふぅ……分かった。但し大怪我だけはするなよ?」

 俺がそう言うと、嫁達は喜んでセフィラの元へ駆け寄った。やれやれ……元気な事だな。

 それと入れ替わりでローリエが俺の傍に戻って来た。

「怪我はしていないな?」

「はい、大丈夫です。セフィラさんも全力を出してはいなかったと思います」

「アレで全力では無かったと?」

「恐らくは」

 まあ、俺達の実力を調べる為とか言っていたし、それもあり得るか。

「それにしても、その盾は一体どういう仕組みなんだ?」

「この盾はシャムフォリア王国の初代国王陛下から、初代ノーバス家の当主に下賜かしされた宝物と伺っています魔力を最大値まで込めるとあらゆる攻撃を防ぐと言われていますね」

「成程な。由緒正しい盾なのか」

 強力な装備だ。こういう品がダンジョンで手に入る可能性があるのだろうか? だとすれば嬉しいのだがな。

 それにしても、二人の戦いは見応えのある素晴らしいものだったな。最強の矛と最強の盾がぶつかったらどうなるのか? の故事の様だ。それにハイレグアーマーとビキニアーマーの二人が、飛んだり跳ねたりするものだから、その立派な爆乳がブルンブルン揺れてとても眼福……ゲフンゲフン、何でも無い。

 俺がローリエと雑談している間に、嫁達が次々とセフィラに挑んでいったが、全員返り討ちにあってしまったな。今はセフィラから各々アドバイスを受けている最中だ。それにしても、セフィラは連戦による疲れを全く感じさせないな。底なしの体力の持ち主と言えるな。

「いいねぇ。こんなに沢山強い奴が身近に居れば新しい世界で退屈はしなさそうだね」

 戦いが終わり、セフィラ達が戻って来た。全員、物凄く良い笑顔ですね……いやまあ、いいんだけどさ、うん。

「満足出来たなら何よりだ。では、戻るとしよう……その前にガーベラの紹介をしておこうか」

 ガーベラを紹介した時のセフィラだが、

「不思議な恰好だねぇ……こんな箱に入ってどうやって戦うんだい?」

 と言う素晴らしい感想を頂いた。この一言でセフィラがどういう女性か理解出来るというものだ。ある意味俺達に足りない部分ではあったからな、これからが楽しみでもあり怖くもある。

「それと、アタイは未だ満足していないよ? むしろ次がメインディッシュさね」

 そう言って舌なめずりしながら俺を見つめるセフィラ。獲物を前にした猛獣を想起させる顔だ。

「やれやれ……まあ、想定はしていたがな」

 俺は全てを諦め、セフィラの正面に立った。

「これだけの『雌』を侍らせているんだ、『雄』としての精力は問題ないだろうさ。ならこの集団を纏める『長』としての『武力』。これを確かめないとねえ」

「俺は戦いに関しては素人同然だ。手加減を所望したいな」

 油断なく槍を構えて、対戦相手を見つめる。

「それだけの闘気を放っておいて何言ってんだい……一切手加減しないよっ‼」

 先手はセフィラ。俺に突進しながら戦槌を振り下ろしてきたっ!

 ズガンッ!

 俺がその一撃を躱すと、神域の床と戦槌がぶつかり激しい音が辺りに鳴り響いた。俺はすかさず反撃の一撃を繰り出す!

「おっと! 危ない危ない……」

 だが、その隙を突いた一撃も軽く体を捻り躱されてしまった。強烈な一撃を放ちその後素早く離脱する――所謂ヒットアンドアウェイを得意としている模様。実に厄介だな。とはいえこのままこの戦い方を続けてもらちが明かないな。

 俺は両足でしっかりと地面を踏みしめ、腰を落とし両手両足に魔力を集中させた。

「へえ? アタイの攻撃を受け止めようってのかい? その細い槍で出来るかねえ?」

「さて……やってみる価値はあると思うがね」

「その度胸は気に入ったよ。後は……その度胸に見合う力があるかどうかだねっ!!」

 再びセフィラが戦槌を振り下ろす! 

 ガキンッ‼

「ぐうっ……⁉」

 想像の何倍も重いっ! 攻撃を受け止めている腕と、その攻撃に潰されない様に全身を支えている脚が悲鳴を上げているのが分かるっ! このままではマズい!

「うおおおぉぉぉっ!」

 腹の底から声を張り出し、全身の筋力と魔力を総動員して戦槌ウォーハンマーを持ったセフィラを弾き飛ばす!

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 辛うじて防ぐ事が出来たか……全身から汗が吹き出し、腕も脚も痙攣して上手く動かせない。一撃でこれか、二度目は無理だな。

「良く防いだじゃないか、見事だね」

 口角を吊り上げ、余裕の表情のセフィラ。ならば次の一手でその余裕の表情を崩して見せよう。

「正面からのぶつかり合いでは俺の分が悪い。勝機は無いに等しいか」

「へぇ? その言い方だと、正面からじゃなければアタイに勝てると?」

「ああ……そう言って……いるのだ!」

 そう言って俺は魔力を練り上げる。するとセフィラは、一瞬で真面目な顔になり警戒態勢をとった。

「悪いな……俺はこういう戦い方しか出来んのだ‼」

 練り上げた魔力を解き放ち、セフィラに向かって魔法を放つ!

「……ぐぅっ⁉」

 俺が魔法を放つと同時に、セフィラが勢い良く地面に膝を突く。俺が放った魔法は『重力圧壊グラビトンスマッシャー』だ。無論、最大出力では無く、ある程度手加減をしている。

「な……何だい? こ、これは……? か、体が……?」

「そうだな……簡単に言えば、君の体重が何倍にもなって、重くて動けなくなっている。そういう状態だな。しかし、想定よりも動けているな……」

 俺の予想では、今の威力で地面に倒れ伏して動けなくなると思っていたが、膝を突く程度で堪えるとは。

「こ、この程度でっ……!」

 彼女の性格から言ってこれでギブアップはしないだろう。現に彼女は全身を震わせながら、何とか立ち上がろうともがいている。長引かせるのも忍びない。一気に決めるっ!

「はぁぁぁぁっ‼」

 更に魔力を消費し『重力圧壊グラビトンスマッシャー』の威力を強める。

「ぐっ……がぁっ⁉」

 するとセフィラは手にした戦槌を落とす。そして両手両足を支えにして数秒堪えていたが、遂に体がうつ伏せの状態で地面に縫い付けられた。それを見て俺は彼女に近付き、眼前に槍を突きつけた。

「俺の勝ちと言う事で問題無いな?」

 このままでは喋る事が出来ないだろうと思い魔法を解除して彼女の返答を待つ。

「……ああ、アタイの負けさね……」

 セフィラは小さくそう呟き、ゆっくりと立ち上がった。

「済まないな、先程も言ったが俺はこういう戦いしか出来んのだ」

「何言ってるんだい。どんな戦い方であれ、勝ちは勝ち負けは負けさ。勝てなかったアタイが悪いのさ」

 剣闘士らしい、素晴らしく潔い価値観だな。あれこれと難癖を付けて己の負けを認めない醜い奴等を、腐る程見てきたからな。彼女の潔さには好感が持てるよ。

「ところで、何処か怪我はしてないか? 痛む所とか」

「うん? 特に痛む所は無いよ。問題無いさね」

 あれだけの衝撃を受ければ何かしら体に異常が出そうなものだが、恐るべきタフネスだな。まあ、彼女の異常なタフさには理由があるはず。俺は何となくだが、そのカラクリが予測は出来てるが。

「改めて。宜しく頼むよ、夫君」

「ああ。君を歓迎するよ、セフィラ。よし、今度こそ帰るぞ。問題ないな?」

 嫁達を見回して確認すると、全員頷きを返して来た。やれやれ、ようやく帰れるか……。

「それではガーベラ、やってくれ」

『了解。転送します。』

前話と今話は、新たな嫁である「セフィラ」に焦点を合わせた話になっています。

虎の獣人で、サバサバとした性格の姉御肌な女性……いいですよね。

そして遂に「ハイレグアーマー」と「ビキニアーマー」が揃い踏みとなった記念すべき回でもあります。

読者の皆様は、「ハイレグアーマー」と「ビキニアーマー」どちらが好きですか?

私は勿論……「両方」に決まっているじゃあありませんか(笑)

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