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臨時のメンバーは、麗しの格闘家

「お待たせしました」

 時間にすれば数分だろうか、オリーブが奥の部屋から戻って来た。

 まず目を引くのは両腕に装備された手甲――ガントレットと両足の脛当すねあて――グリーブである。その姿はダンジョンで出会った兎獣人ミレットを彷彿とさせる。つまり彼女も「格闘家」という事だ。

 そして何より体の防具が、どう見ても「チャイナドレス」にしか見えない装いだった。

 その深紅のチャイナドレス、防御力的には大丈夫なのか? いや、俺の世界の常識で物を考えてはいけない。それにその疑問は今更過ぎるか。リラの装備も不思議防具だしな。この世界にはそのような防具がありふれているに違いない。そう思う事にしたのだったな。

 しかし、格闘家だからチャイナドレスか……王道と言えば王道か。それに両の太もも付近にある深いスリットから艶かしい生足が覗いて見える。俺好みの格好であり、見る分には非常に嬉しいな。言わずもがな、その魅惑的な二つの膨らみも強調される様に彼女が動く度にプルンと揺れている。いや、今はそんな事を考えている場合じゃないな。

「それでは行きましょう」

 オリーブが大きな麻袋を背負い、先頭を切って歩き出した。

 少々気持ちが入り過ぎだな。ここは気持ちを落ち着かせるか。

「宜しければその荷物、俺が持ちましょうか? アイテムボックスを持っていますから安全ですよ」

「……では、お願いします」

 一瞬迷う素振りを見せたが、オリーブは素直に荷物を俺に渡してくる。普通こんな事言われれば窃盗を疑うのだが、俺達ならその心配は無いと思われたという事だな。もっとも魔石をあれだけ集め稼げる冒険者が、今更そんなせこい真似はしないと思っただけかもしれんがね。

「では、これよりダンジョンに入る。オリーブさん、俺の指示に従ってもらえますか?」

「勿論です。リーダーの指示に従うのは当然ですので」

 というわけで、オリーブは前衛に配置して4:2:2の陣形で進むことにした。

 そしてダンジョンに入る俺達を遠巻きに見ている人影に気付いていたが、敢えて無視しておく。俺の予想ならダンジョン内で接触してくるだろう。




 このダンジョンの探索は二度目、出て来る魔物の特徴や弱点は把握済みだ。サクサクと攻略を進めていく。特にオリーブの実力が想定以上だったのは嬉しい誤算だったな。

「はぁっ!」

 地下十八階の「ロックサラマンダー」を拳の連打で、次々と体を砕いていく様は圧巻だった。群れの中心に単身突撃し、あっという間に群れを蹴散らしてしまった。

「凄いですね、あの動き。私にも真似出来るでしょうか?」

 特にローリエは似た動きをするので、熱心に彼女の動きを追っていた。良い傾向だな、これだけで彼女を同行させた価値があるというものだ。

 地下二十階のボス「ウッドゴーレム」も、種が割れてしまえばどうという事は無い。素早く足元を攻撃し、本体を露出させ本体を破壊した。

 適度な休憩を挟みつつ、特に問題も無く「スチールゴーレム」まで辿り着いた。だが申し訳ない、本命は君ではないのだよ。

 戦闘開始早々に『水圧破斬ウォータースライサー』を使用し、一瞬で片を付けさせてもらった。

「……え? 何ですか? 今の魔法は……こんなにもあっさり倒せるなんて……」

 オリーブが初めて見る魔法に呆然として、固まってしまった。自分に大ダメージを与えた敵が瞬殺されたのだ、複雑な気分にもなろうさ。

「さあ、これからが本番だ。これより下層は行方不明者の捜索をメインとする。小さな痕跡も見逃すなよ」

「「「はいっ!」」」

 メンバーから力強い返事が返って来た。目標は装備品等の遺留品になるが、結構な時間が経っているので見つかるかは不透明だ。そこで重要になるのがギルドカードの存在だ。これは特殊な作りをしているらしく、錆びず朽ちる事が無い金属を使用しているそうだ。基本的に行方不明になった冒険者の捜索は、本人を見つけるかギルドカードを見つける事が目的だそうだ。

 しかし地下三十一階に降りて早々、厄介な敵と遭遇した。

 大きな鶏の様な風貌ふうぼう、大きな翼を広げ尻尾が蛇の化け物――「コカトリス」だ。

 コカトリスが出会って早々に、大きなくちばしを開き紫色の靄状の息を吐き出した! 猛毒ブレスだ!

「させんっ!」「それはダメよぉ」「皆さんを守ります!」

 事前に示し合わせた通りに、俺とソニアとアリスの魔法で『風の防御壁』を張る。

「グギャァァッ⁉」

 風の向きを操りブレスを跳ね返す! コカトリスは自身の猛毒ブレスを食らい、もがき苦しんでいる。

「隙ありですわっ!」

 そこに素早く間合いを詰めたプリムラが一刀両断! コカトリスの首が斬り飛ばされ絶命した。

「毒のブレス……予想以上に厄介な攻撃ですね、旦那様」

「ああ。何も対策しなければこいつでパーティは壊滅するだろうな」

 しかしここに来て一気に難易度が上昇したな。初っ端から状態異常攻撃持ちとはね。

 ここから更に下の階層に進んで行くと、より一層面倒な魔物が跋扈していた。

 そこらの石に擬態して奇襲してくる「ロックケイブアルマジロ」。地面の中から鋭い爪を突き上げてくる「シャープモール」。体全体が毒素で構成された「ポイズンスラッグ」等、土系統は勿論の事、毒を持つ魔物が多くなって来たな。

 そして遂に地下四十階――このダンジョンの最下層に到達した。ここまでオリーブの仲間の痕跡は一切無し、つまり……。

「この階層のボスは「ミスリルゴーレム」。硬い装甲と高い魔法防御力を併せ持つ強敵、それが三体いる。大きさはそれ程でも無いが、これまでのゴーレムと比べると、素早い動きで連携して襲い掛かって来る。俺達も連携を密にして、何があっても慌てず対処するように……では、行くぞ!」

 これまでよりも豪奢な扉を潜り、中へと侵入する。

 部屋の中央に三体のミスリルゴーレムが待ち構えていた。不思議な光沢を放つボディを持ち、剣と盾を持ったタイプが二体、その二体に挟まれる様に、槍を持ったタイプが一体確認できる。

「今回は正面からいくぞ! 前衛が敵を抑え、後衛が魔法で援護する。攻撃の要はローリエとオリーブだ。頼んだぞ!」

「「「はいっ!」」」

 ミスリルゴーレム三体と俺達八人がぶつかり合う! ミスリルゴーレムが剣で切りつけてくるがローリエがそれをしっかり盾で受け止める。そして動きの止まった所にマリー、プリムラが左右から切りかかる。

 ガキンッ! と言う甲高い音を立てミスリルゴーレムの表面が僅かに削れた。

「スチールゴーレム程の硬さは無いようですね」

「ですわね。とは言っても、ワタクシ達では致命傷は与えられそうにありませんわ」

「敵の攻撃は私が必ず防ぎます。お二人は攻め続けて下さい!」

 マリー達三人の連携は問題無いな。

「……後ろに回り込む……」

 もう一方の剣持ちの対し、リラが敵の攻撃を掻い潜り、背後を取りつつ斬撃をお見舞いしていく。

「わたしから注意を逸らしましたね……せいやっ!」

 そして注意がリラに向いた隙を突いてオリーブが強烈な拳を突き出す! ミスリルゴーレムは破片を撒き散らし、大きく仰け反る。

「手加減はしないわよぉ?」

 そこにソニアの『風圧弾エアーバレット』が直撃し、装甲を大きく陥没させた。あちらも問題無し、と。

 そして俺は背後のアリスに攻撃が行かないように正面に陣取る。

「動きは少々早いが、特段脅威では無いな。攻撃も単調だし、これなら苦戦せず倒せるだろ……むっ?」

 槍持ちの攻撃をかわしつつ、俺は連続で槍を突き入れて行く。攻撃と攻撃の合間にしっかりとアリスが魔法を放ち、俺の隙を埋めてくれる。良い感じだと思ったその時、不意に視界の端で何か光る物体を捉えた。あれはもしかして……。

 いや、今は目の前の敵に集中するべきだな。確かめるのは戦闘が終わってからだ。

 それから少しの後に、三体のミスリルゴーレムは地面に倒れ伏した。

「これで終わりでしょうか? 最下層のボスにしてはあっけないような……」

 静寂に包まれた部屋で、アリスがそう言葉を発した。

 そう……アリスの言う通りだ、あっけなさすぎる。何かあるはずだ……こんなにも手応えの無いボスがダンジョンの最奥にいる意味を考えろ……。

 その時、倒れ伏していたミスリルゴーレムが再び動き出した。成程……第二ラウンドの始まりという事か! だが何度復活しても結果は同じだ。

 全員、武器を構えて襲撃に備えたその時。

「……あれは……何?」

 様子を見ていたリラが、思わずといった感じでそう呟いた。俺達の視線の先では、ミスリルゴーレム達が集合し、何やら体を震わせていた。これは一体……まさかっ⁉

 俺の予感は的中した。ガシャンッ! ガシャンッ! とミスリルゴーレムが己の姿を『変形』させ始めた。

 ガシャンッ! ガシャンッ! ガキーンッ‼

 変形した三体のミスリルゴーレムが『合体』して、巨大ミスリルゴーレムへと姿を変えた。

「変形合体だと‼」

 思わず叫んでしまった俺は悪くないと思う。変形合体は『漢』のロマンだ。いや、そんな事を言ってる場合じゃないか。

 巨大ミスリルゴーレムは、右手に槍を、左手に剣を二本繋げた両刃剣を持ち襲い掛かって来る。

「……くっ!」

 巨大ミスリルゴーレムが右手の槍を突き出して来た! ローリエが盾で受け止めるが、大きく吹き飛ばされる。攻撃力はサイクロプス以上か!

 攻撃後の隙を突き、一斉に攻撃を叩き込む! しかし、どの攻撃も表面を僅かに削る程度のダメージしか与えられなかった。

「これは……防御力が上がっていますの?」とプリムラ。

「……うん……厄介……」とリラ。

「おねぇさんの魔法も効果が薄いわねぇ」とソニア。

 ここに来て耐久性も向上するのか……。ならば出し惜しみは無しだ!

「では、こいつはどうだっ! 『水圧破斬ウォータースライサー』!」

 と、格好良く魔法名を叫んで放ってはみたが、結果は装甲が多少削れただけ。これは参ったな……。

 さてどうするかと考え、攻めあぐねていたら、ミスリルゴーレムに向かって突撃する人影が。その人影の正体はオリーブだった。

「はぁぁぁぁっ‼」

 オリーブはミスリルゴーレムの目の前に立ち、腰を深く落とし全力で右腕を突き出す!

 ガォガギンッ! と耳をつんざく音が響くが、装甲が僅かに凹んだのみ。ミスリルゴーレムは何事も無かった様に仁王立ちしていた。

「そ、そんなっ⁉」

 渾身の一撃が全く効かないとは思わなかったのだろう。その場で立ち止まり放心状態になっていた。

 当然その隙を突く様に、ミスリルゴーレムは両刃剣を叩きつけようと左腕を振り上げた……。

「くそっ、間に合えっ!」

 脚に最大限の魔力を纏わせ、オリーブ目掛けて全力で駆け出した!

 彼女の腰に左腕を回し、脇に抱えてミスリルゴーレムの横を駆け抜けた。思ったよりも軽いな。

 直後「ブオンッ!」と言う風切り音が耳の傍で聞こえた。ふぅ~……間一髪か。


新たに登場した「オリーブ」というキャラクター。

「美人の受付嬢」「格闘家」「チャイナドレス」と属性過多なお姉さんキャラです。

やはりこの「美人の受付嬢」は異世界モノには必須の存在ですよね。

あれ? 誰か忘れているような……まあ、いっか(笑)

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