表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/353

ダンジョン攻略。それは即ち別れの時

 と、爽やかな気持ちで冒険を締めくくろうとしたが、どうやらそうはいかないみたいだな。

「こいつらが例の獲物共か?」

「へいっ! 間違いありやせん。あいつ等です!」

 地上に戻った俺達。そしてダンジョンの出口で待ち構えていた「如何(いか)にも」な連中、総勢十五名。昨日俺達を監視していた連中だろう。

 しかし……ここでお出ましとはね、俺はてっきりダンジョンの中で接触してくると思っていたのだが。

「おう、お前さん達はたんまりと金を持っているそうじゃねえか。俺はランクCの冒険者モブラット様だ。命が惜しければ金を置いていきな。ついでに女共は俺らが可愛がってやるよ」

 下劣な笑みを浮かべながらそんな戯言をほざいたのが、この集団のリーダーなのだろう。

「何だ、今頃お出ましか? ダンジョンの中で襲ってくるかと思っていたからな、待ちくたびれたぞ? それに、お前がランクCだと? 嘘を付くならもっとマシな嘘を付くんだな」

「なにぃ~⁉ てめぇ……この状況が理解出来てねぇのか⁉」

 軽く挑発してやると、この男は顔を真っ赤にして怒鳴り散らして来た。沸点が低すぎるな。こんな低レベルの奴がランクCな訳ないさ。

「野盗紛いのゴロツキが十五人程度、追加でお山の大将が一匹……何も問題は見当たらないぞ?」

 奴等の武器防具は、見た目がバラバラで品質もまちまち。正に野盗の集団と言うに相応しいな。そしてリーダー格の装備も、幾分か品質は良くなっているが程度は知れている。うん、改めて考えても脅威にはなり得んな。

「オリーブさん。ギルド職員としてお尋ねしますが、こういう奴等を返り討ちにして殺害しても、何の問題もありませんよね?」

「そうですね。以前説明した通りで、ギルドはダンジョンでの冒険者同士の揉め事には不干渉の立場です。今いるダンジョンの入り口もダンジョンに含みます……まあ、今はわたしも『冒険者』ですから、お手伝いしますよ」

 そう言って笑顔と共にウインクをするオリーブ。仲間の事は完全に吹っ切れた様だな。彼女の笑顔はとても美しいものだ、思わず見惚れてしまいそうになる。

「おいこらっ! 俺達を無視していちゃついてんじゃねぇぞっ!」

 そう怒鳴り散らすリーダーの男。いやいや……この隙に襲って来れば少しは勝機もあったろうに。律儀に待っているとは愚かとしか言いようが無いな。というか俺達は準備万端だぞ?

「来ないのか? と言っても、既に「こちら」の攻撃は始まっているがな」

「は?」

 お山の大将との会話中を狙って、俺とソニアとアリスがゴロツキに向かって魔法を放つ! 卑怯とは言うまいな?

 俺とソニアが『風のウィンドエッジ』で首を飛ばす。アリスは土属性の『岩石砲丸ストーンバレット』を体に直撃させ、数十メートル吹き飛ばした。無論、即死だ。

 マリー、プリムラ、リラ、ローリエ、オリーブの前衛組も素早く間合いを詰めし、次々とゴロツキを屠っていく。俺も遠くの敵を狙い、次の魔法を放っていく!

「な、な、なにが……⁉」

 まさか自分達が「襲われる側」だとは夢にも思ってなかったのだろう、回避はおろか防御も出来ずに、どんどんゴロツキ達の人数が減っていく。そして僅か数秒の間に大将を残しゴロツキ共は全滅した。

「さて、残りはお前だけになったな。一応作法として聞いておこう。最後に何か言い残す事はあるか?」

 俺は槍を構え、ゆっくりと男に近付いて行く。

「ま、待てっ! い、いや……待って下さい! は、話を……」

 ここに来て命乞いでも始めるつもりだろうが、俺達に喧嘩を売って来た時点でお前達の運命は決まっていたんだ。恨むなら、己の無知と無力を恨むのだな。

「残念だが、俺にはお前の話を聞く理由が無い……ああ、一つだけ言いたい事があったか。喧嘩は相手をよく見て売るのだな」

 俺は素早く槍を振り抜く! すると奴の首と胴体が泣き別れとなり、体は地面へと倒れ込んだ。

「……思ったより動揺は無いか。慣れていると言えばそれまでか」

 罪人とは言え、初めて自分の手で人の命を奪ったが……心は平穏そのものだった。まあ、過去にも間接的だが、多くの人命を奪ってきたのだ、今更か。

「それでレオン様……この方達の遺体はどういたしますか?」

 特に表情を変えずに、アリスがそう尋ねてきた。これだけの数の死体が転がっていても、何とも無しとはな。王族だからか? 物凄い胆力だな。

「こいつ等の持ち物を漁っても碌な物はないだろう。面倒だし、ダンジョンの中に放り込んでおけばいいだろう」

 ダンジョンの特徴に、死体が残らないというものがある。これを利用する訳だな。まるで生物が食べ物を消化するみたいだな。ダンジョンが「生き物」と言われる由縁の一つだな。

「アイテムボックスに入れて、一気にやってしまおうか」

 全員でゴロツキ共の死体を集め、アイテムボックスに入れる。その後、ダンジョン内の目立たない所に放置してきた。これで良しと。

「この後はどうなさいますか? 旦那様」

「ああ。ギルドに寄って魔石を換金して、宝箱から出た物を鑑定してもらおうか」

「あのドレスの鑑定結果が楽しみですわね」

「……うん。最下層の宝箱から……出たから……多分……良い物」

 どうやら全員、あのドレスが気になるみたいだ。無論、俺も楽しみにしているよ。




 その後は何事も無く、ギルドの入り口に到着した。

「皆様……今回は危険な依頼にも関わらず受けて頂きありがとうございました。仲間も見つける事が出来て……本当に感謝しています」

 オリーブがそう言って、腰を深く折る。こちらとしては、言い方は悪いが「ついで」だったんだ。そこまで感謝されると反応に困ってしまう。

「それで、依頼料のことですが……」

「そうですね。では依頼料は100Gでいかがでしょうか?」

「えっ? そ、そんな金額では釣り合いませんよ?」

「構いません。今回の依頼を受けると決めたのは、オリーブさんの熱意と覚悟に感化されたからですよ。なので無償でもいいのですが、一応冒険者なので最低限のお金だけ受け取ろうかと思います」

 今回の依頼の最大の目的はオリーブとの「コネ」作りだからな。優秀な冒険者との繋がりは今後俺達の助けになるはずだ。

「……最初は『私の体』を依頼料として支払うつもりでした。「女らしさ」には自信がありましたからね。ですが、レオンさんの傍には素晴らしい奥さんが六人もいて、しかも皆さん若くて、私以上にスタイルの良い方もいて……どうやって依頼料を払おうかと頭を悩ませていました」

 オリーブの話を聞いて、般若の様な形相をしていた嫁達だが、後半自分達の事を褒められると一転して穏やかな表情に様変わりした。うむ、何も言うまい。

「俺達には少々込み入った事情がありまして、そういった話は断っているんですよ」

 というか単純に回数の問題なんだよなぁ。例えばここで『お礼』を受け取ったとしたら、夜の嫁達による攻勢が激しさを増し、体がもたなくなる事が確実だ。この若さで腹上死など、洒落にならんぞ。

「そうですか……わかりました。こちらが依頼料の100Gです」

 最初は躊躇っていたオリーブだが、俺の意思が固いと分かったのだろう、おずおずと銀貨一枚を差し出した。

「確かに受け取りました」

 俺はしっかりとその銀貨を受け取り、アイテムボックスに入れる。

「それで、オリーブさんはこれからどうするのですか?」

「……正直に言うと、何も思いつきません。このままギルドで働くか、それとも冒険者に戻るか……良く考えて答えを出したいと思います」

 そう話すオリーブの瞳には力強さが宿っている。この調子なら大丈夫だろう。是非頑張って欲しいな。

「レオンさん達はこれからどうするのですか?」

「中級ダンジョンを攻略出来たので、上級ダンジョンに行ってみようかと思います。色々と経験を積みたいですから」

「そうですか。上級ダンジョンは出て来る魔物は勿論の事、罠の危険度が上がっているそうなので、その手の専門家を連れて行くのをお薦めします」

「成程……参考になります」

 罠か。マリーなら簡単な物なら解除出来るそうだが、本格的な物は難しいだろう。何か対策を考えなければならんか。

「それでは、わたしはここで失礼します。本当にありがとうございました」

「縁があれば、また一緒に冒険しましょう」

 オリーブと別れ、ギルドで魔石の換金を行う。ボスから出た魔石を除いた額だが、軽く80万Gは超えていたよ。やはり下層まで潜れればかなり稼げるな。冒険者になる者が後を絶たない訳だな。

 そして皆お待ちかね、鑑定の時間だ。

「ヒッヒッヒ、よく来たね。さぁて、今回はどんな物を持って来たのかね?」

 相も変わらず、怪しい雰囲気の老婆が部屋の中に居た。

「これの鑑定をお願いします」

 俺はもったいぶる事無く、例のドレスを差し出した。全員気になってウズウズしているしな。

「ほう、これは珍しい物だねぇ……では始めるぞい。ぬぅ~ん……」

 怪しい掛け声と共に、老婆が鑑定魔法を使う。

「鑑定が終わったぞい。こいつは「月光のドレス」という名前だね。普段は真っ白なドレスだが、着ている者の魔力に反応して色や見た目が変化する、特殊な仕様みたいだねぇ」

「ふむ、それは素晴らしい。それで価値はどれ位でしょうか?」

「そうだねぇ、長年ここで仕事をしている私も滅多にお目に掛かれない程の一品さね。実用性もあるし、物珍しさから収集家も欲しがるだろうさ。もし売るならここでは無く王都で売った方がいいね、場合によっちゃあ数百万Gの値が付くかもしれんよ」

 どうやら相当面白い物の様だな。使うとしたらソニアがベストかな?

「それでは他の品もお願いします」

 メインディッシュは終了したが、その他にも幾つか入手している物があったのでそちらの鑑定も頼んだ。その中で特に目を引いたのは「戻り苦無くない」という物。

 名前の通り苦無(忍者が良く使う投げナイフ)なのだが、魔力を纏わせて放つと、数秒後に放った者の手に戻って来るという優れもの。これは便利な物だな、これはマリーが候補になるかな?

 ここでふと気になったのは、この世界に「苦無」なんて代物があるのかどうかだ。もっと正確に言えば「苦無」という言葉で意味が通じるのか。これが気になってしまったんだ。

 結果から言えば、嫁達全員が「苦無」という言葉を理解していたという事だ。恐らく『神』に貰った翻訳機能が正常に機能しているのだと思われる。

これにて「中級ダンジョン・攻略編」が終了となります。割と長めな話になりました。

ダンジョン内を探索して、魔物を倒し宝箱を発見する。これこそ「ダンジョン」の醍醐味ですね。

中級が終われば、当然次は――? それは次話以降をお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ